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伊勢崎ウェポンディーラーズ ~異世界で武器の買い取り始めました~  作者: 九重七六八
第10話 天誅のクロスボウ(ドラゴンバレット・クロスボウ)
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地雷地帯を通過中です

ゲロ子のせいでとんでもないことに……。

今日で第10話、堂々のフィナーレ(笑)


シャドウが仕事を終えて姿を消してから1時間。ハリマの町に治安部隊が突入した。近隣の町から集められた部隊である。ハリマの町の治安当局は、極丸会に取り込まれていたので、リーダーのサンジェスト暗殺と同時に外部からの力で一掃しようとしたのだ。


その数2千人。極丸会の混乱に乗じて、町に入り、幹部を次々に拘束。抵抗するチンピラどもを力でねじ伏せたのであった。

 

一部、頑強に抵抗するところもあった。元月海亭のホテルであった極丸会本部事務所は、激しい抵抗のあとに火をかけて玉砕したし、サンジェストの館も最後の1人まで抵抗した。だが、所詮は犯罪集団。圧倒的な力の前に崩壊していった。強力なリーダーが突然いなくなると組織はもろいのである。


「隊長、手配中のサンジェストの息子を見つけました」

 

 そう部下が報告に来た。町に進入したら即逮捕するリストのナンバー1の男である。本人自体は大した能力もないのだが、サンジェストの息子であるということで、犯罪組織の旗頭に使われてはいけないという判断であった。だが、これでその心配もなくなったようだ。


「そうか。で、奴は一体どこに潜伏していたのだ?」


 思ったよりも早く捕まえることができて、隊長は安堵したが、今後の参考に聞いてみたのだ。部下の返答は意外であった。


「それが町の真ん中の噴水に裸でくくりつけられていました」

「なんだって?」


「真っ裸で噴水の真ん中の像に逆さまに縛りつけられていたのです。散々、殴られたらしく気を失っていました。しかも、頭は丸刈りにされており、体にはペンキで処刑まで1ヶ月と書いてありました」


「誰がそんなことを……」


 サンジェストの息子は、権力をかさにきて散々悪事を働いてきた。裁判にかければ死刑は間違いないだろう。この町の住人にとっては悪魔だったからだ。だが、どんな悪でも裁判を受ける権利がある。捕まえればそれなりの扱いをしなくてはいけない。


 しかし隊長は、非合法でリンチをした人物に心の中で拍手をした。サンジェストの息子の落ちぶれた姿を見た町の人々は、法が支配する平和な生活の到来を感じただろうからだ。


 いよいよ、右京が計画した伊勢崎ショッピングモールの一部が完成した。まずは、右京の経営する中古買取り店と買い取った品を売る中古武器ショップの開店だ。カイルの修理工房もオープンである。明日から荷物を運んで営業に備えるのだ。それで、正式なオープンを記念するパーティは、盛大にやるとして今日は引っ越し前のささやかな祝賀会をやろうとごく近い人を招待したのだ。


「飲み物と食べ物は充分あるだろうな」

「もちろんでゲロ。ドラゴンバレットクロスボウが売れたから、大盤振る舞いでゲロ」


「よろしい」


 ハリマの町のことは、昨日、ティファから聞いた。ティファはイヅモの町の執政官ということで、治安部隊の派遣を許可したから詳しい。町は混乱することもなく、極丸会は解散。麻薬も取り締まり、町は平穏を取り戻しつつあるそうだ。残念ながら、右京が関わった月海亭は燃えてしまったそうだが、これについては、右京はロディとミーア宛に手紙を書いている。 


「まだみんな来ないかな」


 まだ何も知らない右京。ゲロ子はこれから起こる出来事でウキウキしている。そんなゲロ子を無視して、右京は店のドアを感慨深く眺めている。思えば、クロアに出資してもらってこの小さな買取り店を始めて、やっとここまできた。いろいろあったが、商売人として成功したことは間違いない。


カラン……。


 最初にやってきたのはキル子。いつものビスチェにショートパンツの格好ではなく、なぜか珍しいドレス姿である。こういう女らしい格好をするとドキッとしてしまう可愛さだ。頭には右京がプレゼントした赤いハリマキジの尾羽が飾られている。誇らしげにそれはピンと立っていた。


