20.準決別妹
長めですがクライマックスに近づいてるんでこんなもんかと
あと2話で1章完結です
転送し終わった後は手順通り〈瞬間移動〉を使って控室の上空に転移、無時屋上に着くことができた。
「雲の上?」
控室の建物の屋上から周りを見た俺の最初の感想はそれだった。
控室の建物を中心に結構な数の建物が並んでいる。
何個か大きな広場のようなものもあるらしい。
そこには巨大なモニターが設置されていて試合の状況を見れるようになっていた。
どのような仕組みになっているかはわからないが建物や広場は始まりの町の地面のような土地の上にある。
そして少し遠くを見るとその地面が雲に変わるのだ。
空中庭園のような感じなのだろうか。
雲のほうに乗っているプレイヤーがいないことから推測すると、現実世界のように実際には乗れないのか、もしくは侵入不可フィールドに設定されているかだろう。
できれば後者であってほしい、個人的には。
乗れると思って行ったら落ちていくなんて言うプレイヤーは見たくないしな。
「結構きれいですよね」
俺の言葉にマリナがそう答えた。
確かにきれいだ。
太陽はどの様な設定がされているのかはわからないが、直視しても大丈夫で、それもまた幻想的だ。
「ああ。…そう言えば他のところはどうなっているんだ?」
他のところ、と言うのは俺達以外の準々決勝のことだ。
俺達はかなり早く終わったと思っているが、他のところもこのくらいで終わっているのであろうか。
「ちょっと待ってくださいね」
そう言うとマリナは右手を空中で動かしウィンドウを開いた。
そこでBJM情報と言うボタンをタップし、少し閲覧した後言った。
「大体半分くらい終わってるみたいですね。私たちが終わってから5分くらい経ってますし。他の場所もあと5分くらいで終わりそうです」
「ちょっと待って、マリナ。何気なく開いたそのウィンドウの存在を俺は知らないんだけど」
え、何コレ。
説明でなかったよね?
「私もさっき見つけたんですよ。アイテム確認しようと思ったら見慣れないボタンがあって…。ちゃんとマサにも教えようと思ってましたよ?」
できればすぐに教えてほしかったよ。
こうして無事に知れたしあんまり気にしてはないけれど。
「次は当たりますかね、さっきの二人と」
〈Kaito〉と〈Hole〉のことだろう。
そう言えば準々決勝ではちらっといた感じ居なかった。
「当たったとしても何かやられる前に倒すだけだよ」
今持ってる技を全部使ってでも勝ってやる。
俺は現実世界では考えられないくらい感情が高ぶっていた。
「あ、最後の一組も終わったみたいですよ」
マリナが広場の一つを指差してそう言った。
他の広場ではリザルト画面しか表示されていないが、そこだけは勝利者の映像が流れていた。
遠くてよく見えないけど、多分知らない人だと思う。
『準々決勝が全試合終了しました。続いて準決勝へ移ります。準々決勝同様5パーティで残り1パーティになるまで戦っていただきます。準決勝のフィールドは闘技場、時間制限はなしです。1分後に転送を始めます』
最後に終わった人は大変だな。
多分今頃焦ってMPを回復しているのであろう。
……そう言えば準決勝のときとさっき〈瞬間移動〉したときのぶんのMPを回復するのを忘れていた。
「やば!」
俺は慌ててMPポーションを3つ取り出し飲んだ。
「あっ、すいません、マサ!私もすっかり忘れていて…」
マリナが俺に謝ってきているが、1分以内に3本飲まなくてはいけないのだ。
答えている時間がないので飲みながら手を振って「気にしてないよ」と表す。
あと何秒くらいだ?
そんなことを気にしながらもなんとか飲み終わった。
準々決勝の時は気にしてる余裕がなかったけどこれってブドウジュースみたいな味なんだな。
これだけ短期間に大量に飲むと飽きる。
今度道具屋の人に言ってみよう、変わるかわからないけど。
空き瓶が期間満了になってポリゴン片になるところを見ていると転送が始まった。
「次も頑張ろうな」
俺がそう言うとマリナは元気よく「はい!」と答えた。
ここまで来たらできればホールたちとは決勝で当たりたいな。
そんなことを思いながら転送終了を待っていた。
「なっ!」
転送が終わってまず驚いた声が漏れた。
「マジかよ――闇よ、我が敵を討つためにその力の一部を顕現せよ。その姿は雷、光の速度で敵を滅せよ」
驚いたのは闘技場の狭さからだ。
広くみつもっても直径200mほどの円形だろう。
そしてその後、驚いている場合じゃない、と気づき詠唱を始める。
『ただ今からバトルジョブマッチ準々決勝を始めます。フィールドナンバー2のこのマップでは16人、計5パーティが参加しています。今まで同様HPポーションは使えません。ご健闘をお祈りします』
アナウンスよ、人数は見ればわかるよ。
とりあえずこちらに向かってきている1パーティに杖を向けて唱えた。
「〈闇の雷〉」
相手も何かされると思って回避行動をとろうとしたようだが杖を向けられてから動いても遅い。
一瞬後黒い光が相手パーティ近くに着弾し、そのあたり10mほどを飲み込んだ。
黒い光がなくなるころにはそこにいたパーティはいなくなっていた。
人数は5人くらいだったか?
