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伊勢崎ウェポンディーラーズ ~異世界で武器の買い取り始めました~  作者: 九重七六八
第18話 純潔の槍(ユニコーンランス)
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キル子、女豹になる!

 12時間の休息は、どのチームにも体力の回復と作戦の立て直しをする時間を得ることができた。夕食にバーベキューを楽しんだ右京たちはここで睡眠を取って、明朝、出発する予定だ。


「さあ、食った食った……。眠る前に水浴びでもしてくるか」


 結局、昼間は鬼族の武器をカイルのところで修理をしてもらったり、ディエゴと今後の作戦会議をしていたりで、泉に行くことができなかった。そのせいか、キル子が少しむくれていたが、今はアイアンデュエルの最中だ。遊びは後回しということだろう。


 オアシスは砂漠に中にあって、水が蒸発する気化熱で温度が低くなるクールアイランドである。そのため、汗はあまりかかなかったが、一日過ごしたからには水浴びで体をさっぱりさせたいと思うのは当然だろう。


 右京はタオルを一本、肩にかけ、袋に着替えをいれると泉へトコトコと歩いていく。夜とは言え、月明かりもあるので裸で水浴びするからには、見苦しくないように岩陰に隠れて泉に入る。


 砂漠の中で地下水脈から、こんこんと湧き出る水。それは透明で美しい。飲んでも安全な淡水である。右京は素っ裸になるとザブンと水の中へ飛び込んだ。


「ヒャーッ! 冷たーっ。これは最高だぜ」


 こんなに気持ちいいのなら、キル子たちと昼に水浴びしたかったと思う。水浴びしたゲロ子は気持ちよさそうに昼寝をして、夕食には起きて焼肉にかぶりついていた。体をリフレッシュするには、こういうリゾート気分が一番いい。出場者のキル子と瑠子はともかく、何もしていないゲロ子がリフレッシュするのは、少々違う気もするが。今はそのゲロ子もいない。


「食いすぎて動けないでゲロ~」


 パンパンに膨らんだお腹を仰向けにして、倒れていた使い魔を白い目で見ながら右京は一人、水の中に体を横たえている。


「はあ~。癒されるわ~」


 右京はゆらりゆらりと浮かんでいる。手足を大きく広げると満天の星が目に映る。空には大きな2つの月が輝いている。(きれいだ……)思わず、意識が遠のいた。


ピチョン、ピチョン……。


 小さな水音で右京は目を覚ました。どれくらいたったであろうか。月の位置を思い出すと1時間は寝ていないと思われる。あまりの気持ちよさについ寝てしまったようだ。さすがに夜なので体が冷える。


ピション、ピション……。


 水音と共に人の声らしきものが聞こえる。右京のいる岩陰から出たところに、人影が見える。それは白い体……。だが、雲が月にかかって暗くなり、見えなくなった。


(え……)


 だが、それもわずかな時間であった。さあーっと雲が動き、徐々に明るさが戻る。太ももまで水面に浸した女体が2つはっきりと見えた。


(うっ……。あの戦闘巫女さんたちかよ!)


 右京には見覚えがあった。今日、砂漠で助けた出場者である。名前は確か、帰蝶きちょう満天まてと言ったはずだ。


「誰だ!」


 2人の巫女が右京に気づいた。月明かりで完全に照らされる2人の女子と1人の男子。しかも3人とも裸族状態。


「き、きゃあああっ……」

「お、お前は……右京!」


 間違いなく、那の国の戦闘巫女。帰蝶と満天である。顔を隠していたから昼間はよくわからなかったが、帰蝶は右唇下にほくろがあり、満天は左目尻に泣きぼくろがある。いつもは顔半分を隠しているので、分からなかったが、やっぱり二人共、かなりの美女である。

 

二人共、右京を見て驚き、一瞬固まったが、すぐ慌てて両手で顔を隠した。右京も慌てて目をそらす。


「み、見たのか!」

「いや、お前たち、この状況で隠すところが違うだろう!」


 普通は胸と下半身を手やタオルで隠すのに、二人共、白い裸体はそのままで顔だけを隠している。一瞬で焼き付く見事なプロポーション。細身であるが、やはり戦闘巫女。鍛え上げられた体は、出るところはちゃんと出た女性らしい体だ。普段の先頭巫女の制服はかなり着痩せするらしい。


「見たのか!」

「すまん。俺も水浴びをしてたんだ。わざとじゃない」


 慌てて右京は硬直した体に命令して、くるりと背を向ける


「か、体を見たのか?」

「か、体はちょっとだけだ。それより、お前たち、いつもは顔を隠しているから分からなかったが、すごい美人じゃないか。隠すのもったないないぞ」


 右京は必死でそんなことを口走った。話題を変えてエッチ路線から逃れようと画策したのだ。だが、それは選択として最悪であった。


「み、見たのか……私たちの顔を……」

「そう顔だ。顔だけ見た」

「ほ、本当にか!?」

「ああ、本当だとも。顔だけ」


「私たちの顔のホクロ。どこにあった?」


 変なことを聞くなあと右京は思った。先ほど見た顔を思い出す。本当はすぐ隠されてしまった顔よりも真っ白な裸体に僅かにあったホクロの方が鮮明に覚えている。


(えっと、帰蝶ちゃんが右胸の上に。満天ちゃんが右足に付け根に……じゃない!)


