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伊勢崎ウェポンディーラーズ ~異世界で武器の買い取り始めました~  作者: 九重七六八
第9話 伝統のクロスアーマー(モイラクロスアーマー)
128/320

伊勢崎歌劇団の初公演

昨日は眠くて意識を失ったでゲロ……。

公開できなくてすみません。

今日はお詫びに複数回公開スルでゲロ。

古来より鬼を退治する方法として、酒と女で篭絡するというのがある。日本の伝説にある大江山の酒呑童子などは、この方法で討たれている『酒呑』などと言う名前がついているから、相当な酒飲みだったのだろう。それに京の都から若い女や高貴なお姫様を誘拐していたくらいだから、女好きであったようだ。

 

右京はオーガロードが本能のまま暴虐を尽くすモンスターではなく、かなり高度な知能をもっていると判断していた。後方でオーガロードの戦いぶりを見ていたが、このファンタジーな異世界では反則なアサルトライフルの扱いに長けていた。20、30発発射して弾切れになると弾倉を装填する手際といい、手榴弾を適切に扱うことといい、単に武器を手に入れたモンスターではないのだ。

 

ちなみにアサルトライフルと書くと、長距離から一発で仕留めるスナイパーが持つ銃と誤解することがあるが、あれはスナイパーライフル。アサルトライフルは射程距離や威力は落として、取り回しがよくてハンドガンより装弾数が多い方がよいという、戦場でのニーズに応えた武器なのだ。


サブマシンガンより威力はあり、兵士一人で扱うことができ、適度な射程距離、広範囲への掃射が可能であるため、世界各国で使われている武器なのだ。

 


ピーヒャラピー……。笛を吹くのはネイ。このハーフエルフの特技の一つだ。黄金の左指(スリ盗る)や神業の弓とかいろいろあるが、こういう文化的な特技ももっている。そして意外なのがキル子。彼女はヴァイオリンを弾くことができた。普段のがさつな性格の割には結構な腕前である。キル子はどことなく、育ちの良さが感じられたのでそんなに驚きはなかったのだが、彼女の意外な一面を見たと右京は思った。


ホーリーはいつも教会で歌っているから、曲に合わせて歌を歌う。これも美しい歌声で聴くものを魅了する。ヒルダは等身大になって、セクシーな踊り子の衣装を身につけている。音楽に合わせてセクシーなダンスを披露するのである。


「ウゴウゴ……ゲロ。ウーウーガホガホでゲロ」

(わたしら、旅の楽士の一座でゲロ。この宴会で芸を披露させてくれでゲロ)


 ゲロ子がオーガ語で通訳をする。ゲロ子の特殊能力『一般辞書』にオーガ語基本会話があったので、それで話しているのだ。


「ウグウグ……フゴフゴ、ガーガー。ウホウホ……」

(おお……それはいいだがや。酒の余興にぴったしだがや)


「ウーウゴ、ウゴウゴ。ガルガリュ」

(綺麗なネーチャン最高ダス)


 オーガどもは大喜びである。右京の狙い通りだ。だが、あのオーガロードが鋭い目つきで近づいてきた。他のオーガどもは萎縮して縮こまる。


「ウゲウゲ、ガホガホ……ウウゴ」

(旅の楽士だと? こんなところに怪しいだろが!)


(やべ、ばれたか?)


 右京は一座の座長の振りをしている。愛想笑いを浮かべているが、内心は冷や汗だらだらである。


「ウウ……ガルガリュ、ウーウーウゴ」

(おお……この姉ちゃん、いいケツしとる)


 鋭い目つきのオーガロードの目尻が下がった。ヒルダのセクシーな衣装を舐めるように見ている。さらにキル子の目を向けた。キル子は戦闘に参加していたので、口元を隠したアラビア風の美女の格好である。オーガロードは顔を近づけてクンクンと匂いを嗅ぐ。


「ウウ……ガルガリュ、ウーウーゲグゲグ」

(おお……この姉ちゃんはいいおっぱいしとる)


 オーガロードはクイクイと人差し指を動かして招き入れた。どうやら、宴会で芸を披露しろということらしい。


「主様、成功したみたいでゲロ」

「ああ、キル子を見たとき、バレるかと思ったが」

「思ったより、エロエロでよかったでゲロ」



「それではオーガ様たちの勝利を祝して、伊勢崎歌劇団、歌と踊りを披露させていただきます」


「ウグウゴゲー、ギガギガ、ウーウーでゲロ」


 ホーリーの歌とヒルダの踊りが始まる。オーガどもは酒を飲みつつ、拍手喝采である。大いに盛り上がってきた。特にヒルダ。神々しいまでの肢体をエロチックに動かし、オーガに触れる寸前まで近づいたかと思うと、手を出したオーガを紙一重でかわす。そして、エロチックに片目をつむる。これでオーガどもは大興奮である。


(ヒルダ、天使とは思えない淫らさでゲロ)

(あいつの小悪魔ぶりはますます磨かれているな)


 ゲロ子も右京もヒルダのエロチックな踊りに舌を巻く。コイツ、バルキリーじゃなくてサキュバスじゃなかろうか?


 一通り演技が終わるとオーガロードは機嫌よく、キル子とヒルダを両側に侍らして酒を飲む。他のオーガにはホーリーとネイが酒をついで回る。この酒には演技で盛り上がっている時に、密かにゲロ子が眠り薬を混ぜ込んでいたのだ。


 もしものために、オーガ族に効くという薬をロンに調合してもらったのだ。人間には効かないがオーガには効くというものである。


「ウ……ウゴ~ッツ」


 これを大量に飲ませたからオーガどもはその場で倒れて気持ちよく、大いびきをかき始めた。オーガロードもコクリコクリとまどろみ始めている。


「よし、今だ!」


 右京が合図するとキル子はバッと衣装を脱いだ。衣装の下は革の胸当てとショートパンツのキル子スタイルだ。楽器ケースに忍ばせた大剣アシュケロンを抜く。ヒルダも短剣を抜くと眠っているオーガの急所を刺す。オーガどもは気持ちよく眠りながらあの世へ旅立った。


 右京の作戦勝ちだと思った瞬間、アシュケロンを突き刺されたオーガロードが目を覚ました。オーガに効く薬が効果がない!


「ウガアアアアアアッ……」


 アシュケロンで心臓を一突きしたのにオーガロードはそのまま立ち上がったのだ。慌てて抜いたキル子を右腕で払いのける。勢いで転がるキル子。突き刺した傷がみるみるうちにふさがっていくではないか。


「そんな、この攻撃で死なないのか?」

「貴様ら~。許さん!」


 オーガロードが言葉を喋った。傍らにあったアサルトライフルを手に取る。慌てて立ち上がるキル子めがけて掃射する。


 バババババ……ン。鈍い発射音が響いた。至近距離からの銃撃である。これをまともに受けたら確実に死ぬ。


ヒルダ……ついにはサキュバスに転落?

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