だがそんなことを長く考えている余裕はない。
「光よ、我が敵を討つためにその力の一部を顕現せよ――」
こちらの大きな爆音にも似たような音に気付いた他のパーティが1度こちらを見た。
だが、そのうち2つは戦闘中だったらしく、そのまま戦闘を続けていた。
だが残りの1パーティはこちらに向かって走ってきていたため俺は再度詠唱を始めたのだ。
「〈聖なる弓〉!」
マリナは相手パーティが俺たちのところに到着するのを遅らせるために〈聖なる弓〉うっていた。
「その姿は柱、力強く敵の上から降り注げ。〈光落とし〉」
固まって行動していたそのパーティは全員光に飲み込まれ、消えた。
俺が2回連続で〈闇の雷〉を使わなかったのには理由がある。
すべてのスキルには冷却時間と言うものがある。
冷却時間と言うのはスキルを使ってから次にそのスキルを使うことができるまでの時間のようなものだ。
〈聖なる弓〉や〈瞬間移動〉はほぼ冷却時間がないのだが、〈闇の雷〉や〈光落とし〉にはそれがあるのだ。
だから短時間に続けて2回使うことはできない。
ちなみに〈闇の雷〉は1分、〈光落とし〉は45秒だ。
「マリナ、援護ありがと」
「マサもお疲れ様です」
二人でそう言った後MPポーションを取り出し、飲んだ。
残りの2パーティが戦っている間にMPは回復しておきたい。
あとどのくらいで向こうは終わる?
あと15秒ほどで〈闇の雷〉の冷却時間が終わる。
もしまだおわらなそうだったら冷却時間終了と同時に詠唱、攻撃しよう。
そう思って確認した。
「ッッ!?」
向こうも終わっている?
いや、問題はそこじゃない。
遠くからでもわかる、いやわかってしまう。
美紀、そこには弓をもった俺の妹が立っていた。
俺達から見て右側にもう一人立っているが、それは前にいた〈Hina〉と言うプレイヤーだろう。
「マリナ、MP回復したらヒナとかいうほうを頼む」
できればマリナに美紀をやってほしいが〈弓使い〉と魔法職では相性が悪い。
この距離では先にやられる可能性が高いだろう。
「わかりました。マサも頑張ってください」
向こうもこちらに気づいたようだ。
美紀は俺に向かって弓を構えようとしている。
(〈闇の雷〉の冷却時間終了を待つか?いや、それじゃ間に合わない。〈剣の空中乱舞〉は相手が剣の時じゃなきゃつかえない。………クソッ、成功するかわからないけどこれしか……)
距離は100mほど、うまくいけば大丈夫なはずだ。
「剣の精よ、我が敵を討つためにその力の一部を顕現せよ――」
美紀がこちらに向かって弓を構え終わった。
「その姿は魔法、現れよ――」
弓が光を帯びた次の瞬間、俺に向かって矢が飛んできた。
「〈魔法剣〉!」
スキル名詠唱と同時に右腕を動かす。
詠唱終了後、黒い光が杖を飲み込み剣の形をとっていく。
矢の軌道を予測し、確認。
俺の心臓めがけて飛んできている。
この距離でこんなに正確に弱点へ飛んでくるということは追尾性能があるスキルを使っているのだろう。
その後右手の光を矢の軌道上に合わせる。
(間に合うか?)
剣は無事作られた。
黒い闇のが剣の形をとっている。
そして矢は飛んできて、俺の剣は矢を斬った。
〈魔法剣〉、消費MPは60~3600の間での選択。
今回俺は600MPを消費して精製した。
効果は使用者に合った属性の剣を作る、というものだ。
威力は魔法攻撃力に依存する。
効果時間は消費したMP×1秒。
今回の俺の場合は10分と言うわけだ。
俺は剣を持った手を下に下げ、美紀に近づく。
「嘘…」
どうやら俺が矢を斬ったことに対して驚いているらしい。
何驚いてるんだよ、当然だろ?
ゲームで補正があるとはいえ初心者がうつ矢だなんてたかが知れてる。
初速は100kmを軽く超えていたであろう。
だがこの距離だったら多少は速度が落ちる。
それにこっちは2年も前とはいえ、バドミントンをやってたんだ。
あれは最速の球技、もっと近くで同じくらいの速度の球なら何回も見ている。
この剣は杖と同じ重さだし、あのくらいの速度だったら斬れないわけがないだろう?
