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Battle Job Online  作者: 栗山ハル
【1.Battle Job Match】
14/30

13.森之銀浪

 道具屋でパンを買って食べた後MPが回復するのを確認してから俺とマリナは町の外に出た。

 内部時間で夜6時ごろになると一定の職業やスキルを除いて攻撃が当たりにくくなり、相手は強化される。

 具体的には昼間使わなかったスキルを使ったり、基礎ステータスが上昇したり、リプップが早くなったりする。

 つまり、夜はあまり出歩くなということだ。

 現在時刻は内部時間で午後2時、つまり4時間で町まで帰ってくる必要がある。

 できるだけ近いところでモンスターを狩りたい。

 だが、始まりの町付近は昨日同様たくさんのプレイヤーであふれていて、とてもじゃないが良い狩りができるとは思えなかった。

「ちょっと遠くまでいく?」

「そうですね…ここじゃあ何もできそうにないですし…」

 俺はマリナに了承をとった後少し歩いて遠くで狩りをすることにした。

 時間にして30分くらい歩いた頃だろうか。

 周りにはほとんどプレイヤーがいなくなり、敵の種類も変わってきた。

 もう少し歩くと他にプレイヤーは全くいなくなった。

 周りを見ると木、木、木。

 どうやら草原だった町の周りとは変わってここのテーマは林という感じらしい。

「ここら辺で狩る?」

「はい!…でも私Lv的に大丈夫でしょうか?」

 そう心配そうに聞いてくるマリナ。

「…ちゃんと記憶は渡すよ」

「遠回しに無理って言わないでください!連れて来たのはマサでしょ!?」

「冗談だよ、俺がちゃんとフォローするよ」

 とはいえ、俺もここではちゃんと狩れるか心配だ。

 まずは詠唱してる時間があるのか、という問題。

 次にスキルの問題。

 ここでは〈闇の雷〉は使えない。

 近くにいる敵にあれ撃ったら自分が逝くしね。

 とりあえず〈聖なる弓〉を使うしかないのだ。

 でも、あのスキルは使ったことがないからぶっつけ本番。

 大丈夫かな、俺達…。

「マサ、来ましたよ!〈ゴーレム〉です」

 マリナが指をさす方向を見ると岩を組み合わせたような見た目の軽く2mは超える〈ゴーレム〉いた。

 距離は10mほど離れている。

 〈ゴーレム〉もこちらに気づいているようだが、何せ歩くのが遅い。

 おそらくここまで来るのに15秒はかかるだろう。

「じゃあとりあえずアレに二人で〈聖なる弓〉を撃とう!」

「はい!」

 そう言って俺とマリナは詠唱を始めた。

「光よ、我が敵を討つためにその力の一部を顕現せよ――」

「〈聖なる弓〉!」

 え、はや!

 詠唱短縮あると一言で魔法つかえんの!?

 なんかズルくね!?

 マリナが放った矢は〈ゴーレム〉の体めがけて飛んで行った。

「ゴオォォ…」

 そう言いながら少しよろめくがほとんど聞いてるようには見えない。

「その姿は弓と矢――」

「ダメです…5%も削れてません…。〈聖なる弓〉!」

 そう言って2発目を放つマリナ。

 なんか、既に自分の詠唱の遅さに泣きそうなんだけど…。

「鋭く一筋の道筋となり敵を貫け――」

「〈聖なる弓〉!」

「〈聖なる弓〉!」

 俺の最初の一発はマリナの三発目と同時に放たれた。

 そして俺とマリナが放った矢はほぼ同時に〈ゴーレム〉にあたった。

 そしてあたった瞬間にゴーレムの体は砕け散った。

「「え?」」

 俺とマリナの声がきれいにハモる。

 そして、マリナの放ったと思われる矢は消えたが、俺の放ったと思われる矢はそのまま直進を続けた。

 鈍い音を立てながら木を数本倒した後矢は消えた。

「…ズルいです」

「なんかごめん…」

 BJOのパーティを組んだ場合の経験値は攻撃を当ててても当てなくてもきれいに等分される。

 だから二人とも同じ分だけはいってるはずだ。

 あとから聞いた話になるが、この時のマリナの魔法攻撃力は12だったらしい。

 そして俺は仮面の補正と『厨二病』の効果で448。

 攻撃力にして単純に約38倍。

 Lv補正もあるからもう少し差が開いて、威力の差は当然と言えば当然なのだが、序盤でここまでの差は理不尽だな、と思う。

 それにしても〈聖なる弓〉はMP消費が少なくていいな。

 〈闇の雷〉は全MPの10%なのに対してこちらは50で固定だ。

 …まあ威力から考えてさが出るのは当たり前だとは思うが。

 それに消費MPが増えれば威力も上がっていくみたいだし、それはそれでいいだろう。

「マリナ、ここ見にくくない?」

 ちょっと拗ねてしまっているマリナの機嫌を直そうといい案を思いついたからマリナに提案しようと一つ質問した。

「森ですからね。見えるようになったからってマサ程の威力にはなりませんけど…」

 ちょっと皮肉を混ぜてくるのはやめてほしい、割と傷つく。

「やっぱり見にくいよね!そんなこと言わずにさ、見えるようになったら少し変わるかもしれないじゃん!」

「まぁ、そうですけど…」

 よし、早速作戦決行だ!

