夢
ー嘘……でしょ?
馬鹿みたいに大きな口を開けて、街が、町が、市街地が、日本が、地球が滅びるのを見ている。
そして、全然わからない場所にいる私は、ただ枯れた世界で、独りぼっちで生きているのだ。
……………何も、ない。
ーここは、どこなの?私は……今、どこにいるの……………?
疑問を抱えながら歩いている。
ずっと歩いてきたせいか、疲れてきた。
ーねぇ……っ
呼び掛けても、誰も返事をしてくれない。
そうして、ずっとそういうことを繰り返しているうちに、だんだんと気力も体力も失ってきた。
すると。
……な。優菜。
私を、呼ぶ声。
遠くからだけど、はっきり鮮明に聞こえるその声は、私の心を穏やかにさせた。
乱れた波長を整えてくれた。
ー誰……………?どこにいるの!?
ひたすら、その声の主に向かって呼びかける。
ー優菜。後ろを見てごらん。
その通り、後ろを振り向くと。
枯れてすべてがなくなった「世界」に、私の後ろに立つ、私と同い年くらいの男の子。
ーだ、れ……?
ー優菜。俺はね…………………
「……っ!」
ぜーぜーと、荒い息を吐きながら、すごい汗だくになっていた私。
……………夢?
「……っはぁ……は……」
夢、だった……………
あの、男の子は……誰?
全部、夢?
でも……はっきりした人だった。
あの男の子の……心音も、優しげな声も、姿も形も……。
おぼろげな姿だったけど……それは、はっきりした……………
……………うーん。
うーん?
考えてもわかんない。
もやもやした気持ちで、玄関のドアを開けた。
電車の時間を調べ、高校の最寄りの駅まで電車に乗って、いつも一緒にいる友達と会う。
「ゆーうなっ!おはよう!」
「あ、おはよ〜りんりん、あゆ」
りんりんと呼んだその女の子は、前田凜。
あゆと呼んだ女の子は、坂下亜由美。
私の大好きな友達。
「……………あ、それでさ!今日転校生来るらしいよ〜!」
「えっ、ほんと!?どんな子かなぁ?」
そんな話をしてると、昨日の夢を思い出した。
「……あっ!あのさ、りんりん、あゆ。昨日ね、めっちゃ変な夢を……………」
「おーら席つけー。転校生紹介するぞー」
あっ……
先生来ちゃった。
「どうした?」
「あっ……んーん!なんでもない!」
後で話せばいっか……
そんな気持ちで、転校生を迎えた。