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伊勢崎ウェポンディーラーズ ~異世界で武器の買い取り始めました~  作者: 九重七六八
第9話 伝統のクロスアーマー(モイラクロスアーマー)
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オーガロード無双

サブタイトル変更

指摘された誤字の修正しました。

「キ、キル子~っ」

 

だが、アサルトライフルの射撃はキル子に当たる前に威力が弱まる。その弾は勢いを失って命中したので、キル子の体を貫くことはなかったが強い衝撃でキル子は前のめりに倒れた。


「ご主人様、空気の壁の魔法で攻撃を防ぎました」

「ナイスだ、ヒルダ」

「これを受けるのじゃ!」


 ネイが矢を放つ。それはまっすぐにオーガロードの額をめがけて飛んだ。一撃で倒したと思ったが、オーガロードは信じられないことに右手の人差し指と中指でそれを挟んで止めたではないか。


「おいおい、伝説の拳法家か何かかよ!」


 矢を捨てると再び、アサルトライフルを掃射するオーガロード。だが、アサルトライフルの装弾数は20発ほど。キル子への掃射で弾数を使ったので直ぐに弾切れになった。慌てて、弾倉を変えようと腰に手を当てたオーガロードは、そこにあるはずの弾倉がないことに気づいた。


「それはうちが抜き取っておいたのじゃ」


 ネイが遠くでオーガロードから盗み取った弾倉を見せた。酒をついでいた時にこっそりと拝借したのだ。さすが黄金の左指。


「ナイス、ネイ」


 ネイはさらに弓を乱射する。だが、ことごとく手刀で叩き落とすオーガロード。これはますます、伝説の拳法家の疑い濃厚である。この隙に右京はキル子を抱き起こす。ショックで気を失いかけたキル子だったが、右京と一緒に後方へ下がって気を取り戻した。


「右京、あ、あたし……」

「大丈夫だ。怪我はないようだし、衝撃で気を失いかけたんだろう」


 オーガロードはネイを追いかける。逃げ回るネイ。ホーリーも巻き込まれて追いかけられる。その間に呪文の詠唱を終えたヒルダがオーガロードに向かって炎の魔法ファイアボールを放つ。だが、それはオーガロードに当たる寸前でかき消された。


「やっぱり、ダメだな。あいつは魔法無効化能力がある。しかも、相当な格闘技術がある。おそらく魔法のアイテムか何かの効果だと思う……」


 キル子はオーガロードの様子を見てそう確信した。最初の戦闘でもヒルダの魔法は通じなかったし、あの無敵の武器がなくても徒手空拳で傭兵を何人か倒している。弾のリロード中に襲いかかった傭兵をパンチで吹き飛ばしていたのだ。


「指輪でゲロ。あいつの手につけている指輪が怪しいででゲロ」

「魔法の指輪か」


 アシュケロンが心臓に突き刺さったのに死なないとか、魔法を打ち消すとか、矢を指で挟んで止めるとか、ありえない技は魔法の指輪のせいに違いない。


「魔法が効かないとなると、やはりあたししかいないよな」


 キル子がアシュケロンを持って立ち上がった。ヒルダの攻撃もネイの攻撃も効かないとなると直接攻撃しかないであろう。それでも心臓を突き刺してもしなないのだから、普通に戦っても倒せるとは思えないのだが。


「きゃあ~っ」

「わ~っ」


 オーガロードに追い掛け回されているネイとホーリー。このままじゃ、確実に捕まる。キル子と右京は2人の救出に向かう。


「待て、あたしが相手をする!」

「ふん。女が……俺の相手をするだと」


 オーガロード、さっきから人間の言葉を話している。あの『ウゴウゴ』オーガ語はどうした?


「問答無用だ」


 キル子がアシュケロンで斬りかかる。それを巧みにかわすオーガロード。それでも一撃、二擊と体にヒットする。だが、斬られるたびに傷は回復していく。そして斬りかかるキル子の右手首をつかんだ。


