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右京の決断とヒルダ

第7話堂々の完結

やっぱり、ヒルダ。ヤンデレ化したか。読者様の洞察に脱帽。

カラン……。


 その日の夕方、『伊勢崎ウェポンディーラーズ』の店のドアを開けてクロアが入ってきた。今日はヒルダをどうするかの決断をする日でもあるのだ。


「で、どうするの? ダーリン」


 右京は心配そうなヒルダとプイと外を見ているゲロ子を見る。店にはホーリーもいる。ネイとキル子は次の冒険の準備でここにはいない。


(キル子がクロアに見つかったら、ひと騒動起きるところであった。ネイは貧乳同盟側だが、キル子は明らかにクロアの敵だから)


「うん。ヒルダは使えるし、能力も素晴らしい。この店には欠かせない使い魔だよ」


「そ、それじゃあ、ご主人様」


 ヒルダの顔がパッと輝く。実はなんとなく不安であったのだ。だが、右京の答えは意外であった。


「ごめん。ヒルダ。君を俺は使いこなせない。俺はまだ未熟で使い魔を2人も使いこなせないのだ。今の自分にはゲロ子で精一杯なんだ」


「そ、そうですか……」


 ヒルダの目から涙が溢れてくる。ヒルダはなんとなく予想していた。右京にとってもこれは辛い選択だ。代わりにゲロ子の奴が目を輝かして右京を見る。なんやかんや言ってもこのカエル妖精、嫉妬深いのだ。


「じゃあ、ヒルダちゃんはクロアが引き取るよ」


「ちょ、ちょっと、待ってください。わたくしの意思があります」


 ヒルダはそうクロアを制した。涙をハンカチで拭うと毅然と言った。


「わたくしはホーリー様の使い魔になります」


「え!」


 これには一同驚いた。当のホーリーもきょとんとしている。


「ホーリー様は神官です。わたくしは聖属性のバルキリー。使い魔として傍に侍るのはおかしくないと思います」


 確かにバンパイアのクロアの使い魔をやるのは違和感がある。でも、それだけでホーリーの使い魔をする理由になるのだろうか。


「それにホーリー様なら、毎日、午前中にこの店のお手伝いに来ています。わたくしも手伝うことができます。これは店にとって相当助かると思うのですが」


「ああ。それは助かる」


 ホーリーと一緒にヒルダも午前中いてくれるだけで、店はかなり順調に回っていくだろう。右京の使い魔ではないけれど、今までと同じ状況になるのだ。これは右京にとっては悪くない。


「ふ~ん。バルキリーからそんな申し出があるとはね」


 クロアはちょっと右京に片目を閉じた。


「ホント、ダーリンは女の子にモテるんだから。まあ、いいでしょう。ホーリーは了解?」


「わ、わたしは別に構いませんけど……でも、わたしなんかに……」


 ヒルダはパタパタと翼を動かしてホーリーの右肩に座る。


「今日からよろしくお願いします」

「じゃあ、決まりね」


 クロアはそう宣言した。そして、そっと右京の耳元で囁いた。


「バルキリーは任意で等身大になれますからね。誘惑に負けたら妻として天誅を加えますからね」


「て、天誅って……」


(ただでさえ、神官の小娘とか鬱陶しいのに、この上、バルキリーまでとはね。いや、本当の強敵はあいつか)


 クロアは右京の右肩に乗っているゲロ子を見た。その顔は本当に嬉しそうである。カランとまた、ドアが開いた。キル子である。


「おい、右京、夕飯食いに行こうぜ。美味しいステーキを出す店見つけたんだ。あれ? 今日は人が多いな。ホーリーにヒルダにゲロ子、この人誰だ? 変な格好だな」


 クロアは黒うさぎの帽子をかぶった日光防御仕様の格好だ。キル子が見れば変な女の格好である。だが、その物言いは明らかに挑戦とクロアは受け取った。キル子のいつものセクシーな格好もクロアの神経逆撫でである。


「変な格好とは言いますね。そちらはダーリンを誘惑するへそ出し、ショートパンツ女、でかい上乳晒して!」


「な、なんだと、この変質者女が!」


 ヤバイ……。キル子はクロアに一番会わせたくない人物である。


「いや、まあ、ここは一緒に飯を食おう。そこでお互い紹介するよ」


「ダーリン、この女は誰よ。ホーリーだけでなく、こんな色黒ホルスタインまでゲットしてるなんて」


「右京、誰だよ、この顔色悪い、変な女」


「はあ~でゲロ」


 ゲロ子は女の争いを冷ややかに見ている。


「主様は女難の相が出ているでゲロ。女はゲロ子一人にしておくでゲロ」


 わいわいガヤガヤいいながら、クロアとキル子と一緒にステーキを食べに行く右京。商売繁盛と共に人間関係がより複雑になっていく。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「ああ……さすがはご主人様。ご主人様の魅力にどんな女性も心を奪われてしまいますううう……。スキスキ、ダイスキ……右京様」


 ヒルダは向かいの右京の店を窓越しに見つめてため息をつく。ヒルダがなぜ、仕える主人にホーリーを選んだのか。


「ここなら毎日、ご主人様を監視できます。わたくし、毎日、毎時間、ご主人様を見ていたいのです。1日100回は会話をして、100回はそのお体に触れ、お役に立つのです。ああ……。大好き、好き、好き、好き……」


 ホーリーの住む教会は右京の店のお向かいにあるのだ。道をはさんで窓越しに右京の様子が分かるのだ。

 

 暗くなった景色を見ながら、窓に息を吹きかけそこに『好き好き右京様』と書き、相合傘で『ヒルダ&右京』と書くヒルダ。やがて、窓一面にその文字が広がる。


 スキスキスキ……ウキョウサマ……。



「ヒルダ、病んでるでゲロ、危ないでゲロ」


「いつかは先輩を追い出して、わたくしが右京様の使い魔になりますからね。そうしたら、朝から晩までご奉仕を……ぐふぐふ……わたくしだけの右京様」


「ヒルダ、壊れたでゲロか?」



今回の収支

収入2万2千5百G


支出

スクトゥム ベースの盾 12G(3G×4)

革の加工代    100G

盾への加工代   1200G

冒険の経費     300G

謝礼        300G

計        1912G


差し引き 20588G(日本円で1千29万4千円)


「大儲けでゲロ。これもゲロ子のおかげでゲロ」

「ゲロ子、おまえ、そのスーツを脱ぐと……」

「主様は夢を見たでゲロ」

「そうかな」

「そうでゲロ」


 ちなみに勇者オーリスはゲロ子シールドを用いて見事にアシッドウォールを突破した。プラント119を切り刻んで地下道を突破すると、村を襲った大蛇を魔法攻撃で肉片残らず打ち砕いた。人々は彼を「カエルの盾を持つ勇者」と呼んで称えたという。


(いや、そんな二つ名で良いのか? 勇者オーリスよ)


 イヅモの町に『ゲロ教』という宗教の教えを広める『ウィリ』という人物が現れて、信者を少しずつ増やしていた。その説法は女神と共に凶悪なモンスターを排除する様子が語られ、神の奇跡の力が熱く語られたという。信者はみんな緑のローブとタイツを履いて、ゲロゲロと神の言葉を唱えているという。


「皆さん、我々には常にゲロ子神様が見守ってくださるご加護があるのです。さあ、唱えましょう。ゲロゲロゲロ……」


(第7話 完)


次回から、第8話 勝負の大剣 を開始します。

WDの全国大会へ出場することになった右京。どんな展開が待ってるのか?

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