11.仲互救出
ちなみに文字量の目安は3000~4000くらいです
「説明を要求しますっ!マサさん!」
「わかってる、わかってるから肩を揺するのをやめてくれ…」
とりあえず俺が泊まっている宿に着いて、しばらくするとマリナがそう聞いてきた。
両手を俺の方に置き激しく揺さぶりながら。
つけていた仮面を外した後、俺はマリナに尋ねた。
「それで…何から聞きたいの…?」
結構揺すられたせいもありちょっと気持ちが悪い。
何だよコレ…気持ち悪さまで再現されるのか…。
「幾つもあります!まずはその名前からです。私と会ったときは〈Masa〉でしたよね?なのに今は〈Right〉になってます。フレンド登録してるのはあの二人とマサさんだけだし…あなたのアイコンは白色だし……どういうことですか!?」
そう声を荒らげながらそう聞いてくるマリナ。
多分処理落ちしたせいもあり何かが吹っ切れているんだろう。
なんかちょっと怖い。
「それは俺のスキルを使ったからだよ…他には?」
簡単に返すと多少不満足そうに頬を膨らませながらも次の質問をしてきた。
「マサさんの職業は何ですか?」
…今日初めて会った子とはいえ初めてのフレンドだ。
悪い子にも見えない。
でも、本当に大丈夫か?
また裏切られたりしないか?
信じても大丈夫なのか?
「マサさん?」
下を向いて考え込んでしまった俺の顔を覗き込みながらマリナがそう声をかけてくる。
どっちにしろ軽い誘拐じみたことをやってしまった以上話すしかない。
信じるしかないんだ。
そう覚悟を決めて俺は正直に話すことにした。
「俺の職業は…〈マジシャン〉だ」
「…マジシャン?」
俺の職業を聞いた瞬間に不思議そうな顔をするマリナ。
正直馬鹿にされると思っていたからこの反応はうれしいと言えばうれしい。
俺はそのまま〈マジシャン〉についての説明を始めた。
マリナは最後まで聞いてくれた。
そして聞いた後はちょっと唇をとがらせて言った。
「なんかズルいです…」
「確かにちょっとチートっぽいよね…」
それは自分でも認める。
おそらく魔法攻撃力は全プレイヤーナンバー1だろう。
攻撃するときに2倍になるし…。
それによくよく考えたら〈七死師〉で常に2倍だし…。
「それじゃ、あと二つ」
そして真面目な顔になった後聞いてきた。
「なんで私を妹って言ったんですか?ミキさんとどういう関係なんですか?」
やっぱりそれも聞かれるか…。
「ミキとどういう関係っていうのは?」
少し悪いとは思うが、マリナがこの質問を勘でしているなら誤魔化してしまおう。
そう思っていた。
「私、周りの空気には少しだけ敏感なんです。さっきミキさんがマサさんに話しているときそれを聞いていたマサさんの空気が、なんか刺々しく見えて…。私を助けてくれた時に男の三人組に向けていたような…そんな空気でした」
どうやら勘だけでというわけじゃないらしい。
「でも空気なんて勘違いかもしれないよ?ほら、ここはヴァーチャルだし」
「あの仮面の目のところ、穴が開いてますよね?そこからマサさんの目が見えたんです。冷たく凍った…軽蔑のまなざしでした。初対面の人にあんな目はしないと思います」
ほとんど確証があって聞いてたんだな。
何をためらってたんだ、俺は。
この質問が来ることがわかっててこう動いたんだ。
腹をくくれ。
「ミキは…アイツは妹だよ、現実の」
ある程度予想してたのかマリナはあまり驚かない。
そして俺は自分の過去のことを話し始めた。
マリナは時折悲しそうな顔をしつつもその話も最後まで聞いてくれた。
そう言えば今まで誰にも話したことなかったな…。
誰かに話した、そう自覚した瞬間に少し肩の荷が下りた気がした。
「それでさ、俺はアイツに俺だってばれたくないんだ。だからマリナの現実での兄っていうことにしてその可能性を消したかったんだ。ごめん、利用して…」
「気にしないでください。……そうだ、マサさんにだけつらい話をさせてしまうのも申し訳ないです。私にも1つ話をさせてください」
マリナは俺にそう言って話し始めた。
◇ ◇ ◇
ある少女は親の都合上転校が多い子供だった。
小学生の時に計12回。
長くても1年、短いときは3か月で転校ということもあった。
転校生というのは最初はちやほやされるものだ。
好きな食べ物は?何か習い事はしてるの?そんな軽い質問もあれば、付き合ったことはあるの?何回告白された?などの当時の小学生の彼女にとって重い質問もあった。
もともと話すことがあまり得意ではなかった少女はそのほとんどの質問に口ごもるだけだった。
それもそうだろう、1対1でも緊張して噛んでしまったりするのに大勢に囲まれた状況で話がうまくできるはずもない。
結果1週間やそこらですぐに誰も構ってくれなくなった。
少女の容姿はとても美しいものだった。
男子は話すと緊張するから話しかけられず、女子は男子に人気な彼女のことをひがんだ。
なんであんな地味なやつが?そんなことを陰で言われていたのも知っていた。
少女は考えた。
何がいけないんだろう?
