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伊勢崎ウェポンディーラーズ ~異世界で武器の買い取り始めました~  作者: 九重七六八
最終章 右京の魔弾(メビウスショットガン)
320/320

クロアEND

1年と3ヶ月ありがとうございました。

お気に入り登録をしていただいた皆さん、感想をくれたみなさん、評価をいれてくださったみなさんに感謝します。あと、本日発売(10/22)の本を買ってくださったみなさん、本当にありがとう。


「はあ……相変わらず、地方に来るとあんたたちみたいなクズが生息しているのね」


 クロアはそう馬車の中から顔を出した。時間は夕暮れ、クロアの嫌いな太陽は沈みつつある。クロアの専用馬車は目立たない黒色塗装。長距離用の棺桶ベッドを積んだ高級車ではなく、小さな馬車だ。御者は魔法で動かすマジックドールである。


「なんだよ、姉ちゃん。それはこっちのセリフだぜ」

「馬車はお忍び仕様かい?」

「たぶん、貴族様だよな。貴族のお姫様が首を突っ込むとはな。世間知らずもいいところだ」


 状況を説明しよう。総勢20人を超える盗賊団。国が安定しているオーフェリアではこんなならず者はいないが、ここは地方に治安組織が十分に関与できない那の国である。行商の商人の馬車が襲われている。商品を奪い、女性は売り飛ばし、男は奴隷として国外に売る。とんでもない連中である。この道は街道から外れた脇道。恐らく、やむをえぬ事情で先を急いだのであろう。行商人も普通なら選択しない愚かな行為であった。


「可愛い顔しているじゃないか、お嬢ちゃん」

「すげえ美人だ。しかも若い」


「護衛もなしにこんなところをうろついているとは、襲ってくださいといっているようなもの。お頭、この女、どうします」


「ふん。決まっているじゃないか。上玉はみんなで楽しんだ後、売りとばす。貴族のお嬢様だったら、身代金がたんまりもらえる」


 そうヒゲヅラのリーダーが手入れの行き届いてないヒゲを右手で撫でて集団から出てくる。


「はあ……。絵に書いたような悪党ヅラね」

「口の悪いお嬢様だ」


 パタンと馬車の扉を開けて、クロアはトンと地面に降りた。襲われた馬車から引き摺り下ろされた女性が2人。鎖に繋がれている。男性が3人、暴行されて血だらけでロープで縛られている。


「助けてください……」

「えぐ……えぐ…っ……乱暴しないで……」


(強盗は死刑だね。オーフェリアでも那の国でも)


「一応、名前を名乗っておくわ。私の名前はクローディア・バーゼル・伊勢崎」


「バーゼル?」

「知らねえな」

「あら、まだ那の国じゃ、知名度がないか。あなたたち、運がないね」 


 クロアはクイクイと右手を差し出し、かかってこいとアピールする。左手にはアスタロトの杖を握っている。


 シュッ……トン!