「ん? まだ誰も来ていないのか?」


 キル子は余裕の表情である。自分のアクセサリーを見て今日は堂々としている。いつものもじもじな態度ではない。


「おう、キル子早いな。今日はありがとな」


 そう右京はキル子に来てくれた礼を言う。そう言われたキル子は顔が赤くなる。


「そ、そりゃ、し、しょ、将来の妻として……その、あの、手伝わないとな」


 小さな声で恥ずかしそうに言う。今日のパーティではきっと、そのことも右京は宣言してくれるはずである。


カラン……。


 ドアが開けられる。入ってきたのはホーリーとヒルダ。ヒルダは右京を見るなり、超スピードで飛んできた。


「あ~ん。好き好きご主人様。今晩、ヒルダは待ってますうううっ。わたくしをめちゃくちゃにしてくださいましいいいっ……」


 ビシッ……と右京が叩き落とす。煙が上がってヒルダ撃墜される。


「ま、全く、油断も隙もないな」


「右京……どういうことだ?」


 キル子がホーリーを見てそう言った。ホーリーは神官の帽子をかぶっていない。代わりに長い髪に白いハリマキジの尾羽のアクセサリーが差してある。


「右京様、わたし、子供好きですから、5人は欲しいと思いますって、あれ? キル子さん、そのアクセサリーは?」


 ホーリーもキル子の髪に差してあるものに気がついた。そういえば、地面でのびてるヒルダも銀色の飾りを付けている。


「こんばんは、ダーリン。一生尽くすってダーリン、今日から毎日血を吸っていいってことだね。って、これは何?」


 クロアである。いつもの黒うさぎの帽子の端から、黄色の尾羽が見える。その後ろからネイが緑色の羽を差してトコトコ入ってくる。飲み物が置いてあるところへ行って、ちょこんと座った。キル子、ホーリー、クロアの3人の目が緑色の尾羽に注目する。


「おお、だいたい揃ったな。カイルたちもそのうち来るだろうし、ヤンの奴も仕事を終える頃だろう。みんな、今日は楽しく……て、どうしたんだ? 急に黙りこくって?」


 ここへ来て右京。何だか不穏な空気に気がついた。自分が地雷地帯に入っていたことに気がついたのだ。


「ゲロ子、ちょっと聞くが、みんなあのアクセサリーを付けているのだが、なんか意味あるのか? それにこの険悪な空気は?」


「さあ、知らないでゲロ。主様の女癖の悪さが招いたのではないかでゲロ」


 ゲロ子、何かを知っているという感じだ、それを見逃さない右京。ゲロ子の首を絞める。


「おい、ゲロ子、ちゃんと話せよ」

「ゲロゲゲゲ……苦しいでゲロ、死んじゃうでゲロ」


「バカ野郎、俺の方が爆死しそうだ。早く言え」

「仕方ないでゲロ」


 ゲロ子、手短に話す。


「ハリマキジの羽飾りは恋人に贈るものでゲロ。色でメッセージが込められているでゲロ」


「色だって?」


 ゲロ子ポケットから紙を取り出す。それにはこう書かれている。


赤色……「お前は俺の女だからな。俺だけを見ろ」 

白色……「俺と幸せな家庭を作ろう。子供は何人欲しい?」

黄色……「俺はお前のものだ。俺は一生、お前に尽くす」

緑色……「俺のハートはお前に射抜かれた。もうお前しか見えない」

銀色……「今晩は離さない。お前をめちゃくちゃにしてやる」


 右京、思わず地面に手をつく。とんでもないことになってしまった。今の女子たちの反応を見ればわかる。これは一線を超えてしまった危険な地雷エリアに突入した状態である。突入どころか完全に踏んだ状態だ。


「ゲロ子、なんで早く教えてくれなかったんだよ!」

「教えようとしたでゲロ。でも、教えそこなったでゲロ」


「嘘つけ、お前、こうなること分かってやっただろうが!」


「そんなことないでゲロ。ただ、ゲロ子が思うにそろそろ、女に期待させておいて、ずるずる先に結論伸ばすのはいけないと思うでゲロ」


「くう~っ。そんなつもりは全くないぞ~」


 改めて紙を見ると、なんと恥ずかしいセリフだろうか。キル子に向かって、『お前は俺の女だからな』なんて行っちゃったことになる。ホーリーには子作り宣言までしている。恥ずかしすぎて顔から火が出そうだ。にらみ合ってた3人(キル子、ホーリー、クロア)は一斉に右京を見る。