「闇よ、我が敵を討つためにその力の一部を顕現せよ――」

「ちょっと、マサ!?何をしようとしてるんですか!?」

「その姿は雷、光の速度で敵を滅せよ。〈闇の雷〉」

 俺がそう唱えると黒い光が俺の50mほど先まで一瞬で飛んでいき着弾。

 そして俺の目の前の木まで黒い光が飲み込み、なくなったかと思うとあたり一帯のオブジェクト、すなわち木が消えた。

 おそらくMobも何体か消えただろう。

『Lvが上がりました。Lvが上がりました』

 結構いたらしい。

 このLvから2も上がった。

 さて、

「マリナ、見やすくなったでしょ?」

 これでマリナの機嫌も少しはなおるはず、そう思ってマリナのほうを見ると……口をぱくぱくさせて呆然としていた。

「あれ…マリナ?」

 もっと喜ぶと思ったのに…。

「な……ですか…」

 何か小声で言っている。

「何してるんですか!?スキルの使うタイミングには気をつけてって昨日あれ程言ったじゃないですか!?」

「なんでさらに怒ってるの!?」

 結構考えて使ってるつもりだったのに…。

「大体マサは…」

 何か言おうとしたマリナの言葉はそこできれた。

 何だ?

 そう思ってマリナの見ている方向を見た。

 さっきクレーターとなったほうだ。

「オオオオォォォォォォ!!!」

 そこには銀の鬣を持った先ほどのゴーレムより巨大な3~4mはありそうな狼が立っていた。

 〈シルバーウルフ〉、このゲームで色の名前が入っている敵はエリアボス以上のモンスターだ。

「ちょっとやばいかも…」

 そう思いながら俺は〈シルバーウルフ〉との戦闘のための準備を始めた。

 〈シルバーウルフ〉Lv20

 目を凝らしてみると、Lvが表示された。

 HPバーは緑色のMAXだ。

 ここでHPバーの説明をしておこう。

 HPバーは白、緑、黄、赤の順で量が少なくなる。

 黄のバーを削りきったら赤色になり、赤を削りきったら相手が倒れる、というような感じだ。

 目安としては初期のHPがイベントボス、上位のエリアボスが白、普通のエリアボスや上級のMobが緑、中級のMobが黄、下級Mobが赤といった具合だ。

 ちなみに説明はしていなかったが〈ゴブリン〉はLv3、〈ゴーレム〉はLv7でどちらもHPバーは赤色だ。

 そしてBJOにおける狩りの適正LvはMobより2Lv下くらい。

 ボスクラスだとMob+2くらいだ。

 さっきLvが2上がったとはいえ適性Lvまで11も足りてない。

 マリナも先ほどLvが上がっているはずだが、それでもかなり足りてないだろう。

 逃げるか?