 不意にクロアの髪が風でなびいた。矢が放たれ、クロアの頬をかすめるようにして馬車の扉に刺さったのだ。だが、微動だにしないクロア。


「お嬢ちゃん、ウィザードだろう。その強気の理由は分かるぜ。だが、強力な呪文を唱える暇はないぜ」

「俺たちは20人もいるんだ」

「正確には22人ね。でも、2人減るか」


 木の上で弓を構え、クロアに狙いをつけていた盗賊二人が木から落ちた。


「な、どうした!」

「か、お頭、し、死んでます」


 ざわっ…ざわざわ……。盗賊団の心に沸き起こる恐怖。クロアの目が赤く変化する。魔力全開の印である。


「心臓を止めたよ。血液を凍結させるフリーズ・キル。即死魔法だけど、これで18人」


 また、ばたりと倒れる盗賊2人。


「こ、この女、殺す!」


 盗賊団は武器を構えてクロアめがけて襲いかかる。クロアは右手を差し出した。


「ウォール!」


 巨大な石の壁がクロアの前に現れる。それだけではない。左右、後ろにも地面から突き出した。盗賊団は全員、石の壁に閉じ込められた。


「天井もいるわね」


 パチンと指を鳴らクロア。空中に石の壁が現れ、ガシャンと音を立てて蓋をする。


「出せ、謝る、もうしません!」

「助けてくれ!」


「はあ~。あなたたち、今までそうやって命乞いする人々に随分とひどい目に合わせてきたのでしょう。今はその報いを受ける時ね」


 クロアはパチンとまた指を鳴らした。


「ファイア・オーブン」

「ぎゃっ!」


 一瞬だけ盗賊団の声が上がった。だが、それは一瞬だけ。岩の壁がパタン、パタンと倒れて消えていく。魔法効果が切れたのだ。


 後には白い灰が山になっているだけ。夕暮れどきの風がその灰を巻き上げて散らしていく。


「大丈夫ですか?」

「は、はい、助かりました……」

「本当にありがとうございました」

「どういたしまして。悪はいつか滅びるだけだよ」

「あの、あの盗賊団、どうなったのですか?」

「まあ、聞かない方がいいかな」

「母様かあさま~っ!」


 遠くの方から複数の馬が近づく音がする。クロアは行商人たちに街道に戻るよう促し、近づく者たちを待った。


 やってきたのはクロアと同じ黒髪の少年。歳は14,5歳というところか。よく見るとクロアと顔が似ている。よく観察すると八重歯が覗く。


「母様、また僕たちを出し抜いて、先に行ってしまう。何かあったら父様とうさまが悲しむでしょう」


「ダーリンは心配症だね。クロアが無敵だってこと知っているのに」

「ゲロゲロ……」


少年の左肩に座っているカエル妖精が口を開く。


「クロアは相変わらず、節操がないでゲロ。おかげでバーゼル家の当主、京一・バーゼル公爵様がいつも苦労するでゲロ。自由奔放な母親をもって息子が苦労するでゲロ」


 この少年はクロアと右京の子供。クロアは右京の妻となっても投資家と魔法アイテムショップはそのまま経営。自由気ままに過ごしている。バーゼル家はこの少年に継がせているのだ。


「だって、そんなこと言っても、クロア、那の国の伊勢崎ウェポンディーラーズの支店が気になったんですもの」


 那の国には帰蝶と満天が経営する支店がある。商売繁盛で見に行く心配はないのであるが。


「母様、それは方便でしょう。本当は珍しい魔法具を探しているんじゃないですか!」

「ぎくっ!」


「やっぱり、そうでゲロ」

「いいじゃない、京一。魔法のアイテム収集はクロアの趣味よ」


「子供が3人もいるのに、カワイコぶりっ子するなでゲロ」


「ふん。ダーリンの使い魔から息子の使い魔になっても、口は悪いのは変わらないわね。ゲロ子、お前は年月たっても年取らないわね」


「ゲロ子は永遠のアイドルでゲロ」


「それを言うなら、クロアもだよ。ダーリンと出会って15年経つけど、今でも出会ったままの姿」

「さすがバンパイアでゲロ」


「お母様、とにかく、戻りましよう。父様は母様がいないと寂しそうだし、妹のミッシェルとエステルはまだ母様と離れたくないのですよ。それにマリアおばさん、また子供が生まれるって今日、連絡がありました」


「あら、マリアってやるわね。あの子、4人目だっけ。旦那のピルトも大変ね」


「ピルトさんは町一番の職人ですよ。あのオーフェリアで一番の鍛冶の匠カイルさんの一番弟子ですから」


「明日には帰るよ。那の国のダンジョンに幸せの指輪ってアイテムがあると聞いたから」

「母様、幸せの指輪ですか?」


「そう幸せの指輪」

「クロアは幸せじゃないでゲロか?」


「馬鹿ね。幸せに決まっているじゃない。素敵な旦那様、かわいい子供。これ以上ないよ」

「欲張りでゲロ」


「クロアが幸せだから、他の人にも分けてあげたいだけよ。それが魔法ショップの経営者というもの。でも、久しぶりにダーリンに会いたくなったよ。もう1週間も会ってないよね」


「じゃあ、帰りましょう」

「次はダーリンと一緒に行くとするよ」


 マダム『クロア・バーゼル・伊勢崎』は幸せである。


クロア END


他のヒロインのエピソードはないのかよ? ネイは? ヒルダは? ステファニーは?

ごめんなさい。彼女らのエンディングは思いつかなかったW でも、ゲロ子は3つの話、全部に登場しています。真のヒロインはこいつだったようですW


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