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伊勢崎ウェポンディーラーズ ~異世界で武器の買い取り始めました~  作者: 九重七六八
第3話 再会のチンクエディア(エルフダガー)
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蘇る記憶

右京とネイはもう一度、ファビオの家を訪れる。出てきたファビオに完成したばかりのチンクエディアを見せる。それを見たファビオは固まる。剣に付いている青い大きな宝石が吸い付くようにファビオを離さない。それはまるでギリシアの魔物メディーサの目のようだ。


(どうしたんだ、目が離せない。思考が固まる……。体も固まる……体が石になる)


 ピキピキと音を立てて、ファビオの体が石に変わっていく。足から徐々に石化していき、ついには頭のてっぺんまで石化が達した。


「父様、思い出して!」


 そうネイが自分のチンクエディアを鞘から抜いた。灼眼石が輝いたとき、ファビオの体にヒビが入り、ペキペキと割れていく。中から現れたのはファビオではなく、土木技師のクロードである。


「思い出した、思い出したぞ」

「父様」


「ネ、ネイか。分かるぞ、あんなに小さかったネイがもう立派なレディに」


「父親がいないからグレてシーフになってしまっているでゲロが」


「ゲロ子、感動の再会を台無しにするなよ」


「ゲロゲロ……それより、記憶が戻ったことでこれからが楽しみでゲロ。韓流ドラマが始まるでゲロ。ぬとぬと、ぐちゃぐちゃの愛憎劇でゲロ」

 

 だが、結果的にはそんなことにはならなかった。記憶が戻ったクロードはセリアを恨むことはなかった。クロードは川の護岸工事に出向いて事故に巻き込まれ、川へ転落した。それを助けたのが偶然、通りかかったセリア。セリアはクロードを連れて帰って懸命に看病したのだ。やがて、意識が戻ったクロードだが記憶喪失になっていた。自分の名前も思い出せない。

 

 セリアは前年に結婚した炭焼きを仕事にしていた夫が病で死んでしまい、うら若き未亡人であった。クロードが死んだ夫に似ていることもあり、ケガが完全に治るまでクロードの世話をしていたが、やがて、優しそうなクロードに心が惹かれていき、クロードも献身的な介護をしてくれたセリアを愛してしまったのだ。

 

 二人は結婚して8年の時を過ごすことになったのだ。そして、その妻であるセリアは胸の病に冒され、その余命もわずかであった。


「あなた……ごめんなさい。私はあなたが誰なのか、調べるべきでした。そうしたら、お子さんや奥さんがいたことももっと早く分かったでしょう」


「セリア……。そんなことはない。これは運命だったんだよ」

「でも……ゴホゴホ……」


「眠りなさい。何も心配することはないよ」


 貧しくとも一緒に過ごした8年の歳月を思い出す。やがて、セリアの閉じた目から涙が一筋すっと流れた。温かい夫に看取られて終える短い人生であった。



「クロードさん。不幸な事故の結果ではあったけど、俺はクロードさんもセリアさんも悪いとは思いませんよ。そりゃ、ネイやエルフの奥さんは8年間の歳月を奪われたけど」

 

 右京は妻を失って肩を落とすクロードを励ました。結果的に右京が改造したチンクエディアが彼の記憶を呼び戻したのだ。しかし、それは余計なお節介であったのかもしれない。


「記憶が戻ろうと私は確かにセリアを愛していた。彼女を最後まで看取ることができてよかったと思っている。だが、同時に私はネイやドロテも愛している。だが、二人には悪いことをした。記憶がなかったとはいえ、別の女性と8年も過ごしたのだ。嫌われて当然だろう。ですが、右京さん、私は感謝します。全てがわかって良かったのです」

 

 クロードはセリアのお墓を作り、丁寧に葬った。家を整理したあと、ネイと一緒にエルフの村へ帰るそうだ。今後どうなるのかは分からないが、クロードは全てを話すという。



「ああ~面白くなかったでゲロ。お涙ちょうだい話は人気が出ないでゲロ」

「うるさい。人気ってなんだよ? ゲロ子、人間は複雑な運命の中を泳いでみんな生きているんだよ。こんな数奇な運命もあるんだ」


「面倒でゲロ。それは置いといて」

「置いといてかい!」


「チンクエディアは売れるでゲロ?」


 実はクロードから買ったあの青のチンクエディア。正式に右京の物になった。クロードが買い戻したいと言えば、売ってあげるのもよいかと思ったが、クロードは買い戻さないという。お礼のつもりなのだろう。


 親子の再会を演出したチンクエディアを右京は『エルフダガー』と名付けた。その美しい姿に買い手が殺到。特にアーウィン子爵は熱心で、なんと5200Gで買ってくれたのであった。


 あの男、事の成り行きに涙を流し、「感動した! ぜひ、私にその剣を売って欲しい」と言って現金で買っていった。

 

「遊び好きの青年貴族、ナイスな買いっぷりでゲロ」

「これからお得意様になってくれそうだ」

「いいカモでゲロ」

「カモかよ!」


「ゲロ子、収支の確認だ」

「分かったでゲロ」


収入

5200G


支出

チンクエディアの買取り 800G

カイルへの修理代    300G

ボスワースへの修理代  250G

金銀材料        750G

水眼石           0G

アルバイト料      150G

計 2250G

差し引き 2950G


「儲けたでゲロ」


 その後、ネイは町に戻ってきた。父親はエルフの村へ帰り、全てを話したという。今は母と一緒に暮らしているらしい。ネイは冒険者稼業を続け、今でも戦利品を右京のところへ持ち込む。大したものは持ってこないが、いつかは右京をまた儲けさせてくれる武器を持ってくるだろう。


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