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第三話

とりあえずの逃亡


「ねぇ、ライズ兄さん、どこに向かっているの?」

 トンネルを一つ抜けたくらいのところでミレは聞いた。

「んー、一応はシェーマン。だって、封筒はシェーマン地方からのものだし、それに彼らの言っていたエドマール地方から離れるし」

「そうね、確かにだわ」

 ファルト地方を中心にエドマール地方とシェーマン地方ではまったく逆方向に当たる。

リードが言った。

「ライズ、一度学校に寄ってくれ。アルクに会う」

「アルクって、アルク・スアズ?あの変わり者の?」

 センリが言う。

 リザが聞いた。

「変わり者なの?どんな人なの?」

「んー、俺らの学校はー頭のいい奴が多いんだけどーアルクはいつも一番下。でもー進級は必ずするー」

「学校?学校って何?進級って何?」

「僕等は普段、学校というところにいるんだ。それで、一年に一度テストをして、上位三十名が上へ行くんだ。年齢は関係ない。アルクは普段のテストでは一番下なのに、進級の時だけ必ず、三十位に入ってるんだ」

と、センリが説明した。

「へー。そんな人いるんだー。頭、いいの?悪いの?センリは嫌いなの?」

 アルクのことを説明する顔がしぶしぶだったからか、リザが言った。

「頭は悪いが、かなり強力なコネがあるって噂なんだ。実力派でない奴はあまり好きじゃないね」

「なんで、そんなこと知っているの?」

と、ミレが聞く。

「コネって何?」

と、リザが聞く。

「センリはー、情報やだしー」

「盗聴機作りの名人だ」

 リードが言い直した。

「へぇ」

と、ミレも言った。

「盗聴機って何?」

「えっと……あ、みえたよ、あれが学校だ」

 車だとつくのが早い。

センリは慌てて話題を変えた。確かに盗聴機をつくるのが名人だとしてもあまり人様に大っぴらに言えることではない……。

「始めてみるー、でっかい建物ねー」

リザはまじまじと見つめた。たしかに、ファルト地方でなくともこんなに大きな建物は珍しいだろう。

五人は車から降りて正門のほうへ歩き出した。リードにミレは聞いた。

「リード兄さん、私たち、部外者だけど入れるの?」

「大丈夫だ。学校のセキリティーはこの地方で最初に壊れた。見張っているのは人だ」

門の前に立っていたのは生徒たちだった。といっても二人。

「あ、リードさんにセンリさん、ライズさん……に、後ろの二人は?」

「妹たちだ。入れてくれ」

「ハイ」

「ずいぶん、すんなり入れてくれるのね」

あまりの早さにミレは拍子抜けしたようだ。

「リード兄さんたち、有名なの?まぁ、双子は珍しいけど……」

「有名というか……」

「あの人たちはー、学校一の記憶力の天才たち。リードもかなわないー」

「そうなの?」

「一点差だ」

 ちょっと機嫌が悪そうに言った。

「リードー、負けたこと、ひがんでいるー」

 ニヤニヤとライズが笑う。

「ひがんでない!」

「へぇ……。気にしているのね」

と、リザも笑った。

「してない!」

「それで、誰が入ったか、記憶していられるからすんなり入れるのね」

「そういうことだ。出て行くときも彼らに声をかけてから出る」

 むすっとした顔をして、リードはサクサク歩いた。


学校内へ


門から校舎内に行くまでにちょっとした、庭がある。そこに女性の声がした。

「リードライズ兄弟」

 ボーイッシュな感じの女性が手を振って走ってきていた。服はピットリウムだが、頭には白いかぶりものをしていた。

「ルイだー」

「おはようって、何で三人いるの?」

 ルイはしげしげと見つめた。

「ルイ、私たち兄弟を一人のように呼ぶのは止めてくれといつも言っているだろう。妹だ」

「そっくりー。二人が女の子になるとこんな感じなのね。こちらは?」

と、リザのほうを見つめた。

「私、リザ」

「かわいいー」

ルイはぎゅっとリザを抱きしめた。

「アズに怒られるぞ」

あわてて、センリが言った。

「そうね」

ルイはぱっと手を離した。

「ルイ、アルクに会いたいんだが、どこにいるか知らないか?」

「んーアズなら知っているかもしれない」

「呼んだ?」

背後から突然声がした。いつの間にか、色黒の女性が立っていた。ルイとは逆にかなり女性らしい格好をしていた。髪にまで気を使っているのがよくわかる。かなりおしゃれな人といえるかもしれない。

