4.初期設定
「…嫌な夢を見たな」
携帯のアラームを止め目を覚ました俺は思わず口にそう出していた。
中学二年生の時の夢を見ていた。
あの頃俺の性格はかなり変わったと思う。
まあ、今のこの性格も割と気に入ってるし治す気はないが。
アラームは一五一五にセットしていた。
今から準備を始めればアバター登録の時間には間に合うだろう。
じゃあ軽く飲み物を飲んだ後始めるかな。
そう考え俺は準備を始めた。
BJOはほかのVRMMOとハードが違う。
というか専用のハードだ。
大きさは縦二m一〇、横一m、高さ八〇cm位だ。
大人一人がちょうど横になれるくらいの大きさだ。
例えがあまりよくないが棺桶のような形、というのが一番伝わる表現だと思う。
その組立・設置にはかなりの時間がかかるのだが、それは郵送されてきたときに業者がやってくれている。
つまり俺がする準備は本当に簡単なものなのである。
一昔前のテレビゲームで例えるならプラグをさしディスクを入れて電源を入れるくらいの準備しかしないのである。
そしてその内容は、電極のシールのようなものを指示された体の数か所に張り、ハードの中に横になるだけだ。
そしてコマンドを言う。
準備はほんの数分で終わった。
ハード内の時計を見ると時刻は一五二六。
三〇分程遅れてしまったが設定を始めるとしよう。
「セットアップ〈Battle Job Online〉」
コマンドを口にした瞬間俺の意識は仮想世界に取り込まれた。
◇ ◇ ◇
あたり一面に広がる草原、晴れ渡る済んだ青色の空。
どうやらこのマップが設定用のマップのようだ。
他のVRゲームと比べてもかなりのクオリティで再現されている。
しばらくぼーっとしていると目の前の空間が人の影をとりながら光り出した。
「このたびは〈Battle Job Online〉のβテストにご参加いただきありがとうございます。本時間、本マップでは基本情報確認、アバターメイキング、そして簡単な説明と質疑応答をさせていただきます」
そんなことを言いながら俺の前に現れたのは一人の女性だ。
背も高く銀髪のロング、恐ろしくスタイルと顔が整っているキャラクターだ。
口調や内容から考えてNPCでまず間違いはないだろう。
「ご丁寧にどうも。…まずは何からやればいいのかな?」
そんなこと聞いてもNPCに答えられるわけがないよな。
言った後でそう思ったが仕方ないと思う。
それほどまでに人間じみた見た目だったのだ。
「はい、まずは基本情報の確認からしていただきます」
え、答えた?
「えーと、君のことはNPCだと思ってたんだけど…、違うの?」
しばらく固まった後NPCは口を開いた。
「私はキャラクターガイド用のNPCですよ?」
「NPCなのに会話ができるって……。えーとそう言えばさっき基本情報の設定じゃなくて確認って言ってたけどどういうこと?」
てっきり反射速度などは今測るものだと思っていた。
「今、現実世界のあなたが寝ているハード機は基本情報の確認の機能も付いています。誤差があるといけないのでそこで測った情報を本人に確認しようということです」
なるほど、なんとなくは分かった。
「じゃあ始めてもらえるかな」
「わかりました。身長一六八,二五四センチメートル、体重五五,六五七キログラム、反射速度を知りたい場合は言ってください。この情報をもとにアバターを作成していきます。間違いはありませんか?」
…身長と体重ってここまで詳しく言われんの?
そんな単位の誤差なんてわからねえよ。
「誤差はないかな。反射速度は聞いてもわからないし言わなくてもいいよ」
実際何秒とか言われても早いか遅いかわからないしね。
「わかりました。続いてキャラクターメイキングに移りたいと思います。〈キーボード〉というとキーボードが出てくるので入力が必要な場合はそちらを利用してください。それではアバターメイキングを始めます。アバター名を入力してください」
アバター名か…。
「〈キーボード〉」
俺がそう言うと目の前に半透明のキーボードが出てきた。
アバター名は…他のゲームと同じでいいかな。
そう思った俺はいつも使っている名前を登録した。
「アバター名〈Masa〉で間違いありませんか?間違いがない場合はエンターキーを押してください。」
間違いはないのでエンターキーをおす。
「登録が完了しました。続いて職業を選んでください」
NPCがそう言うとキーボードの上に職業一覧が表示された。
「説明とかって聞けるの?」
正直名前だけじゃよくわからない職業がある。
「もちろんできます」
じゃあいくつか聞いてみよう。
そう思っていくつか聞いたが、やはり名前がよくわからない職業はあまり強そうに感じなかった。
というかざっと見た感じ数百個は職業あるぞ?
