幕間 ブリュンヒルデの秘密日記
本編とは関係ないヒルダのヤンデレ日記です。
読んでで「痛く」なります。
なんじゃ、こりゃ! と思いますが今回、遊んでしまいました。
午前5時0分
起床と同時に洗面。歯を磨きながら愛しのご主人様の店を見る。ああ……。やっぱり、今日も来ているキル子さん。いつものようにわたくしよりも豊満なものを揺らしてランニングついでに右京様の店をポーッと眺めています。
午前5時10分
キル子さん、まだわざとらしく店の前で体操しています。わたくしはホーリーさんと一緒に教会のお掃除をします。外掃除をしようとホーリーさんが外に出ると、キル子さんとホーリーさんが「おはよう」「おはようございます」と挨拶を交わします。
いつもの光景ですが、この二人は右京様を巡ってライバル関係なのですが、何故か仲がいいのです。
まあ、二人揃っても右京様は落とせませんけどね。
なぜなら、右京様はこのわたくしのものですから。ぐふぐふ……。
午前5時30分
朝食の準備をします。今日はスープに焼きたてのパン。チーズにハム。教会の収入と薬酒販売でお金があるので、子供たちに栄養のあるものを毎日食べさせることができます。わたくしはスープ鍋をかき混ぜながら、美味しくなる呪文を唱えます。
「ああ……。ご主人様、右京様、スキスキスキスキスキスキスキ……大好き、右京様」
百回唱えるとわたくしの愛情が注ぎ込まれて、スープが美味しくなるのです。
ああ、早く、ご主人様に毎日作ってあげたいなあ……。
その時は今のような野菜と卵のスープじゃなくて、わたくしの特製スープを召し上がっていただきます。
え? 特製スープは何のスープかですって?
知りたいですか?
では、特別に教えてあげましょう。まずは水に具材を入れます。そして服を脱いで……。
誰の服を?
わたくしに決まっています。わたくしがスープの具材に入ってわたくし自身の味を出すのです。ちょっと熱いけど、耐熱呪文を唱えれば大丈夫。
わたくしの出汁がでた『ブリュンヒルデ特製小悪魔スープ』
ぐふぐふ……。
これをご主人様がスプーンですくって飲むと考えただけで……。
「はあ~ん……。ダメえええっ。想像するだけでイク~っ」
6時0分
子供たちを起こしに行きます。年長のタバサも手伝って子供たちを着替えさせます。ちなみにタバサは、今年、学校を卒業したらご主人様の店で働く予定です。うらやましいなあ。
6時05分
ご主人様が起床する時間です。双眼鏡で観察します。ご主人様は起きると2階にある寝室の窓を開けるのです。
3、2、1……。はい、御開帳です。今日も凛々しいそのお顔。わたくし、その顔だけでスープのおかわりできてしまいます。
ちなみにゲロ子先輩、まだ寝てます。ご主人様のベッド脇の箱でグースカ寝てます。ご主人様に寝顔を見せるとは、はしたない。先輩には悪いですがあんな使い魔にはなりたくないです。
6時25分
朝食の片付けをしていると、またまた、キル子さんが偶然通りかかったフリして店の前にやってきました。いつもの通り、モジモジしてます。あのダイナマイトボディの持ち主にしては、小心者です。きっと、朝食をご主人様と一緒に食べたいけど、誘えないのでしょう。やれやれです。
と思ったら、ご主人様の方から誘ったみたいです。なんて優しいのでしょうか。わたくしのご主人様と朝食を摂るなんて嫉妬しないですかって?
