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伊勢崎ウェポンディーラーズ ~異世界で武器の買い取り始めました~  作者: 九重七六八
第4話 不幸のクリスナイフ(ボーチャークラッシュ)
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7日目

 ネイたちが廃坑から見つけ出したのは、長さ45センチ、厚さ5センチほどの薄い箱である。中を見ようと仲間が言い出したので、シーフのネイは役割上、開けて中を確かめようとした。だが、箱は中から鍵がかけられているのか簡単に開けることができなかった。


 開錠のスキルをもつシーフのネイが開けられない仕掛けということは、魔法でロックがかかっているのかもしれないと一同は考えた。そこで、最近、パーティに加わった魔法使いの若い男、名前をアルトと言ったが、彼に見てもらったが、魔法でロックされているようでもなかった。魔法でロックされているなら、魔法使いのアンロックの魔法で開錠できるからだ。となると鍵が物理的にかかっているということになる。


 そこでネイは酒場の2階の自分の部屋へ商売道具のシーブス・キットを取りに行った。本格的に開錠しようと思ったのだ。ところがその間にその事件は起こった。パーティの仲間がその箱を開けてしまったのだ。なぜ、簡単に蓋が開いてしまったのかは分からない。ネイが最初に開けようとした時には開かなかったのに。


 その時に箱を開けて中の呪われた短剣を見たのは3人。リーダーの戦士の男ともう一人の戦士、そして神官の男だ。魔法使いのアルトはその夜のうちに姿が見えなくなった。元々、お試しでパーティに入った男であったから、こんな状況になって逃げ出したのであろう。


 短剣を見た3人とも体に違和感と右手首に蛇のあざが刻まれていた。その痣は心臓に向かって徐々に移動していく。初めこそは笑い飛ばしていたが心臓に近づくにつれて恐怖心に取り憑かれた。特に神官の男は箱の中を見て、恐怖にとりつかれたように取り乱していた。


 こんな呪いは見たことも聞いたこともない。3人は部屋に閉じこもってジリジリと蛇が心臓に近づくのを待った。その間、ネイが情報を集めに街中を奔走したが、手がかりは全く見つからなかった。


 それではと魔法の道具屋や、魔術師のところへ箱をもっていったが、みんな一目見るだけで断った。一箇所だけ、3000G払えば解呪してやろうというところがあったが、そんな大金は持ち合わせていない。そんなことをしているうちに、蛇が心臓まで到達した。箱の中身を見てから7日経っていた。


 この頃には3人のうち、神官の男は失踪してしまったが、7日目に心臓に達しても何も起こらなかった。リーダーの男はほっと胸をなでおろし、単なる刺青を施す呪いだったようだと結論づけた。


 だが、その結論は早すぎた。彼は久しぶりに部屋の外に出た。恐怖で震えていたここ数日の日々を忘れるかのように大きく背伸びをした。その瞬間、荷物を満載した荷車が何かのはずみに動きだしたのだ。リーダーの戦士はネイの見ている前ではねられてしまった。幸い命は取り留めたものの両足に右腕を折る大怪我であった。荷車は坂の途中に輪留めをして停車しており、それが突然動き出してその下敷きになったのだという。

 

 悲劇はそれだけにとどまらない。もうひとりの戦士は、何も起こらなかったことで開放感に浸り、同じ時間に酒場へ繰り出したが、運が悪いことにそこで喧嘩に巻き込まれ、剣で斬られてこれも大怪我を負ってしまった。今や二人とも病院で入院中なのである。


「それ、ただの偶然かもしれないじゃないか」


 右京はそう言ったが内心は穏やかではない。偶然とは言ってみたものの同じパーティのメンバーが同じような時間に事故に巻き込まれるなんてどう考えてもおかしい。人間では計り知れない強大な力が働いているのではないかと思わざるを得ない。


 短剣の呪いと言われれば、そう信じてしまう十分な理由になる。しかも蛇のあざは気持ち悪い。これが7日で心臓まで移動してくると死んでしまうような目にあうかと思うと自然にブルブルと体が震えてくる。


 呪いの込められた武器やアイテムというのはこの世界には存在する。レアな存在なので、右京は今までお目にかかったことはないが、こういう商売をしていれば、一つ、二つの噂話を聞くことがある。呪いのアイテムは解呪をすれば問題ないのであるが、解呪が成功する例はあまりないという。それだけに厄介な代物なのだ。


 だから、呪われたアイテムはギルドでは扱わず、神殿に固く封印されるのが普通だと言う。封印にはお金がかかるから、手に入れた冒険者はこっそり処分する場合も多いと聞く。そして呪われてしまった場合は、神殿でお祓いを受けるしかないのだが、強力な呪いの場合はそれすらも効果がないという。呪いの種類にもよるが、呪われたら甘んじてそれを受けて生きるしかないのだ。


 だが、死んでしまうほどの強力な呪いは滅多にない。今回のケースも死んでしまうほどではないが、大怪我をして2人が入院しているのだ。これはとてつもない強力な呪いであると推測された。そんな呪いのアイテムに出会ってしまうとは、今日の右京はよほど運がないと言える。


 右京はもう一度、箱の中身を見る。一度呪いを受けたから、2回開けても問題はないだろう。箱の中身を見ると短剣が入っていた。それは刃が波形にうねっており、美しい造作である。一目見て右京はこれがクリスナイフだと鑑定した。


 クリスナイフ。洗練されたデザインのこの短剣はマレー民族の固有のもので、今でも結婚式の時に花婿が装飾品として身につけることで有名である。それは隕鉄を使って作られている。隕鉄とは地球上に降り注いだ隕石の中に鉄分を含んだもので、ニッケルと鉄の合金である。大変貴重なものである。


 これを純鉄と重ねて3層にし、叩いて作るので刀身に様々な模様が現れて、一つしかできない短剣になるのだ。柄は黒水牛の角で作られており、黒い光沢に加えて複雑な彫刻がされており、神秘的な風合いをより高めている。鞘も豪華な装飾に覆われ、宝石が散りばめられていた。見ただけでかなり高価なことが分かる。

 

 だが、これは呪いのアイテムなのである。どんな呪いか知らないが、7日後には死んでしまうかもしれない不幸が訪れる強力な呪いなのである。


(どうする……。わからないことが多すぎる)


 右京は悩んだ。普通に考えれば神殿にもって行くのが正しい行動だろう。だが、そんな単純な話でこの厄介な状況が解決されるとは思わなかった。思わなかったからこそ、ネイは右京に助けを求めに来たのであろう。呪いという厄介な問題だから誰にでも相談できるわけではない。


(となると……。やはり、あそこしかないか……。極力、行きたくはないが……)


 右京にはこの状態を何とかしてくれる人物に心当たりがあった。この危機的状態から脱出するにはそこへいくしかないだろう。ゲロ子は具合が悪いし、ネイはまだ14歳の女の子だ。ここは自分がしっかりするしかないのだ。


「右京さん、何か方法があるのかや? うちは怖いのじゃ」

「ネイ、任せておけよ。ここはこのお兄さんが何とかしてやるよ」


 一応、カラ元気でネイを励ます。


(仕方がない。あそこへ行くか……。餅は餅屋だ)


 右京は日がとっぷり陰るのを待った。今から助けを求めて会いにいく人物は、日が暮れないと会えないからだ。


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[気になる点] ~そんなことをしているうちに、蛇が心臓まで到達した。箱の中身を見てから7日経っていた。 ここと ~ この頃には3人のうち、神官の男は失踪してしまったが、7日目に心臓に達しても何も起こら…
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