「じゃあ最後に魔法使いの説明を聞かせてもらってもいいかな?」
「はい。魔法使いはHP、物理攻撃力、物理防御力が全職業の中で最下位です。それとは対照的にMP、魔法攻撃力、魔法防御力が全職業の中でトップです」
なんかすごい極端な職業だな…。
ちなみにBJOはステータスが異常に少ない。
あるのは今挙げられたものと力、と言うステータスだけだ。
この力は武器や防具を着用するのに必要なステータスで攻撃力とは無関係らしい。
あとは隠れステータスのスタミナなどがあるらしい。
ちなみに説明書の情報だ。
というか魔法使い極端だな…。
「物理防御最下位ってどのくらい低いの?」
俺がそう聞くとNPCは即答した
「初期装備でゴブリンに二発殴られると確実に殺されます。ちなみに物理攻撃型のプレーヤースキルをもろにくらうと一発で逝きます」
よわ!!
そこまで弱いのかよ!
…でもそういうキャラって面白そうだよな。
「魔法使いにするよ」
「わかりました。それでは説明と質疑応答に移らせていただきます」
「ちょっと待ってくれ、アバターの外見とかはどうなるんだ?」
割と楽しみにしてたのにやらないまま進んでしまった。
NPCでもミスをするのかもな。
「ランダムで決まるので問題ありません。ちなみに同じ顔の人は一人もいないので安心してください」
なんか少し楽しみが減った気が…。
まあ文句を言っても仕方がない。
説明をちゃんと聞いておこう。
「それでは説明を始めます。〈Battle Job Online〉のジャンルはVRMMOPVPになっています。RPGの要素ももちろんありますが、メインはあくまでPVPとなっています。週に一回全員参加のトーナメントをやってもらいます。毎回優勝者には景品が出るようになっていますので頑張ってください」
ここはなんとなくゲーム名で予想がついた。
「そして〈Battle Job Online〉には二つ名システムという独自のシステムがあります。二つ名システムはその名の通りプレイヤーに二つ名がつくシステムです。二つ名がつくとステータスに補正がつきます。二つ名の獲得方法ですが、全プレイヤーの三分の一以上がが自分の顔、もしくは名前を知っていて申請された印象を持っていることです。この場合の申請とはだれか一人のプレイヤーがそのプレイヤーの印象をギルド本部に伝えることです。一人につき同一人物には一つの印象しか報告できません」
つまり二つ名をゲットするにはまずは有名にならなくちゃいけないわけだな。
「以上で簡単な説明を終わります。また、ログインするとさらに詳しい説明があるのでそれも聞くようにしてください」
「了解です」
「何か質問はありますか?」
「特にないです」
どうせまた説明あるしね。
「それではまた」
そう言ってNPCは光となって消えて行った。
じゃあ俺も戻るかな。
「ログアウト〈Battle Job Online〉」
体が少しずつ軽くなっていく感触を味わいながら俺はログアウトした。
◇ ◇ ◇
スッキリしている。
ログアウトしたときの最初の感想がそれだった。
今まで長時間VRゲームをやると体がだるくなってしまっていたのだが、今は逆に軽い睡眠をとった後のようなそう快感を感じていた。
俺の感覚だと仮想世界に二時間くらいいたと思う。
三〇分休んでからβにログインしよう、そう思って念のため時計を見ると現在時刻は一六三〇だった。
一時間しか経っていない?
そのことに軽く違和感を覚えながらも俺は少し休むことにした。