9.思出記憶
サブタイは大抵造語です
仮面をイベントリに収納してさっきいた宿に戻ろうとしていると少々不愉快な光景に出くわした。
女の子一人を柄の悪い男三人で囲みナンパ…というよりセクハラをしているのだ。
しかも女の子は見た感じ中学生くらい、男たちは高校生くらいだ。
数人で一人を囲んでいじめているような光景は嫌な記憶を思い出させる。
(助けよう)
そう思った俺は男たちを止めることにした。
「おい、お前ら。やめとけよ、嫌がってるだろ?」
俺がそう言うと男たちはこちらを振り向き睨みつけてきた。
「この人数差でそんなでかい態度がとれるなんて…お前状況わかってないのか?」
いつかの少年と全く同じことを言って笑う男。
顔は全く似ていない。
だが、その言葉から俺はあの時の状況と重ね合わせてしまった。
(でも、俺はあの時とは違う)
「じゃあさ、バトルロワイヤルのデュエルしようよ。それで俺が勝ったらそれ、やめてくれない?」
「まだ開始後半日もたっていないこの状況で3体1で勝てると思ってるのか?」
「コイツバカなんじゃねえの?」
「いいじゃん、ボコろうぜ、ストレス発散できるし」
男たちは同じような意味の答えを返してきた。
「無理です!やめてください!この三人戦士職ですよ!?貴方は装備的に魔法職、相性が悪いです!」
女の子は初めてそこで口を開いた。
どうやら戦士職と魔法職だと相性が悪いらしい。
多分詠唱短縮を使ってどんなに早く詠唱しても1つ魔法を唱えたらもう相手に接近されている、ということだろう。
そして1発じゃ3人を屠れない。
でも、それはどちらも同じくらいのレベルだったら、の場合だ。
女の子の言葉をスルーしてバトルロワイヤルデュエルモードの申し込みを三人に送った。
三人とも汚い笑い方をしながらそれを承諾した。
開始は1分後、ルール上詠唱はいつ始めても問題ない。
1分後までは動けない、というだけの話だ。
実はLvアップボーナスで他にもスキル を習得していたのだ。
コストパフォーマンスが悪いし、正直Mob狩りには向いていないが、このくらいの相手への脅しにだったら十分使えるだろう。
最悪〈闇の雷〉で消せばいい。
それまで生きているかが問題だが。
カウントが30を切ったところで相手は三人とも剣を抜いた。
そして俺も詠唱を始める。
「剣よ、我を一時的に主とみなし我に従え。我の意思の下空中を舞い敵を斬り、貫け」
敵はこっちを見て笑っているが、仕方ない。
こうしないと俺の魔法は使えないのだから。
カウントが5をきった。
4、3、2、1……0
カウントが0になった瞬間に三人ともこちらへ走りこんでくる。
剣も赤、青、緑と光をまとい、スキル発動のサインを発している。
そして俺も最後の詠唱を口にする。
「喰らえ、〈剣の空中乱舞〉」
俺がそう口にした瞬間、男たちの持っていた剣は光を失い空中を動き俺の背後で制止した。
切っ先を男たちに向けて。
「な…なんだよそのスキル!チートだろ!」
残りの男二人も同じようなことを言っていた。
三人とも怯えるように後ろへ下がっている。
「いけ」
淡々と俺はそう言うと剣を男たちの首のすぐ近くまで飛ばし止めた。
「「「ヒィッッ!」」」
三人そろって悲鳴を上げる。
「ここで降参ボタンを押すならやめてもいい。痛みも感じるらしいし、痛いの嫌だろ?」
そう俺が口にすると男たちは素早く右手を操作し降参ボタンを押した。
その瞬間に剣はコントロールを失いその場に落ちた。
男たちはその剣を拾った後走って逃げて行った。
「凄い…」
そう言えば女の子のために戦っていたんだった。
途中で昔のことを思い出し最初の目的すらも忘れてしまっていた。
「大丈夫?」
俺が近づいてそう尋ねると少女は無言で頭を縦に振った。
よく見るとすごくかわいい子だった。
身長150センチほどで髪は黒髪のショートカットで少し弱気そうな顔。
まるで日本人形のようだと思う。
プレイヤー名は〈Marina〉
「一人で行動してるの?」
そう聞くとマリナは首を横に振った後答えた。
「今日知り合った友達二人と一緒にいたんですけど…私買いたいものがあったから一人でこっちまで来て…そうしたらさっきの人たちに…」
「そうか、間に合ってよかったよ。それじゃあ、またいつか」
そう言って俺はその場を後にしようと宿のほうへ歩き出した。
「待ってください!」
呼ばれたので振り返るとマリナが俺の服の袖をつかんでいた。
「フレンド登録、してもらってもいいですか?」
上目づかいで聞いてくるマリナ。
「構わないよ」