しませんわ。
だって、ご主人様はヒルダのものですから。女友達と食事くらいは許す寛大な心がわたくしにはあるのです。さすができる妻ですわ。自分に拍手です。これは人間には無理ですわね。
7時0分
朝のお祈りの時間です。ホーリーさんが儀式を行います。信者さんも何人かきます。みんな愛の女神イルラーシャに祈りを捧げます。わたくしも祈ります。
「スキスキスキスキスキスキ……大好き、右京様」
心の中で1万回ほど唱えました。いつも信者様から、バルキリー様の祈りは神々しいと賞賛をいただいております。わたくしのご主人様への愛は神様への祈り以上ですから当然です。
7時30分
子供たちを学校に送り出します。薬酒販売を手伝ってくれる従業員が2名来てくれます。教会の隣で小さな薬酒の店を営んでいるのです。
8時0分
ここから4時間は至福の時です。なぜなら、ホーリーさんとご主人様の店を手伝いに行くのです。これはホーリーさんが昔、ご主人様に助けられて今の生活があるということで、奉仕ということで続けているのです。ご主人様は『いいよ』と言っていますが、ホーリーさんは続けるそうです。ホーリーさん、ナイス。わたくしも一生というか、ご主人様の元へお嫁に行くまで続けて欲しいです。
8時01分
ご主人様に朝の挨拶
『おはようございます。あ・な・た』
思い切って言いましたが無視されました。ご主人様ったら、なんて恥ずかしがり屋さんなんでしょう。
8時02分
お客さま用のお茶の準備をします。ついでにご主人様にもお茶を入れて差し上げます。「わたくしを好きになれ~」と呪文を唱えて。
8時03分
ご主人様の今日のお姿。白いシャツにズボン。昨日、わたくしがアイロンをかけてあげたお召し物です。たたんで部屋に置いておいたものを着てくださったようです。
アイロンがけついでにわたくしが裸になって包まったシャツです。わたくしの匂いに包まれるご主人様。
8時04分
トイレに行かれるご主人様。ドアの前で聞き耳立てました。今日も勢いがよいです。
(はあはあ……)
8時05分
タオルを差し出すわたくし。なんて気が利くのでしょう。
8時06分
あくびをしたご主人様。かわゆい!
8時07分
ホーリーさんが入れたお茶を一口飲むご主人様。そのお茶はわたくしの呪い、もとい、愛の魔法が込められているのです。きゃ、こっちを見ました。
8時08分
のろ……もとい。魔法効かず。いっそのこと、惚れ薬を入れましょうか。
どうやって作るか不明ですが。
8時09分
足を組んでお茶しているご主人様。昨日買い取った剣を見ておられます。
(以後、1分おきに右京の行動が綴られる)
9時0分
開店です。第1号のお客様登場。戦士風のおじさんです。剣の査定に来たようです。
ご主人様の査定が行われます。200Gで買取り成立です。ゲロ子先輩がお金を払います。あれは倍の値段で売れるでしょう。
9時30分
店が混んできました。わたくしも査定を手伝います。ご主人様のために頑張るぞ。結果、わたくしはご主人様のために立派な槍を500Gで買取りました。これは3倍で売れそうです。
10時08分
1時間だけで買取り5件成立。売却も6件成立。2000G以上の儲けです。さすがご主人様です。
10時22分
ゲロ子先輩が疲れたと言って、姿を消しました。たぶん、アイスクリームを食べに行ったと思います。30分後に帰ってきた時に口にクリームが付いていましたから。忙しいのに困ったものです。それを許すご主人様はなんと広い心の持ち主でしょう。
(はあ……好きです)
11時03分
武器ギルドのアマデオさんが来ました。新しい武器屋をご主人様が建てる建物内に出すのだそうです。他にも数店が契約する予定だそうです。賃貸料だけで大儲けです。
(はあはあ……。ご主人様、最高です)
11時55分
ああ時間よ、止まれ。12時でお手伝い終了です。あと、向かいの教会に戻らなければなりません。ご主人様と一緒と同じ空気を吸えるのもあと5分。大きく深呼吸します。この空気をできるだけ吸っていたいです。
12時01分
午前の仕事終了です。ご主人様が昼食に誘ってきださったので、ホーリーさんと一緒に行きます。いつものフェアリー亭です。ご主人様はメニューを見て思案中。でも、わたくしは何を選ぶか分かります。
今日は豚肉のトマト煮込みとライ麦パン、山ぶどうのジュースにチーズの盛り合わせ。
はい。当たりました。
どうして分かるかって……。そんなこと分かっているじゃない。
いつも見ていますから。
13時01分
教会の仕事に戻ります。午後のミサを信者さんと一緒に行います。わたくしも手伝いをします。
(はあ~。つまらない)
14時30分
薬酒を買いにロンさんが来ました。お姉さんの表情と声を取り戻すためだそうです。ホーリーさんの販売する薬酒を飲み続ければ回復するとクロアさんに言われたそうです。ロンさんは薬屋さんをこの町で開くそうです。店舗はやっぱり、ご主人様の店とのこと。薬酒もロンさんが売ってくださるそうです。
(ロンさん、惚れ薬のレシピ持ってないかしら?)