「帰蝶さんは右下に、満天さんは左に泣きぼくろ!」


 バシャ、バシャ……と二人が腰が砕けて水の中にしゃがむ音がする。安堵したのか、それとも恥ずかしさで体を隠したのかは分からない。とりあえず、背を向けている右京は一目散に退散する。


「ごめん! これは事故、事故だ。今日のお礼替わりなんて言わないから!」

 

 言わなくてもいいことを叫んで脱出する右京。もちろん、右京もスッポンポンだから、途中の茂みで服を着る。裸のまま、キャンプ地に戻ったらそれこそ変態だ。服を着た右京は、そのまま、自分のテントに戻って毛布を被る。そこで疲れがどっと出て、気を失うように眠りに落ちたのであった。


                        *


(す~は~……。す~は~。よし!)


 寝室車の中で眠れないキル子。隣では小さな寝息を立てて瑠子が寝ている。明日の朝早くには出発して、第3の戦場に向かわねばならない。今はよく寝て体を休めるべきだ。だが、キル子は目を閉じても一向に眠れない。水浴びをしてから1時間ほど昼寝をしたせいだが、同じく昼寝をした瑠子もゲロ子もグーグー寝ている。


(畜生! 瑠子が変なことを言ったせいだ!)


 昼の間に瑠子が『女豹』にならないと右京を盗られると言ったことが頭にこびりついて離れないのだ。


(女豹……女豹……ってなんだ?)


 これまでもガールズトークの中で聞いたことがある言葉だ。だが、純情なキル子はその意味を正確に知らない。


(なんだっけ……。いつか年上のお姉さんが話していたこと……確か……)


 昔、女豹になったというお姉さんの体験談を思い出すキル子。


(確か、夜中に意中の男の部屋に忍び込んで……うう……そんなことするのか? あたしが……)


 かあ~っと顔が赤くなるキル子。夜に右京の寝ている部屋に押しかけるなんて、はしたない女だと思われないだろうかと心配になる。


(いや、今夜、あたしは女豹になるんだ。そうじゃないと……)


「いつか、どこかの女に右京を取られちゃうわよ!」


 昼間の瑠子の言葉が耳に刺さる。キル子は勇気を振り絞った。明日からまたアイアンデュエルに専念しないといけない。女豹になるなら今晩しかない。それにここには普段のライバルのクロアもホーリーもいない。圧倒的なチャンスなのである。


 キル子はそっとベッドを抜け出す。右京の宿舎はお向かいのテント。そこで一人で寝ているはずだ。そっと入口を開けるキル子。


「くー」


 気持ちよさそうに寝ている右京が目に入った。オアシスの夜は少々寒い。薄めの毛布を体にかけている右京。キル子はそっとその毛布に足元から頭を突っ込む。


(う……この後、どうするんだっけ?)


 体を滑り込ませたキル子。大胆にも仰向けの右京の上に重なった格好だ。


「う……ううう……。重い……」


 パチっと目を開けた右京。目の前にキル子の顔がある。これにはキル子も驚いた。とりあえず、昔、女豹になったという先輩の騎士のお姉さんに聞いたシュチュエーションをなぞってみたのだが、ここから先は想像もできない。


「な、何してんだ? キル子」


 ガバッと体を起こすキル子。頭から毛布をかぶった状態である。格好はTシャツにホットパンツ。豊かな上乳がTシャツの胸元から見える。


「め、女豹になりにきたんだ……」

「はあ?」


「だ、だから……女豹……じゃなかった。えっと……、確か、坊や、今晩はお姉さんといいことしましょう……だっけ?」


「いいことってなんだよ?」

「そ、それは……その」


 キル子の知識の限界突破である。お姉さんから聞いた話を断片的につなぎ合わせる。


「そ、それはお姉さんに任せなさい……」


(任せなさいって……な、何をすればいいんだよ~)


 自分でハードルを上げて進退極まったキル子。追い詰められて目をギュッとつむったキル子に、突然、バサっとテントが被さってきた。


「な、なんだ!」


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