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ハーレムパーティの戦い

この作品、商売が中心なのに冒険に出て戦っている……。

但し、主人公はまったく戦いません。戦うのは美しい女子のみ。

 その頃、右京はキル子とホーリー。新しく加わった使い魔ヒルダにシーフのネイを加えたパーティでヴィバテルの村に向かっていた。キル子は貴重な戦力である。戦闘での前衛はほぼ彼女一人でこと足りる。


 もちろん、キル子は右京の頼みに二つ返事でO.K.ネイの場合はたまたま店に遊びに来たところ、右京が冒険に出ると聞いて付いて来てしまった。今のネイは所属するパーティが決まっていないので暇なのだ。一応、戦力になるから了承したが、周りから見ればとんだハーレムパーティである。

 

 安全な街道から外れるとモンスターと遭遇する確率が上がる。途中でキラーラビットとか、ハーピーとかいかにも経験値稼ぎ程度の敵をキル子の剣とヒルダの魔法で軽く撃破してきた。だが、後、半日で村にたどり着くというところで厄介な敵と出会った。夜が更けてそろそろ安全なねぐらを探そうかと思っていた矢先である。


(おおおお……)


 変なうめき声をあげながらすりずりとうごめくそのモンスター。近づくにつれて鼻の曲がる臭いがする。これは肉の腐った臭いだ。敵はゾンビである。こちらでは『生ける屍』と呼ばれている。単体では動きは遅く、初級冒険者でも倒せるモンスターだが、数が多いと強敵になる。ちなみに頭を破壊しないとこのモンスターは倒せない。そして、目の前の敵は数が多かった。ピンチの部類である。


「数は20。右に7、正面が10、左が3」


 キル子が迷わずガーディアンレディを抜く。褐色に肌にしっとりと汗をかき、それが色っぽさを際立たせる。剣の魔力か、月夜に怪しく光るブレイドの部分にキル子はジンジンと体がうずいてしまう。思わず刀身を舌でぺろりと舐めてしまった。生娘まで痴女に変えてしまうガーディアンレディ。その戦闘力はすさまじい。


「いくよ! 全部、ぶっ殺してやるううう……」


 右に突撃したキル子はたちまち、3体の首をはねる。「あうううう……」とあえなく地面に倒れるゾンビ。キル子も斬るたびに快感で(あうううう……)っとなってしまう。そして、新たな快感を求めて残りのゾンビに斬りかかる。


 左の3体はホーリーが聖なる力ディスペルで攻撃する。ゾンビは黒魔法で動かされている魔法生物である。聖魔法を使う神官は相性がいい。魔法の祈りで解呪することでゾンビは粉々になるのだ。


「愛の女神イルラーシャ。哀れな罪人にお慈悲を……ディスペル」


 美しい光の輪が地面に現れたかと思うと光の輪がゾンビ3体を下から上へ包んでいく。それだけでゾンビは倒れる。


「ご主人様、炎の魔法を使います。ターゲットは前方。許可をお願いします」

「あ、ああ。頼む」


 右京の許可を得て、ヒルダが魔法を唱える。炎の魔法『フレイムピラー』である。巨大な炎の柱が次々と地面から現れて圧倒言う間にゾンビたちは灰燼と化した。

 

 3人の強い女子のおかげで右京の出る幕はない。一応、ショートソードを抜いてはみたものの、戦う機会さえ与えてもらえないのだ。一応、右京の正面にもチンクエディアを抜いたネイがいるから、仮にすり抜けた敵も右京までたどり着けないだろう。まるで美しき女従者に守られた王のような感じである。

 

 だが、戦闘はまだ終わっていない。キル子が残ったゾンビの首をはねたとき、今度は白い霊体が3体現れたのだ。スペクターである。ゴーストの一種で邪悪な霊体が人間の生命力を奪い取るのだ。


「ご主人様。どこかにネクロマンサーがいると思われます」


 そうヒルダが右京に言った。ネクロマンサーとは死人や霊を召喚することができる職業なのだ。黒魔法の中でも忌み嫌われる魔法なので使う人間はほとんどいないのだ。


「右京さん、森の中に呪文を唱えているゴブリンがいるのじゃ。両サイドに武装したゴブリン3体ずつ」


 目のいいネイがそう右京に告げる。エルフは目がいいというが、ハーフエルフのネイも半端ない。この暗い中でも見えるとはどれだけ目がいいのだと感心する。どうやら、ゴブリンネクロマンサーを中心とするパーティから攻撃を受けているらしい。


