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伊勢崎ウェポンディーラーズ ~異世界で武器の買い取り始めました~  作者: 九重七六八
第20話 怪異の戦槌(ソウルハンマー)
311/320

そして現代へ……

エンド目指して突っ走る……。一応、土曜日がエンド予定。毎日更新……予定(笑)

 アヅチの遺跡を発掘していた若き日のハインリッヒは、その核心たる扉の前で計画を頓挫しなくてはならない自体になっていた。どうにもその鋼鉄の扉が開かないのだ。それは固く閉じられ、どんな物理的な力、魔法力でも開けられなかったのだ。

 

 だが、ひとつだけ方法があることを知った。ここまでの発掘で見つけた古びたウォーハンマーが鍵であった。魔神を呼び出し、それをウォーハンマーに封じる。そうすることで、魔神を使役することができるのだ。


「そんなことができるのか?」

「できるよ、ダーリン。但し、儀式が必要」

「儀式?」

「魔神を呼び出す儀式。それには生贄が必要」

「そんな……」


 一同は声を失った。レイリの沈痛な表情とこれまでの経緯を考えればハインリッヒがやったことが想像できる。彼はこの遺跡を発掘するために、娘を生贄にして魔神をウォーハンマーに封じ込めて使役をしたのだ。魔神の力で発掘を成功させて大金持ちになったと言える。


「自分の娘を生贄にするなんて狂ってる……」

「遺跡の発掘に夢中になってしまい、やってはいけないことに手を出してしまったのよ」

「おじい様……」

「エステルちゃんが可哀想……」


 ホーリーがウォーハンマーに頬を寄せて涙を流す。綺麗な雫がウォーハンマーの柄を伝う。するとウォーハンマーが輝き始めた。エステルが再び、現れ、ホーリーに頬ずりをする。その仕草から(ありがとう……)と言っているようであった。そしてゆっくりと消えていく。その表情は安らぎを得られたような穏やかなものであった。


「それにしてもゲロ。あのじいさんの魂もどうして鎖に繋がれていたでゲロ?」

「それはだね」


 クロアがゲロ子をちらりと見た。


「人を呪えば、結局、自分に帰ってくるんだよ。ゲロ子、お前もせいぜい気をつけなよ」

「大きなお世話でゲロ」



「これで揃った」


 今まで黙っていた中村音子なかむらねこがそうポツリと言った。彼女の悲願である聖なる5つの武器の探索。それが成就したのだ。今、自分が持つ『アポカリプスの斧』。キル子が持つ『ユニコーンランス』。クロアが持つ『アスタロトの杖』。スチュアート王が持つ『エスパダ・ロペラ』。そして今回、ホーリーが持つことになった『ソウルハンマー』


これで5つだ。


「5つ揃った。これで私を元の世界へ帰せ、マダム月神!」


「おいおい、音子ちゃん、急だな。俺はまだ帰ると決めてないぜ!」

「私は帰りたいんだ!」


「あ、右京様」


 ホーリーの手からソウルハンマーが勝手に離れた。それはキル子、音子、スチュアート、クロアも同じだ。5つの武器が空中に浮かび、円を描いて高速で動く。音子と右京を取り囲んで渦と化した。


「な、なんだ、これは!」

「ダーリン!」

「右京様!」

「右京、行くな!」

「右京さん!」

「右京、わたくしを置いていくのですか!」


 クロア、ホーリー、キル子、ネイ、ティファが右京に手を差し出す。右京も手を差し出す。(誰かの手につかまれば、渦から脱出できる……)


 そう右京は思ったが、虚しくその手は誰もつかむことができなかった。


「わああああっ……」

「ゲロゲロ……」


 右京と音子、ついでのゲロ子が消えた。5つの武器も消えた。


「そ、そんな。右京、あたしを置いて消えるなよ! あたしの心を奪ったまま、元の世界へ帰るなよ」


 キル子の目から涙が伝う。ホーリーも青いどんぐり眼から涙があふれる。


「わたしは右京様に恩返しが済んでいません。戻ってきてください、右京様……」


「消えてもクロアのダーリンは右京だけだよ……」


 クロアは表情を変えないまま、そう呟いた。






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