俺の最初のフレンドはおそらく年下のプレイヤーの〈Marina〉という人だった。
「それじゃあまた!」
フレンド登録が完了するとそう言って走りだしたマリナ。
(それにしてもさっきはラッキーだったな…)
実は〈剣の空中乱舞〉は他のスキル同様にデメリットがある。
MPは1000消費。
そして発動プレイヤーはその場から動けない。
三つ目が正直一番問題だ。
このスキルの攻撃力は『物理攻撃力に依存する』というものだ。
つまり俺が使っても殆どダメージを与えられないというわけだ。
あれでビビらずに突っ込んでこられたら危なかった。
(俺も宿に戻ろう)
一通り反省が終わった後、今度こそ宿に帰ることにした。
◆ ◆ ◆
「マリ、遅かったね。何かあったの?」
私がみんなとの集合場所に着いたとき、集合時間から三十分ほど遅れていた。
「ごめんなさい…。ちょっと変な人たちに絡まれて…」
「絡まれた!?マリちゃん大丈夫?何もされなかった?」
今度はミキさんが私にそう聞いてきた。
この世界でできた最初の友達が二人みたいな人で本当によかったと思う。
じゃなかったら私はこうして楽しく過ごせていないと思うから。
「はい、心配してくれてありがとうございます。実は絡まれてるときに優しい人が助けてくれて…」
あの人がいなかったら私はどうなっていたかわからない。
本当に感謝してもしきれないと思う。
「そんな優しい人もいるんだね」
「はい!それも物凄く強くて…それに……かっこよかったです…」
今でも鮮明に思い出せるあの人の姿。
身長は175cmほどでミキさんと同じような色の髪の毛、少し少年らしさを残しながらもたくましさを感じさせる顔つき。
ただ戦っているとき少し悲しそうな顔をした気がしたけれども…。
「どんな感じだったの?」
ミキさんがそう聞いてきたので私は絡まれてから助けてもらうまでのことを話した。
「本当にカッコいいね…」
「それよりも相性があんまりよくない職業、それも3体1でやって勝つって…なんか自信なくすよね」
ミキさん、ヒナさんがそう答えた。
フレンド登録をした、ということは二人には言わなかった。
言うとせっかく助けてくれた人に迷惑をかけることになるかもしれないし、何より他の人に彼のことを知られたくはなかった。
自分だけのヒーローでいてほしかったのだ。
それでも少し話したくなって名前以外はほとんど言ってしまったけど。
少しにやけてしまっているかもしれない。
そう考えたがすぐに気にならなくなった。
フレンドリストを開くとそこに一際目立っている〈Masa〉の文字。
また会えるといいな…。
心からそう思っていた。
(そう言えば何の職業だったんだろう。今度聞いてみようかな)
一つの小さな疑問を残して。
◆ ◆ ◆
BJO掲示板
最強職は何だ!?
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255:さすらいのナンパ師
さっきよくわかんない詠唱されて俺の剣が相手に操られたんだけど…
256:怪盗戦士
>>255
何だそれww
つか名前どういうことだよwww
257:さすらいのナンパ師
>>256
そのままの意味。
剣がどうのこうのって詠唱の後俺の剣が相手の支配下に…
魔法職相手に3人で挑んでこっち降参した
つかお前の名前も何だよwww
258:ゴーズ
>>257
そいつの特徴と名前は?
259:怪盗戦士
>>257
つか3-1で負けたのかww
そんなチート職ねえだろww
260:さすらいのナンパ師
>>258
名前は見てないからわからん!
見た目は初心者装備の武器は杖、茶髪のイケメン君だったよ…
>>259
いたんだから仕方ねえだろ!
261:ゴーズ
そいつプレイヤー消滅事件の犯人かも
262:怪盗戦士
>>261
え?
263:さすらいのナンパ師
>>261
え?
264:とある事件の被害者
>>261
え?
265:ゴーズ
あの事件、目撃者がいて今言ってもらった情報とほとんど一致してる。
その時たまたま近くにいたやつも厨二っぽい詠唱聞いたって
266:怪盗戦士
>>265
厨二ワロタww
267:ゴーズ
プレイヤー名は〈Masa〉、見つけ次第どういうことか聞こう。
268:怪盗戦士
>>267
厨二病〈Masa〉なww
みんな厨二病〈Masa〉見つけたら情報よろ!!w
つかちょっと厨二ツボったからギルド本部に申請してくるわww
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