「右京」

「右京様」

「ダーリン」


 その同時発声に右京は地面に正座して、頭を下げる。これは8割がたゲロ子のせいだが、使い魔のせいにして責任逃れをするのは男らしくないと思ったのだ。


「みんな、ごめん! そんなつもりじゃなかったんだ。俺、ハリマキジの尾羽にそんな意味があるなんて知らなかったんだ」


「そんなつもりじゃないなんて……」


 キル子がポツリと悲しそうに言った。慌てて、右京はキル子に向き合う。


「キル子を可愛いと思うのは本心だよ。それは間違いない。ホーリーだって、いいお嫁さんになると思っているよ。クロアは俺の恩人だ。君の優しさと厳しさで今の成功があると思っている。だけど、ごめん。今は一人に決めるなんてできない。もっと、商売に成功して俺がもっと大きな男になったら本当に申し込むよ」


 しーんと沈黙が続いた。(これは滑ったか?)と右京は思った。


(ある意味、主様、最低でゲロな。女を待たせる宣言でゲロか?)

(お前がまいた地雷でもあるだろが!)


 パチパチ……っとクロアが拍手した。右京の一世一代の態度に拍手を送ったのだ。


「ダーリンえらい。そんな風に女に頭を下げられる男は大物になるよ。ゲロ子のせいにしないダーリンだから、クロアは好きなんだよ。それでここからはクロアの提案なんだけど。同じ男に惚れているってことは、思いは同じだよね」


「わたしにとって右京様は神様です。だから、右京様が待ってくれって言うならわたしはいつまでも待てます。クロアさんやキル子さん相手なら、悔いは残りませんから」


 さすがホーリー、健気なことを言う。


「まあ、右京があたしのこと可愛いて言ってくれるのが本当だとわかったからな。今日のところは勘弁してやるよ」


 キル子も一時はがっかりしたけど、また、可愛いと言われて嬉しくなってしまった。今はそれだけでもキル子的には満足なのだ。

 

 ジュースをストローで飲みながら、修羅場が収まりつつあるのを確認したネイが爆弾発言をする。


「うちもあと3、4年経ったら参戦するのじゃ」

「おいおい、おこちゃまは参戦しないでくれ!」

「どうしてじゃ。その方が面白いじゃろ」

「面白くねえ~」


 ヒルダが目を覚ました。キョロキョロと見回して右京を見つけると飛び立った。目は完全にハートである。


「ご、ご主人様~っ。早くヒルダをめちゃくちゃにしてえええ……」


 バシっと再び地面に叩き落とす右京。


「ヒルダもこれ以上、複雑にしないでくれ」


「とりあえず、クロアたちの中では抜けがけは厳禁。誰が最終的に選ばれても、恨みっこなしだからね」


「分かりました」

「異存はない」


 どうやら、女同士、話が収まりそうだ。正直に謝ったことがよかった。



 だが、店の前に高級馬車が止まった。


 ウェーブがかかったゴージャスなブロンドに青い尾羽のアクセサリーを差した王女様が降り立つ。ステファニー王女である。

 

青色 「俺は一生、お前を守る ユア、ハイネス」の意味

 

 そして、同じく、兄のロディと共にやってきた月海亭のミーア。このイヅモの町で宿屋をやるよう右京から誘われてやって来たのだ。


 空気を読まない王女様と右京に感謝いっぱいの妹キャラ。修羅場が復活するのは数分後のことであった。


「ゲロゲロ……。主様は女難の相が出ているでゲロ。そして、こういうハーレム的な終わりは大抵反感を買うでゲロ」


「反感って、何だよ!」

「ポイントで言うと300は失ったでゲロ」

「がーん!」


 今回の収支


収入 シャドウからの報酬 20万G


(報酬の半分をもらう約束だったため。但し、武器の購入費用を必要経費として差し引く。)


支出 

ドラゴンバレットクロスボウ 1万2千G

クロスボウ購入200G

ハリマへの旅費等 200G

ゲロ子が勝手に買った金時計 1500G

ゲロ子が勝手に買った金の鎖  120G

ドラゴンのひげ  0G

武器の改造費   550G


差し引き 197430Gの儲け


「最後は大変だったが報酬半分というのが効いたな。武器だけなら9430Gの儲けだった。それでもでかいけどな」


「ゲロゲロ……今回も儲かったでゲロ」

「……おい、よく見るとゲロ子、お前、どさくさに紛れて金の鎖買ってないか?」


「主様、小さいこと言ってると女にもてないでゲロ」


第11話は明日からです。

どんな武器が出るでゲロ?

そして、ショッピングモールは?

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