質問に口ごもってしまったことだ。
自分の対応がよくなかったからだ。
幸いなことにいじめが発生する前にすぐ転校になるからいじめを受けたことはなかったが、友達がいない自分が嫌でそんな質問を自分で自分にしていた。
そして何回もの転校の中で彼女はある一つの技術を身に着けていた。
周りの人の喜ぶことがわかる、そんな技術を。
100%ではない。
それでもその技術は彼女にとって大きなものだった。
こんな時あの子は私がどうすれば喜ぶか、そんなことを第一に考えるようになって気づけばそれが普通になっていた。
中学に入るとその技術にも磨きがかかり彼女はどのグループにもいられるようなそんな子になっていた。
よく言えば空気が読める、悪く言えば個性が薄い。
そんなことも自分でわかっていたが、別に気にしていなかった。
彼女にとっては転校まで何事もなく学校生活を楽しめればよかったのだから。
◇ ◇ ◇
マリナのことだ。
あの状況で話し始めたことからも推測できたが、内容からもそうわかってしまった。
「そして少女はBJOのβテストに当選して、この中でなら自分も変われるかもしれない、そう思いました」
そのあとは聞かなくてもわかった。
職業を選ぶときに周りがいなくてどうすればわからなくなった。
そんな中〈僧侶〉というパーティ支援型の職業を見つけた。
自分はその職業が向いているに違いない、そう思ってその職業を選んでしまった。
変わろうとして始めたゲームなのにもかかわらず。
そんなところだろうと思った俺の予想はほぼあたりだった。
「マサさん、さっきマサさんは自分の過去の話をしたときに友達にに悪いことをした、償いたい、それに似たような発言をしましたよね?」
確かに俺はそんなニュアンスの発言をした。
もっと俺の頭が回っていれば凌を助けられたかもしれない。
そんなことを言った。
「マサさん、そんなに自分を責めないでください。マサさんは頑張りましたよ、きっと、誰よりも」
「違う!あの時から…俺は何もできてないんだ……」
逃げてた。
一番向き合わなくちゃいけないのは俺なのに、あの後の俺は何もしてなかった。
「そんなことないです、現に私が救われてます!マサさんの友達に直接何かできていなくても…私にその分救いをくれたじゃないですか。同じ失敗を繰り返してはないんです」
「ただ絡まれてたから助けただけだ」
そう言った俺にマリナは微笑んで言った。
「違います。私さっきマサさんに自分の感情を素直に出すことができました。そんなこと本当に久しぶりだったんですよ?周りに合わせるってことは自分を殺す、ってことでもあるんですから。マサさんは私を救ってくれたも同然です」
救われた。
その言葉に、その表情に。
「ありがとう…マリナ……」
気づいたら涙が出ていた。
はは、仮想世界でも涙って出るんだな…。
ただ自分のことを話して、相手のことを聞いて、お礼を言われただけなのに。
それだけのことで俺の心は楽になり、満たされた。
「本当に…ありがとう」
ただ泣いている俺をマリナは優しく撫でてくれた。
身長的には俺のほうが30cm近く大きいのに今はまるでマリナのほうがお姉さんのようだった。
その撫でてくれた手は確かに暖かかった。