残り50m程、Lv補正もあるから走れば5秒ほどか。
そう考え走り出す。
美紀は驚いたのか再度弓を構える。
「〈貫く矢〉!」
しかも心唱もしてないのか。
おそらくさっきのスキルではないだろう。
少し溜めがはいっている。
おおよそ、この距離なら外さないからもっと早く打てるスキルを、といったところだろう。
(甘えよ)
追尾性能がないスキルならとりあえず俺にあたるように打つだけだろう。
そんなの避けるのは簡単だ。
美紀の動き一つ一つに集中、弓を引く右手の力が少し抜けたのを確認した瞬間に俺は左へステップ、放たれた矢は先ほどまで俺がいた場所を通過した。
驚いているがそんなのは知らない。
再度ダッシュ、すぐに美紀のところに着いた。
そして剣を心臓部に構えたところで美紀が口を開いた。
「…お兄ちゃんなんでしょ?」
答えるかどうか迷ったが、確信を持っているように聞いてきたため答えることにした。
「そうだ。…だからなんだ。現実世界で話しかけてきてそれを無視していたらこっちにまで来るのか?それで俺だってわかっていて何か言うどころかいきなり強襲。お前のやってること、最低だよ」
他に何か言いたかったのかもしれない。
だが、俺にはもう言うことはない。
俺は剣を心臓に突き刺した。
HPゲージがなくなったのを確認してマリナのほうを確認しようとしたとき声が聞こえた。
「ごめ――」
その後はもういなくなっていて聞こえなかった。
それは謝罪だったのだろう。
聞いてもよかったかもしれない。
どうせ聞いても俺の心は全く変わらないだろうと思うけど。
俺も最低だよな。
マリナのほうは距離の利点を生かしたのだろう。
HPを減らすことなく相手を倒していた。
『フィールドナンバー2、残りパーティ数が1になりました。閲覧マップへ自動転送されます。経過時間4分33秒。最多kill数10、プレイヤー名〈Masa〉』
「マサ!勝ちましたよ!」
マリナは俺の方に走ってくる。
「お疲れ様、こっちも勝ったよ」
マリナはとてもうれしそうだった。
喜んでるマリナに俺も仮面の下から笑顔を返した。
転送が終わると、再度アナウンスが流れた。
『決勝戦は5分後に始まります。皆さん準備を整えておいてください』
さすがにMPの回復時間くらいはとるらしい。
『決勝戦のフィールドは闘技場、準決勝と同じになっています。参加人数は13、参加パーティは5です。今まで同様HPポーションは使えなくなっています。なお、転送開始まではその制約を解除しています。万全の態勢で決勝戦にお望みください。転送まで、残り3分51秒』
決勝のアナウンスはいまやるのか。
まあさっきは完全に意味なかったし当然と言えば当然なのかもしれない。
人数から考えると決勝までにやられた人は甦ることができないらしい。
多少俺達には有利かもしれない。
最初から人は減ってないしね。
「とりあえずMP回復しちゃおうか」
俺はマリナにそう言ってMPポーションを4本取り出して机に置いた
マリナは2本だけ取り出して同じように机に置いた。
「流石に決勝の直前にもなると誰も来ないみたいだね、別に来てほしいわけじゃないけど」
そう言いながら取り出したMPポーションのふたを開け、飲む。
「というか外にも人はいませんよ。何かあったんですかね?」
マリナも話しながらMPポーションのふたを開けていた。
「俺としては誰も来ないならそれでいいんだけどね」
HPは二人とも減っていないから〈回復〉を使う必要はないだろう。
MPポーションはマリナが2本飲み終わるとほぼ同時に俺は4本飲み終わった。
ちなみに仮面は口のところは開いているから外す必要はない。
「決勝ですね…」
不意にマリナがそんなことを言った。
「そんなのは分かってるよ、なんでいきなり?」
「たった2人で決勝まで来たんですよ?凄いじゃないですか!」
決勝というのを再認識したからなのかはわからないが、マリナのテンションは上がっていた。
「凄いかどうかはあの二人を倒せるかどうかで決まるぞ。何せ俺たちは他のパーティの脱落に助けられて生き残ってるようなもんだからな」
だからこそ決勝で勝ってこそ初めて自分に凄いと言えると思っている。
「…それもそうですね!決勝も頑張りましょうね、マサ!」
「ああ…。準決勝とフィールドは同じだから始まったらすぐに詠唱を始めるからな。まずは近づいてくるパーティを狙う。いなかったら右にいるパーティから」
『転送開始まで残り30秒』
マリナと最後に作戦会議をしているとアナウンスが聞こえた。
「わかりました!頑張って詠唱時間を稼ぎます!」
「ありがとな。それで、相手に遠距離攻撃職がいたら教えてくれ」
「はい!」
よし、作戦会議も終わった。
「最後に、俺は絶対に〈Hole〉に勝つ。マリナも頑張って〈Kaito〉に勝ってくれ」
「頑張ります!」
〈Hole〉、次は絶対に負けない。
そう心に決めたすぐ後、転送が始まった。
えっと、言い訳のようなものをさせてください
作者は妹属性のキャラが大好きです
なのにこの作品は書けば書くほど美紀が最低な人間に見えるという……
妹属性に恨みがあるわけでもなんでもないので、特に気にしないでくれるとうれしいです




