表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
伊勢崎ウェポンディーラーズ ~異世界で武器の買い取り始めました~  作者: 九重七六八
最終章 右京の魔弾(メビウスショットガン)
318/320

キル子END

キル子ファンに送るショートストーリー。

警告:キル子ファン以外は読まない方がいいかも。

「いっらしゃいませ! 今日はどんな品物の買い取りでしょうか?」

 

 武器買い取り店の伊勢崎ウェポンディーラーズには、買い取り希望する客、何か掘り出し物はないかと探しに来た客で今日も繁盛している。この本店のフロアマネージャーをしているネイ・バローは、店の女性用スーツをビシッと着こなし、ハンナやタバサを部下にこの本店を仕切っている。

 

 右京がこの異世界に戻ってきて4年の月日が経っている。幸い、『混沌なる意思』の復活による混乱は、まだ起きていない。人々は変わらない平穏な日々を過ごしている。


「女性冒険者用の鎧があると聞いたのですが……」


 そう店を訪れたのは女戦士。先ほど、冒険で手に入れた武器を数点売りに来たパーティの一員である。彼女は武装していたが、それに不釣り合いなものを押していた。ベビーカーである。中には赤ちゃんがスヤスヤと眠っている。


「ああ、冒険者ママのお客様じゃな。専用の商談ルームがあるので、こちらへどうぞじゃ!」


 ネイはそう言って女戦士を特別に作られた店の一角に案内する。そこは女性のしかも働くママ専用のショールームスペースがあった。小さな子供が遊べるスペース。赤ちゃんを寝かしつけられるベビーベッド。世話をするスタッフまでいる。


「噂には聞いてましたが、本店にはママ冒険者専用の場所があるって本当だったんですね」

「はい、そうですじゃ」

「いらっしゃいませ。あたしがセールスアドバイザー兼女将の伊勢崎霧子です」


 そう言って名刺を差し出したのはキル子。あの危ない鎧姿ではないが、店の女性用のスーツ姿を見事に着こなしていた。足元には3歳くらいの女の子がくっついて、恐る恐る様子を見ている。


「ネイ、この方のお子様をベビーベッドへ。あと、お茶を持ってきて」

「承知したのじゃ、女将おかみさん」


「それから、左京ちゃん。今からママはお客さんと大事な話をするから、あっちで遊んでおいで」

「うん。ママ、早く来てね」


 小さな手でバイバイする。3年前に生まれた右京とキル子の子供だ。もう一人、最近生まれたばかりの男の子もいる。屋敷に置いてベビーシッターに世話を任せているが、一日に何度か授乳しに帰っている。


「あなたが霧子さんですか? ああ、私、あなたに憧れて冒険者になったのです。武器屋さんと結婚して、お子さんが生まれても冒険者で活躍するママさん戦士で有名ですから」


「それはありがとう。どうぞ、ここに座って」


 ソファに座るよう促すキル子。ソファはガーディアンレディ柄の生地である。


「子供がいても、稼がないといけないからね。それで働くママ冒険者のために、事業を色々展開したのです」


「知っています。今は各町にある月海亭グループの宿屋、冒険に出る度に赤ちゃんを預かってくれて助かっています。それに最近は女性専用の武器も出るようになってうれしいです。選ぶことができるって幸せです」


「買い取った武器を女性用に改造して販売しているんです。一応、『断罪レディ』ってブランド名が付いているのだけど」


「この剣、ここで買ったんですよ。断罪レディのキルコモデルですよね」


 キル子が見るとこの店で販売しているガーディアンレディを商品化した剣である。ところどころは、簡略化してあるものの、その分、値段が安く、それでいて実用的でさらに可愛いが売りである。今、一番の売れているアイテムだ。最近、アマデオと結婚したハンナが毎日、バンバン売っている。


「で、今日は何を買いに?」

「鎧です。赤ちゃんを連れて移動するのに便利な鎧があるって聞いたもので」

「はい、あります。これです」


 町から町へ移動するママさん冒険者が苦労するのは、子供の移動。さすがに子供連れでダンジョン攻略とかはしないが、拠点となる町に自分の子供を置いておきたいという声に応えてキル子が作った鎧があるのだ。名づけて、『カンガルーの鎧』


 夫である右京から、カンガルーという動物はお腹の袋に赤ちゃんを入れて育てると聞いたことから思いついたデザインだ。通常のブレストプレートの用だが、お腹部分にモイラ布で作られたポケットがあり、そこに赤ちゃんを入れられるのだ。スライムの皮を使った低反発パッドで、重量が肩に負担をかけない仕組みだ。


「ああ、これ、これ。こういうのが欲しかったのよ!」

「値段は働くママの応援価格。2600Gです」


「思ったよりも安いわね」


「ここは買い取り店ですから。元の仕入れが安いんです。新品武器だとこの4割高はすると思います。そもそも、こんなデザインはないだろうし」


「これいただくわ」

「どうぞ、試着してください。サイズの微妙な調整はサービスにしますね」


「キル子、お客様かい?」


 右京が顔を出した。左肩にはゲロ子が腰掛けている。


「ああ、キル子、乳臭いでゲロ。どんなけ、主様をたらしこんで子供を作るでゲロ」

「お前、何年たっても口が悪いな」


「仕方ないでゲロ。ゲロ子だからでゲロ」

「お前は左京と遊んで来い」


「アイアイサー!」


 ぴょんと飛ぶゲロ子。今は子守りも業務の一つだ。


「なあ、右京」


 キル子がそっと背中を右京に預けた。そして、首を傾けて右京を見る。


「あたしは幸せ。お前の妻になれて幸せだ」

「俺もだよ。俺の嫁がお前でよかった」


 グググ……っと顔が近づく仲良し夫婦。


「ギャー、ヤメるでゲロ。雨合羽は脱がさないでゲロ~」

 

 ピタッと動きが止まる、キル子と右京。


「左京ちゃん、またゲロ子をいじめている。止めてこなきゃ」

「あの子、キル子に似て運動神経いいからな」

「将来楽しみだな」

「ああ。キル子のようなすごい女戦士になるよ」


 伊勢崎ウェポンディーラーズ、今日も客足が途絶えない。

「買う客、売る客、みんな満足、得をする。伊勢崎ウェポンディーラーズ」


「儲かったでゲロ」


キル子END


ホーリーENDは、この後、すぐ公開です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