「ホーリー様、霧子様の剣に聖なる力を付与してください」


 ヒルダがそう指示する。エンチャットウェポンの魔法だ。スペクターやゴーストのようなアンデッドを倒すには特殊な武器がいる。通常の武器ではダメージを与えられないのだ。魔法剣や聖なる力を一時的に付与した武器でないと効果がないのだ。


「愛の女神イルラーシャ。邪悪な者に打ち勝つ力をかの者に与えんことを……」


 すぐさま、ホーリーがキル子の剣にエンチャットウェポンの魔法をかける。ヒルダは同時にファイアボムの魔法で前方の森に向かって砲撃を加える。だが、その強力な魔法攻撃は着弾の瞬間にはじかれた。飛び散った火の玉で森が明るくなる。どうやら、敵もアンチマジックシェルで対抗しているらしい。敵のネクロマンサーもかなりの高レベルだと思われた。壮絶な魔法戦が展開されている。


「おいおい、俺はどうすればよいのだ」

「総大将は後ろででんと構えてくれればよい」


「ご主人様は安全なところでご観戦を」


 キル子とヒルダは完全に戦いを楽しんでいる。ネイはその間、じっと森の中を見つめ何やらぶつぶつと数字を唱えている。どれだけの距離があるのか目視していたのだ。自分の弓の射程距離と敵の魔法攻撃の射程距離を計算していたのだ。近づくと攻撃されるから、こちらの攻撃が届くが向こうは届かないぎりぎりの線を見極めるのだ。


「うん、だいたいわかったのじゃ」

「何が? まさかお前まで活躍しないだろうな」


 ここでネイまでも戦いに参加して活躍してもらうと、右京の立場がない。


「ちょっと距離が足りないのじゃ。高さを出すことで補うのじゃ。右京さんはうちを肩車してくれればよいのじゃ」


 ネイがそうチンクエディアをしまうと背中にくくりつけた弓を取り出した。ここからは少しだけ距離があるので少しでも高い位置から攻撃しようというのだ。


「ほらよ」


 右京がしゃがむとネイがトンと可愛いお尻を載せてきた。ハーフエルフ特有の細い太ももが右京のほおをはさむ。ネイは小柄なので、右京はなんなく立ち上がる。ネイは右京に肩車をしてもらうと、さらにその上で立ち上がった。高さが3m以上の位置から射撃できるのだ。


 ただ、そんな体制で弓を射るのは難しい。だが、エルフの村で3歳から鍛え上げられたネイの腕はそんな状況でもハンデにならない。直立不動でそんな不安定な場所からでもネイは弓で狙いをつける。


「自分だけ安全なところから攻撃するのは許さないのじゃ」


 ピュンと暗がりの中に矢が一直線に吸い込まれる。まさか、直接攻撃が来るとは思っていなかったネクロマンサーは弓に対する備えができていなかった。射程距離外で安心していたことが仇となった。


「あぐっ!」


 ネイが放った矢は見事にゴブリンネクロマンサーの額を射抜いた。同時にヒルダの魔法を阻んでいたシールド魔法が失われる。ゴブリンパーティはヒルダのファイアボムの連続攻撃を受けてあっという間に掃討された。さらにキル子が飛び回るスペクター3体を切り伏せてあの世へ逆戻りをさせると辺りは静かになった。


「強い……。強過ぎるだろ。この女子パーティ」


 特にキル子とヒルダが桁違いに強い。ホーリーも初心者の神官とはいえ、自分が使える範囲の魔法を効果的に使っている。右京は自分が商人で戦う職業ではないし、彼女らのようなファンタジー世界の住人でもないから、戦えないことが嫌なわけではないのだが、全く活躍できないというのも情けないと思った。ネイでさえ、一撃でボスを射止めているのだ。


(やっぱり、ここでお笑い要素がないと俺だけ浮くだろうが。ゲロ子、どこへ行ったんだ~。早く戻ってこいよ~っ)


 ゲロ子がいれば右京は浮かない。ゲロ子の存在は大きいのだ。


あうううう…ってゾンビが言うと不気味だが、キル子が言うと何故かエロい。

この違いは何だ?(想像力)

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