 いや、やれるところまでやろう。

 それに、試したいことがあるし、成功すれば倒せるかもしれない。

「マリナ、結構危険なことなんだけど、協力頼める?」

 俺は物理防御力がめちゃくちゃ低いから通常攻撃を一発貰っただけでポリゴン片となるだろう。

 詠唱終了まで誰かに頼むしかない。

「できる限り頑張ります、マサ!」

「さっき買った〈帰還石〉は持ってるよね?」

 〈帰還石〉とは「リターン」と言うだけで最後に寄った町に一瞬で帰れる便利アイテムだ。

 一度使ったらなくなるうえに値段は10kソルとかなり高めだ。

 …だが念のためと思って買っておいて正解だった。

 一つしか買ってないわけだけど…。

「危なくなったらそれ使って逃げてくれ!」

 俺達が話している間にも〈シルバーウルフ〉はこちらを観察し動き出そうとしている。

「でもマサは…」

「俺には〈瞬間移動〉がある」

 と言っても危なくなったときに詠唱しだしても遅いわけだけど。

 俺の説明で納得してくれたのかは分からないが、マリナは「わかりました」とだけ言って〈シルバーウルフ〉に向かって走って行った。

「〈聖なる弓〉!」

 マリナがある程度の距離まで〈シルバーウルフ〉に近づき、〈聖なる弓〉を撃った。

 …が、HPは数ドットしか削れていない。

 失敗したら確実に俺は死ぬ。

 だからやるしかない。

 流石に記憶はなくしたくないしな。

「光よ、我とその仲間に加護を与えよ。その役は物理攻撃力の上昇、鬼の力を持ってして敵を討つ。〈鬼の加護(オーガブレス〉」

 使用MP200、上がるのは物理攻撃力、マリナには(、、、、、)ほとんど意味がない、持続時間180秒のバフスキルだ。

 そのマリナは〈シルバーウルフ〉を遠くから〈聖なる弓〉で攻撃してヘイトを稼いでくれている。

 マリナの体力を見る限り攻撃も喰らってないようだし、何よりだ。

「ウワォォォォォォォオオオン」

 その時〈シルバーウルフ〉が吠えた。

 そしてその周りに〈ウルフ〉Lv15というモンスターがポップした。

 しかもその数5体。

(とりまきまで俺達より上のLvかよ…)

 とりまきは出ると予測はしていたが、Lvは俺とマリナの中間くらいだろう、と期待していたのも事実だ。

 最悪の事態を想定するべきだった。

「闇よ、我に魔王のごとき力を与えよ。代償には我が身を。その役はステータスの上昇。〈魔王との取引サタンズトレード〉」

 使用MP300、ステータスが全て二倍。

 追加コストは1秒ごとに5の俺のHP。

 それから使用中のHPポーションの使用不可。

 最後に痛覚再現システムを最大値…つまり現実世界と同じ痛覚。

 持続時間は使用者のHPが減らせなくなるまで…俺の場合は29秒だ。

「マサ、もう無理です!先に帰還します!マサもすぐに戻ってください!」

 マリナはそう言って町へ帰還した。

 …でもな、マリナは頑張ったんだから俺も頑張らないわけにはいかないんだよ。

 ウルフたちとの距離はおよそ30m。

 どうやらマリナはこちらに近づけないようにもしてくれていたらしい。

 マリナがいなくなったことによりウルフたちは一斉に標的を俺へと変えた。

 だがこれだけの距離があればさすがに俺のほうが詠唱が早い。

『ウワオォォォォォォン!!』

 ウルフたちが一斉に叫び俺のほうへと走ってくる。

「全ての現象を司る万能の神よ…我に力を貸したまえ…」

 そしておなじみの〈魔法透明化〉、使用MP100。

 残りの距離は20m。

 流石に〈ゴーレム〉より早いな。

「闇よ、我が敵を討つためにその力の一部を顕現せよ。その姿は雷、光の速度で敵を滅せよ――」

 残り15mほど。

「〈闇の雷〉」

 俺がそう発した瞬間に俺の目の前に会った草から先200mを直径としたクレーターが出来上がっていた。

 そしてそこには木などのオブジェクトはもちろん先ほどまでいたウルフたちの姿もなくなっていた。

 どうやら〈闇の雷〉は使用者に攻撃が当たらないように自動調節してくれるらしい。

 便利すぎるな、うん。

 …何故、俺が1撃でウルフたちを倒すことができたのか種明かしをしよう。

 今回俺は忌々しき名前の『厨二病』の力を限界まで使った。

 正直すべてが終わるまで成功するか五分五分と言ったところだったが、結果を見るに成功したようだ。

 『厨二病』の効果はスキル終了時までステータスが2倍、というものだ。

 つまりバフスキルも持続時間が終了するまでステータスが2倍になるということだ。

 だったら幾つもかければその分倍になっていくんじゃないか?

 俺はそう考えて意味のあるなしは関係なく、今使うことのできるバフスキルをかけたのだ。

 実際幾つかけても二倍より上がらない、と言う可能性もあったわけだが…。

 まず〈七死師〉で2倍、それから〈鬼の加護〉で2倍、〈魔王の取引〉で2倍、〈魔法透明化〉で2倍、〈魔王との取引〉自体の効果で2倍、そして最後に〈闇の雷〉で2倍、合計64倍だ。

 俺の魔法攻撃力は112、これに64をかけると…7168の魔法攻撃力。

 そして、ここでの上昇量は7056、〈マジシャン〉のメリットで魔法攻撃力の増加量は2倍になる。

 上昇値14112、これに112がプラスされ、14224の魔法攻撃力。

 1LvあがるごとにもらえるAPを全て魔法攻撃力につぎ込んだとしても948Lvは必要になる計算になる。

 その948Lvの極振りの魔法攻撃力で20Lvのエリアボスに攻撃…オーバーキルだな、うん。

 ……我ながらチートすぎた。

 そんな反省をしながらきっちりドロップアイテムを回収し、町まで〈瞬間移動〉を使って帰った。


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