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のざわのざわめき

作者: 高橋露縁



家々の屋根や道路の脇に残るべったりとした雪、しっとりとした質感の濡れた石畳、ぼおっとかすむ街頭の灯り。吹く風のはらむ寒さは幾分か和らぎ、遠い春の予感を運んでくる。浴衣に甚兵衛を羽織った若い夫婦やコートを着込んだ金髪碧眼の観光客、ジャージ姿で徘徊する若者たち。どこからともなく立ち昇る湯気や土産物屋の呼び声、そして硫黄の鼻にまとわりつくような臭いが、温泉街を演出する。行き交う人々は明るい笑みを浮かべ、一歩一歩をリズミカルに運んでいく。

そんな浮かれた街の夜にも酔えず、僕はトボトボと熱に浮かされたようにさまよい歩いていた。喧騒を逃れるように暗い方、暗い方へと歩いていると、いつのまにか街のはずれに来ていた。人の姿はなく、舗装された道路の代わりに山道に雪が積もっている。杉林が目前まで迫り、月の明かりも届かず影と暗闇の区別もつかない。顔を上げ、目を凝らすと闇夜の黒に鳥居の朱がにじみわずかなに輪郭を見て取ることができた。

鳥居をくぐると小さな社殿と簡素な賽銭箱が置かれたみすぼらしい社が鎮座していた。僕は憂鬱を引き延ばしたような空気を肌に感じながらポケットに手を突っ込むと、ポケットに入っていた十円玉を無造作に放り込んだ。しかし、十円玉は賽銭箱の端にあたり跳ね返ってどこかにいってしまったらしく、チャリンという音はしない。軽く手を合わせ、願うことを探したが思い当たらなかったので、僕はただ目をつむり、首をうなだれていた。そのまま夜の闇に溶けてしまいそうだった。

 神社を後にすると、来た道をとぼとぼと帰り宿に戻った。夕食を済ませ部屋に引き上げると持ってきた文庫本を開き少し読むと床に就いた。布団にもぐるとさっきのわびしく、誰からも忘れ去られたような社のことを考えながら眠った。


 目を覚ますとまだ日はのぼっておらず、空は川の淵のような藍色をしている。窓を少し開けるとゆっくりと細かい針のような冷気がなだれ込む。冷たい水で顔を洗いパーカーを羽織ると窓際の籐の椅子に腰かけ、ここで朝を迎えることの意味を考えた。椅子のきしむ音を聞き、遠くの山の稜線をぼんやりと眺めまどろみと目覚めの間をさまよった。

 軽い朝食を済ませると宿を出て熊の手洗湯という外湯に向かった。ここの温泉街には源泉かけ流しの共同浴場が13か所あり、宿泊客は安い入浴税を払うことでどこでも自由に利用することができる。

 まだ早い時間のためか人の姿は少ない。それでも時折スキーウエアを着た若い男女とすれ違う。僕はできるだけ彼らを見ないようにし小さくなって歩き存在を希薄なものにしようと努める。

熊の手洗湯は小さな四角い形をした簡単な作りの木造の小屋のようだった。建物正面に暖簾もないふたつの引き戸があり、右が女湯、左が男湯になっている。扉の横にはポストが置いてある。その赤さは周りの風景から浮かび上がり僕の目を引く。石畳のかすれた灰色と風雨にさらされた木造建築のすすけた茶色、そして雪のくすんだ白しかないここではその鮮やかな赤は突飛すぎた。まるで、ドブネズミの群れに紛れ込んだハムスターのように鮮やかで羨望の的となり周囲の色に圧迫され今にもひしゃげてしまいそうに僕には見えた。きっと高い空から見下ろすと文字通りの紅一点だろう。-有色の孤独、絶対の赤、糾弾の的-そのポストはまさにそういったものの象徴であるようだった。

 ポストの赤さを目に焼き付けると、僕は扉を開け中へと入った。入るとすぐ脱衣所でその奥にすりガラスの扉がありその向こうが浴室のようだ。右手の壁にそって棚があり、それぞれの段に木の籠がおいてある。左手には鏡が一枚あるだけだ。とても簡潔でシンプルに機能的だった。すでに先客がいるようで、一人分の衣類がとても端正にそして律儀にたたまれている、まるで真新しい消しゴムの角のように。

 服を脱ぎ浴室へと入ると、簡単な湯船が前後に二つ並んでいる。立ち込める湯気の向こう、奥の浴槽にゴマ塩頭の老人が静かに、まるで湯船の檜と一体となったかのように首まで湯につかっていた。老人の体は長年愛情をもって使われた小道具のように、染みや小さな傷にまみれているががっしりとして威厳のようなものを感じさせた。