15時01分
忙しそうなご主人様を遠くに見ながら、薬酒の仕込みです。これはホーリーさんとわたくしだけで行う作業です。なぜって? そりゃ、レシピは秘密なのです。
今、作っているのは熱冷ましの薬酒と痛み止めの薬酒です。薬草を調合して酒に漬け込むのです。
15時35分
子供たちが学校から帰ってきました。宿題をさせます。ふとご主人様の店を見るとハーフエルフのネイさんが大きなリュックサックを背負ってやってきました。冒険で得た戦利品を売りに来たようです。
16時01分
ネイさんはご主人様について、買取りの勉強をしています。どうやら、冒険者の仕事を辞めてご主人様の店に勤めたいみたいです。でも、査定はある程度の修行がいるので、ネイさんが戦力になるのはまだまだ先のようです。早くわたくしをお嫁さんにしてくれれば、即戦力なのに。
17時0分
ご主人様の店は閉店です。お疲れ様です。わたくしがいれば、熱いお茶を入れてあげられるのに残念です。こちらは夜のミサの準備です。
17時30分
ご主人様、先輩を右肩に乗せて店を出ていきます。買い取った魔法具をクローディアさんに鑑定してもらいにいくのでしょう。クローディアさんの夜のウサギ亭は18時開店なのです。ご主人様、大丈夫でしょうか。
18時0分
夜のミサ開始。信者様たちが仕事帰りにやってきてくれます。最近、人が増えて教会に入りきれません。若い男性も増えています。ホーリーさんとわたくし目当てだと思います。中にはわたくしを見て『はあはあ』言ってる危ない人もいます。30過ぎてお人形さんを手に持って来ないでください。
19時0分
食事の時間です。子供たちが楽しそうに食事しています。ご主人様、まだ帰ってこない。う~ん。心配になってきました。
20時26分
ご主人様、帰宅。目の下にクマを作ってフラフラしています。たぶん、血を吸われたのでしょう。ああ……かわいそうなご主人様。ヒルダが慰めに行って差し上げます。
21時18分
シャワーを浴びてからご主人様の店まで飛んでいきます。開いていた2階の窓から部屋に入ります。おじゃましま~す。
21時20分
ご主人様、シャワー中。ああ……なんていいお体をなさっているのでしょう。
(わたくし……もうダメです。わたくしも一緒にイキま~す)
21時30分
何故かご主人様のお店の前で目覚めました。バスタオル一枚で何があったのでしょうか。頭がズキズキします。
21時31分
ご主人様のお店に入れないので、教会に戻ります。残念です。
22時0分
2階から双眼鏡でご主人様を観察。まだ、お仕事をなさっています。武器の点検や整頓をなさっています。
23時05分
ご主人様、ベッドへ。あ~ん。本当ならそこでお待ちしたかったのに。わたくしがいなくてごめんなさい。
(ご主人様、お・や・す・み・な・さ・い)
「ふう……。油断も隙もないでゲロ」
ゲロ子はフライパンでヒルダを後ろから叩いて気絶させた後、店の外に引きずり出した。バスタオル1枚で右京のシャワー室へ入ろうとしていたので、叩き出したのだ。この格好では風邪をひきそうだが、そのうち目が覚めるだろう。
「主様の貞操はゲロ子が守るでゲロ」
ゲロ子のいつもの日課である。
本編は至ってまじめです。