「オラオラオラ……」


 オーガロードの連続パンチを受けて吹き飛ぶキル子。10mは吹き飛んで地面に叩きつけられ、気を失ってしまう。


「次は貴様だ!」


 オーガが狙いをつけたのは右京。後ろにはネイとホーリーがいる。


「くそっ!」


 右京は戦闘力に自信はないが、この状況で逃げるわけにはいかない。ショートソードを握りしめて戦うことを決意する。


「ご主人様~っ」


 その間にヒルダが割って入る。魔法が効かないからショートソードで立ち向かったが、これはオーガロードのパンチ一発。


「はれ~っ。ご主人様~っ」


 ポンっと元の小さな姿に戻って飛んでいってしまうヒルダ。だが、その隙をついてゲロ子がオーガロードの指につけた指輪の一つを抜き取った。それを遠くへ投げるゲロ子。


「回復の指輪を取ったでゲロ」

「ナイスだ、ゲロ子」


「このカエルが~っ」


 怒り狂ったオーガロードがゲロ子を捕まえる。片足を掴まれたゲロ子が逆さ釣りになる。


「ゲロゲロ~主様、助けてでゲロ」


「ゲロ子~っ」


「ふん。めんどくさい。このカエル娘はあとで拷問だ。気絶したエッチな姉ちゃんはその後で楽しむとして、お前らは死ね。男と子供はいらねえ」


 そう言うとオーガロードはベルトに付けた手榴弾を手にした。まとめて始末をつける気だ。安全ピンを抜くと右京の足元へ投げた。


「え、えっ……」


 体が硬直して動かない右京。1、2秒でそれが爆発し、自分もホーリーもネイもバラバラになってしまう運命だ。もうだめだ。右京は振り返ってホーリーとネイを抱きしめる。背中で爆発から守ろうという最後の抵抗であった。


「あらあら、修羅場ねえ……」


 突然、聞きなれた声が横からした。クロアだ。真っ黒のストレート髪。前髪ぱっつんで目の下にくまがある美少女。スタスタと歩くと手榴弾をひょいと拾い上げた。そして、それをオーガロードの足元に投げ返す。


 ドーンと爆発音と煙が上がり、オーガロードはズタズタになってその場に倒れた。


「ク、クロア……どうしてここに……と言うか、どうして手榴弾が」

「ああ、これね。時間を止めたのよ。この爆発物だけにね」


 どうやら、時間を止める魔法を限定的に使ったらしい。止められるのは最大10秒ほどらしいが。


「それにしても心配したよ。ダーリンたちがオーガ退治に行ったと聞いて追いかけて来たんだよ」


「だって、お前のところに行ったけど不在だったじゃないか」


「ああ、それね。なんか、とても強いオーガの集団がイヅモの町付近に現れたというので、対策会議に出てたんだよ。冒険者ギルドのね。そしたら、ダーリンと傭兵団が討伐に向かったというじゃない。敵を知らずに行ったんじゃないかと思ったら、やっぱり苦戦したね」


 クロアは冒険者ギルドの討伐隊と一緒に村にやってきたのだ。他の者は、今頃、洞穴のダンゲンリングたちを救出中であろう。


「このオーガロード、ちょっと怪しいわね。指輪の力にしても人間の言葉を話すとか、変な武器を使うとかありえない」


 そう言うとクロアは倒れているオーガロードに近づき、指についている指輪を順に抜き取る。


「これは炎の指輪。炎の攻撃魔法が使える。これは支配の指輪。知能の低いモンスターを支配して部下にできる。これでオーガを従えていたようね。ゲロ子が奪った指輪は回復の指輪でダメージを瞬時に回復するものだったようだし……」


 さらに左手の指輪を抜き取る。


「これは魔法無効化の指輪。中級魔法程度ならすべて無効化するレアものよ。これは武闘家の指輪。身に付けた者は伝説レベルの武闘家の技を使える。そして、これは……」 


 クロアが黒く光る指輪を抜き取ると、オーガロードの体に変化が生じた。体が徐々に小さくなり、人間サイズに戻っていく。


「これは変化へんげの指輪だよ。どうやら、人間がオーガロードに化けていたようね」


「うっ……うう」


 オーガロードに化けていた男が意識を取り戻した。だが、手榴弾が至近距離で爆発したのだ。回復指輪がない時点で受けた怪我だ。致命傷である。


「おい、お前、どこから来たんだ?」


 右京はそう男に聞く。状況からしてこの世界の人間ではないと感じたのだ。自分と同じようにこの異世界に飛ばされた人間ではないか。


「に、日本から来た。こ……この変な世界に……」

「名前は?」

「か……とう……。ば、ばばあの指輪で……演習中に……とば……」


 男の意識が途切れた。右京と同じようにこの世界へやってきた人間であったようだ。男がどうやって魔法の指輪を手に入れたのか。オーガに変身してやりたい放題やっていたのか。現代の武装をしていたのか不明である。演習中という言葉が聞こえたから、自衛隊員が演習中にこの世界へ飛ばされたのかもしれない。指輪という言葉も聞こえたので、自分と同じようにこの世界へ来たのかもしれない。


 右京は死んだ男を見てこれまでの自分と比較した。自分は幸運にも多くの人に助けられて、ここまで生きてきた。キル子やホーリー、ネイ、クロア、ヒルダにゲロ子。みんなに支えられてきたのだ。だが、この死んだ男はどうだったのであろう。


 現代の強力な武器と共に、この世界に来た男が力に頼ってこんなことをしてしまったのは想像に難くない。


 何はともあれ、モイラ村はオーガから奪還された。散り散りになっていたモイラ族は村に帰ることができたのだ。村を救った右京は、約束通りモイラ族とモイラ布に関する独占契約を結ぶことになる。これでクロスアーマーを作り販売するのだ。


店の移転、モイラアーマーの販売、大儲けでゲロ!

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