 僕は手前の浴槽にゆっくり身を浸す。湯は肌がピリピリするほど熱い。僕の頭は一瞬熱さのことで一杯になる。その瞬間をつくかのように声がした。

「若いの、ここは初めてか?」

僕はそのしゃがれた声に少し驚き、すぐに落ち着く。

「はい。とても熱いですね」

「わしはその熱い湯に長いこと浸かってお前さんを待っていたんだから、ちっとは辛抱せい」

「僕を待っていた、長く」不思議と老人の言葉はすんなり耳になじむ。

「そう、待っていた、とても長く」老人は何かを確かめるみたいに自分の手を見つめる。

「だが、それについて話す前にこの地について話そうかの」老人は一呼吸置く。

「ここはもともと山の熊たちが傷を癒すための場所じゃった。熊だけじゃない、猿も鹿も、山の動物が集まる小さな温泉じゃった、人が来るはるかな昔から」

「でも、人が来た」僕は慎重に言葉を選ぶ。

「ある時手負いの熊を追っていた猟師が森の奥にこんこんと湧き出る湯を見つけた。その話を聞きつけたふもとの村の小役人がいそいそと中央へと伝え、ここは人の知るところとなった」

「山はいつまでも山ではいられない」僕は山が切り開かれ、人の手が入るところを想像した。

「いったん、人が知ればもうそこは山でも森でもなくなる。熊たちはそこを捨てた、あるいは捨てきれずに殺された。わしはそれがいいとも悪いとも言わん。だが、時の流れはそういうふうに、だれにもどうしようもないものなんじゃろうと思う」

老人はそこまで言うと大きく息をつき、突然湯船から上がった。まっすぐに扉に向かい脱衣所への戸を開けた。僕が呼び止めようとすると、老人は振り向きもせずに言った。

「『のざわのざわめき』を探しなさい。それがお前さんのここに来た意味じゃろう」

それだけ言うとすぐに戸を閉めてしまった。

僕はすぐに後を追い脱衣所へと出たが、そこには何の気配もなかった、なにものもいなかったかのように。

 

湯から上がり外に出たがそこには、当然のように、入った時と同じ温泉街が広がっていた。

僕はまた当てもなく歩き出した。あの老人を思い出そうとしても、頭の中にもやがかかったようでぼんやりとした印象しか出てこない。つい先ほどのことなのにとても遠い過去、ちょうど幼少期の記憶のように滲んでしまっている。覚えているのは一つだけ、何かを探すように言われたということだけだ。それが何だったかもわからない、何かが僕の頭の中に侵入し半透明なゼリーで覆い尽くして思考を妨害しているみたいだ。そんな鈍い頭を首の上に固定して、石畳の道をとぼとぼと進んだ。

 開いたばかりの土産物屋をいくらかの人が冷やかしている。おやきを蒸す湯気があちこちの店先から競うように上がり、人が吸い寄せられていく。何台かの車が通り抜け路肩の雪をはねる。雑多な時間が始まったと僕は思う。早足でにぎやかな通りを抜け、追い立てられるように細い道へと逃げ込む。

 表通りを外れると、そこは少し上り坂になっており自然と歩みが遅くなる。ひっそりとした、たたずまいで、小さな祠や道祖神の碑がぽつりぽつりと点在する。そのどれにも小さいが真新しい花が供えてあり、そこには静かな安心感が漂う。小径は進むにつれて狭く急になり、しまいに階段へと変わった。両脇には民家の壁が迫っており、日の光もあまり射さず薄暗い。僕はだんだん早足になりかけるように進んだ。

 すると道はとつぜん開け、小さな広場のような場所に出た。背の高い木々に囲まれ、地面は舗装されず土の状態のままで、濃密でどっしりとした空気に満ちているせいか、独特の緊張感が漂っている。ここだけ誰にも見つからず昔のありようをとどめているかのように思われた。しかし、左手のひとかかえもふたかかえもありそうな大きな切り株の横にはごつごつとした石碑が立っているし、正面のひときわ高い杉の木にはしめ縄がかけられている。

杉の木はあまりに大きく天を衝くかと思われるほどだ。どっしりと構え何事にも動じない強さと風格を感じた。この木と対峙することは、圧倒的な存在感と正面からぶつかり挑むことのようだった。--この重圧に耐えきれるか、逃げ出さないか、自らの二本の足で立っていられるか、この木から目をそらさずにいられるか--

頭が重くなり、めまいに襲われ、あたりの風景がぐるぐる回っているように錯覚する。回転の速度はどんどん増し、そのたびに体に感じる重力も増していく。押さえつけられているようなのに、ふわっと浮き飛んでいきそうでもある。つぶされそうな圧力を感じるのに、体がどこまでも拡大し引き伸ばされそうでもある。もう何も聞こえず、何も見えない。僕は足を踏ん張り、両の眼を見開いて、拳を握りしめ立ち尽くしていた。三月だというのに額に汗をかき、息を吸うのも忘れていた。

