エピローグ
2章から1日か2日に1話のペースになると思います
『………』
沈黙に包まれる会場、そんな中で俺とマリナはようやくその状況に気づいて慌てて離れた。
何か言われるか、というかヤジが飛んでくるかと思ったが、その前に全体の転移が終わったようで、幸か不幸か何も言われることはなかった。
『優勝者は1人1人全プレイヤーに向けてメッセージを送ることができます。どうしますか?』
俺とマリナはしばらく待っても転移が始まらず、不思議に思っていたところでそんな声が聞こえ、目の前に〈Yes/No〉という文字が表示される。
どちらかに触れろ、と言うことらしい。
「マサはYesを押してください。うまくいけばこれで〈プレイヤー消失事件〉の誤解もとけるかもしれませんし」
マリナの言うとおりだ。
確かにこのメッセージを使えば誤解をとくことができると思う。
「わかったよ。マリナはどうするんだ?」
そう答えると、マリナは「恥ずかしいです…」と言って俺に相談することなくNoのボタンをタップした。
…少しくらい相談とかしてほしかった。
「じゃあ…」
俺は少し内容を考えた後、慎重にYesのボタンを押した。
『〈Masa〉から全プレイヤーへのメッセージです。合図後、45秒でお願いします』
どうやら文章ではなくスピーチのようなものらしい。
『それではお願いします』
「―――――」
そのスピーチが終わった後、俺とマリナは無事、始まりの町に転送された。
「『厨二病』さんの仮面の下見せてもらえないんですか?」
BJMの翌日、町を歩くと主に女性プレイヤーからそんな声がかけられるようになった。
「マサ、行きますよ!」
そのたびにマリナが俺の手を引いて早く歩き始めるので、返答はできていないが、どちらにしろ見せるつもりはない。
ここまで厨二病というイメージがついて、それらしい装備と技を使っていて顔バレまでしたら恥ずかしくてやっていけない。
だから、俺は仮面は仲間になった人の前でしか外さない、と決めたのだ。
おそらくマリナもそうしてほしい、と思っているからこその行動なのだろう。
「お、『厨二病』じゃねえか。昨日ぶりだな」
そのまま街を歩いていると、前から歩いてきたホールに声をかけられた。
「そうだな、『戦闘狂』」
ホールの名前の上を見るとそこには二つ名が表示されていた。
『戦闘狂』…本当にぴったりの二つ名だと思う。
おそらく予選をモニター越しで見て思ったり、決勝を見てそう思ったりした人がギルドに申し込みに行ったのだろう。
「次のBJMで優勝するのは俺だからな」
そう肉食獣のような笑みで言うホールとフレンド登録をした後、俺とマリナは宿に戻った。
「私、改めてマサと会えてよかったです」
宿に着いて後、マリナは俺に背を向けてそう言い出した。
「BJMで優勝できたからか?」
「それもそうですけど…そうじゃないですっ!」
少し意地悪な返答をするとマリナはほほを膨らませてそう答えた。
「マサと会って、気持ちがうまく出せるようになって、いっぱい笑って、2人で協力して、こんな私でも戦えるようになって、少し恥ずかしいけどこんな服も着れて、昔話を聞いてもらって、助けられて……感謝してもしきれないです」
「そんなこと言ったら俺だって助けられてる。感謝するのは俺もだよ」
過去のことを聞いてもらえて、かなり気持ちが楽になった。
ひょっとしたら、ネット上で知らない人と出会って、こんな話をしてほっとしたくて、俺はこのゲームをやりたがったのかもしれない。
「それでも、本当に……ありがとう」
そう言って振り向いたマリナの笑顔はとても可愛くて、そんな笑顔につられて俺も「こちらこそ」と言って笑った。
『えーと、プレイヤーの皆さん、二つ名『厨二病』の〈Masa〉です。聞こえていますか?まず〈プレイヤー消失事件〉のことに関して謝罪をさせてください。スキルの試し打ちをしたらああなってしまいました。決してワザとではありません。ドロップした記憶に関しては道具屋に預けてあるので、そこから受け取ってください。え、まだあと30秒もあんの!?…じゃあバトルジョブマッチに関して少し話したいと思います。正直、チーム戦で2人しかいない自分のチームが勝てるとなんか思っていませんでした。だけど、それでも2人で協力したからこそ、優勝ができたと思っています。このゲームもみんなで協力すれば、誰1人として記憶を欠けることなく、βテスト期間を終われると思います。職業が同じ人や、リア友、1度パーティを組んだ人なんかの繋がりでもいい。そのつながりを大切にしてBattle Job Onlineを全プレイヤーで楽しんでいけたらいいな、とか思ってます。ログアウト不可なのに楽しむとか不謹慎だと思われるかもしれませんが、俺はそれが大切だと思っています。それじゃ、町で見かけたときはよろしくおねが――』