 どれくらいの時間そうしていたか分からない。ある瞬間ふっと重圧から解放され、体がかるくなった。大きく息を吸い、肩の力を抜く。もう杉の木は威圧感を放ってはおらず、どこか親しみすら感じられた。

ふと気配を感じ、左を向くとそこにはさきほどの切り株が鎮座していた。これは前任者だと直感した。杉の木の前はこの欅がこの役割を果たしていたんだと思えた。そばの石碑には「千年の ことばを溜めて 冬欅 -勝又木風雨-」と彫られていた。そこにはまさしく千年の、悠久の重みがあった。

 僕はなにかに認められたような気がした。

 

午後からは、ゆっくりと暗示のような雪が降り始めた。空はパイプオルガンの音色のように重たい雲に覆われ、ぼたん雪がゆっくりと沈んだ。それは静かでかつ厳粛だった、宗教的な祭典のように。僕は部屋へと戻り(宿へと戻る道は不思議とすぐにわかった)籐の椅子に身をゆだねた。

 窓の外で降りしきる雪を眺めていると、体の芯まで冷えてくるようで、逆説的に遠い夏のことを思い出した。いつも哀しみに身を浸し、暗い淵に立っていた。どうしようもなく僕を包む漠たる痛々しさをいつも感じていた。そこには赤黒いザクロのような誘惑に幾度も繰り返し魅せられる僕がいた。

---ある時僕は踏切に立っていた。電車が通過し遮断機が上がる。ずいぶん、暑い日だった。

他の通行人に一足遅れて、僕も渡り始める。太陽が、じりじりと照り付け、汗が滝のように流れた。

すると、踏切の中ほどまで進んだあたりで再び警報音が鳴り遮断機が傾き始めた。その時、周囲の人々が心持ち早足になるなか、僕はふと立ち止まり、ぼんやりとこう思った。

「このまま、ここで立ち止まれば、、、」と。

この思い付きは瞬間狂おしいほど僕を引きつけた。甘い期待と焼けつくような背徳感が絶妙に混合された果てのない誘惑だった。それは避けがたく現れる宿命のように僕をしっかりと掴み離そうとしなかった。

しかし、結局僕は歩き出し、下がりきる前の遮断機をくぐった。蝉の、盛んに鳴いている日だった。---

 ふと、我に返り読みかけの本をとった。ページを開き読み始める。---主人公は遠い異国風の名前を冠している。不思議な鉄道の中で一人の友人とともに旅をし様々な人と出会い、そして別れる。天気輪の柱を見、星雲をのぞき込む。---僕はその静かに美しく、そして哀しい物語に心を共振させる。心の暗闇をいったん膨張するに任せ物語の哀と融和させることで、自然のその途方もない美しさを還元させ慰みとする。銀河を全身へと充満させ、またたく星をのこらず包み込む。そうしているうちに運命的な一節に出会い、僕は電気の走るような衝撃を受ける。

「ほんとうにどんなつらいことでも、それがただしいみちを進むなかでのできごとなら、峠の上りも下りもみんなほんとうの幸福に近づくひとあしずつです」

 あの日、僕を踏切から歩かせたものがなんであったのか、その答えを探してきたように思える。なぜもっと生きようと思ったのか、なにが僕を生へと固着させたのか。あるいはそれは固着などと呼べる強いものではなく、単なる惰性であったのかもしれない。

しかしあの時確かに僕はあの甘美な誘惑を振り切り、一歩を踏み出した。もしかしたらそれが、、、。そんなことを考えながら床に就き眠った。

そして夢を、見た。


 ふと気が付くと、僕は荒れ野にいた。見渡す限り、砂と岩の混じった灰色の大地に枯れた細い木が立ち尽くしている。焼けただれたような色をした空が覆いかぶさっている。

そこに生き物の気配はない。乾いた冷たい風は細かな砂を含み、チクチクと絶え間なく肌を刺激する。僕は急に恐ろしくなりせっつかれるように歩き出し、何かに追われるように走り出す。このままここにいると自分が損なわれてしまうような気がして、あるいはこれ以上損なわないために、僕は急いた、どこかに向かうのではなく、ここから逃げるために。

 そのうち遠くに町が見え、そこにたどり着く。先ほどとはうって変って、町は明るくこぎれいな建物が立ち並ぶ。行きかう人々も色彩豊かな衣服を身にまとい、楽しげな様子である。だが、気づく、そこにいる人々はみんな仮面をつけている、だれも素顔が見えない。そして、僕はそこにも自分がいないことに気づく、僕のいないところで世界は廻っている。

 すると、さまよう僕の前に一人の老人が現れる。僕は直感的に「この人を知っている」と思うが、思い出せない。老人はまっすぐに僕を見つめると目で「付いて来るか?」と尋ね、歩き出す。僕は後を追って一歩踏み出す。

その瞬間、あたりの空間が歪み、絵の具を溶かした水のように混沌とした渦になり、次の瞬間そこは青々とした一面の草原になる。僕は驚くと同時に、不思議と安心感を覚えた。来るべき場所に来たような気がした、パズルのピースが正しい位置に収まるように。

老人はゆっくりとした足取りで進み、僕は後を追う。

「探し物は見つかったかの?」老人は尋ねる。

「僕はずっと前から、ここに来る前から、それを探していたような気がします」僕は正直に答える。

「その通り。それはどこにでもあるが、どこででも見つけられるわけではない。また多くの、非常に多くの人がそれを探し求めるが、すべての人が見つけられるわけでもない。むしろ見つけられる人は少ない」老人は、長い時間をかけて思考した命題について話すように、ゆっくりと言葉を紡ぐ。

「でも、人はそれを求めずにはいられない」

僕はあたりに目を向ける。遠くに何か赤いものが立っている。それは緑の草原と青い空の中にあって異彩を放っているが、かまわず凛としている。

「なかには、それを奪われるものもいる」

どこかで大きな音がした。暴力的で理不尽で、そして絶対的な音だ。僕の心はチクリと痛む。

「その過程は茨の道だ。何度も闇夜を潜り抜け、燃え尽きるまで身を焦がす。それでも確かなものとはならない」

「僕には見つけることができるでしょうか?」

視界の隅にひとつのそびえたつ影が一瞬かすめた。そこから爽やかな風が起こり、僕をなでるように吹き抜ける。

「考えなさい。答えが見えなくても、迷い込んでも、それでも問い続けなさい。さあ、汽車はもう来ている」

そのとき、鋭い汽笛の音とともに空から汽車がすべり降りてきた。

「これを持っていきなさい」老人は小さな紙の切符を僕に手渡す。「これがあれば、お前さんならどこへだって行ける」

「ありがとう」僕はそれをもって汽車に乗り込む。窓際の席に腰かけ、老人に別れを告げようとする。

しかしもう彼は背を向け、歩き出している。彼の進む先には、闇に浮かぶ朱色が見える。僕がこころの中で礼を言うと、汽車は滑らかに動き出す。汽車は地面を離れ、あっという間に銀河を眼下に置く。天気輪の柱を見、星雲をのぞき込む。瞬く星々に目を凝らす。宇宙の美しさに息をのむ。

僕はもう孤独も疎外感も感じない。汽車は汽笛を鳴らし、なおも静かに、そして確かに進む…

 

そして、僕は目覚める。旅の終わりが近いことを知る。

目を覚ますと、外はまだ暗く夜が居座っていた。しかし、遠景の山の淵は白い光に縁どられ、夜明けが近いことがわかる。僕は手早く着替えると、外へ出た。風は鈍い冷たさの中に確かな予感をはらんでいた。

どこへ向かうべきかは、もうわかっていた。僕は迷うことなく、坂道をのぼり、上へ上へと進んでいった。街灯は少なく、あたりは暗いが、かまわず進んでいく。

 やがて、開けた高台に出た。そこはのざわの街が一望できるようで、眼下にはまばらに小さな明かりが見える。僕は呼吸を落ち着かせ、もう今にも明けそうな東の空を見やる。これまでの道程が一瞬、脳裏をかすめる。

 そして、山々の間から日が昇る。手前から順に街が目を覚ます。朝日に照らし出された街は一様に雪にうもれ、純白の世界となっていた。少しずつ溶けだした雪が日の光を反射し、キラキラと輝きだす、あちらでもこちらでも。その小さな輝きは徐々に広がり、混ざり合い一つの大きな輝きになる。まばゆさに一瞬目を細め、次に目を開いた時、僕は息をのんだ。のざわの街に燦々ときらめく一面の海が現れていた。

 僕はその水面を見つめる。刻一刻と変わる光の波がゆっくり大きく揺れている。波はしずかな揺らめきをもって雄弁に語りかける。今、僕にはその声が聞こえるようになっている。

痛みから目をさらさず、その痛みを、痛みを感じている自分自身を見つめよう。そして、じっと耐える、冬の寒さを堪えるみたいに。いつか、こうして春がくると信じて。すぐに見つからなくてもいい。時間をかけてゆっくり探していこう。いつか必ず見つかる。僕になら見つけられる。

夜は明けた、僕の人生はこれから、ここから始まる。その意味を知るその日まで生きていこう。

周囲の木々からキュッ、キュッという雪の溶ける音がした。風がさわさわと枝を揺らし、つもった雪を落とすと、もうその枝には大きくふくらんだ蕾がいくつもついていた。どこかで小鳥たちがさえずりあう。



 彼は大きく深呼吸するとくるりと背を向け、しっかりとした足取りで歩き出した。




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