あわててルイが聞いた。

「アズ、授業は?」

「ぬけてきた。八百年前のカードゲームなんてならってもね。三人ね。三つ子だったの?」

と、三人を改めてしげしげと見つめた。やっぱりさすがに三つ子は珍しいようだ。

「アズ、アルク知らない?」

と、ライズが言い出した。

「アルクなら、視覚室にいるわ」

「しかし、あそこは機械が壊れていて、使えないだろう?」

と、リードが言う。彼の頭の中には使えない教室の情報も入っているというのだろうか。

「暗幕つきだから、昼でも寝るのに最適なの」

「なるほどね……」

「この子は?」

突然、アズが言い出した。

「私?リザよ」

「ルイ、私と別れて、彼女と付き合うの?」

「え、いやだ、アズ。今日、会ったばかりよ?」

 慌ててルイが言った。

「本当に?さっき抱きついてなかった?」

と、疑いの目でルイを見た。

「気のせいよ」

「アズ、私たちは急ぐので、また」

 リードは歩き出した。

「そうね。私もルイに話があるし」

後ろの方でアズはルイにリザに抱きついたことで何か文句を言っていた。

「恋人同士?」

ミレは聞いた。

「そうー、二組しかいないうちの一組ー。男は十組いるのにねー」

「九組だ。カイとワイズは別れたらしい」

と、自称情報屋のセンリが言った。

「へぇー」

「……こう言ってはなんだけど、私、兄さん達は勉強ばかりしているのかと思っていたわ」

と、ミレは驚いたようだった。

「私は勉強が好きでここにいる。しかし、ここは私やライズのように家から通うものもいれば、寮に住んでいる者もいる。人がともに住めば、なにかしらあるというものだ」

「男女の方が多いのよね?」

と、ミレはおそるおそる聞いた。

「当たり前だ。しかし、今ではほとんどが一緒に地方に帰っていて、学校にいないんだ。」

校舎内を進みながら、リザが聞いた。

「ねぇ、視覚室って何?」

「えっと、スクリーンに映像を映す部屋だよ。目を鍛えたりするんだ」

「目を?」

「たとえば、ボールがやってきたときにこのくらいの距離なら避けられるとわかるようにするもので……」

センリが説明している間に到着した。

「着いたぞ」

コンコン 

開けてみると中は真っ暗だった。

「アルク、アルクいるか?」

もそもそと、何かが動く様子が見えて、次に声がした。

「あーいるよー誰ー?」

「あけるぞ」

 手探りで暗幕をあけた。光が差す。以前は扉が開けば自動的に電気がつくようになっていたが、すでに壊れていた。

「うわっ、まぶしい……」

すると、席の真ん中から起き上がる一人の人物がいた。赤い髪がよく映える。アルクは本当に寝ていたようで、頭はぼさぼさになり、しばらく目が開けられずにいた。どうにか頑張って言った。

「なんか……、三人に見えるんだけど、気のせいか?」

「三人いるよー」

「センリに……女の子の二人か。なんだ、双子じゃなくて、三つ子だったのか。学校一の秀才がそろって、オレに何のようだ?」

 アルクはあくびをした。

「単刀直入に聞く。最近のライト軍と反ロボット軍の動きに関して、なにか、知らないか?」

「答えると思うのか?……こちらのお嬢さんは?」

 まだ、目をしばしばさせて、アルクが言った。

「私?リザだけど」

「へー、かわいいじゃん。俺と遊ばない?」

答を聞くより早くセンリが殴った。その勢いで椅子から転がり落ちた。

「いってー」

「おい、リード、こんなやつに何を聞いても無駄だ。行こう」

「先に外にいてくれ」

「なんにもしらねーよ、こいつは」

「センリ、君はしらないのか?彼の父親は反ロボット軍と戦っているグループ、ライト・エーアイ軍のトップだ。君は彼の頭をコネだといったが、そうじゃない。そう見せかけているだけだ」

「そーなのー」

「さすが、秀才二人、生徒の家族構成も入ってるってか?ついでに、なんでコネじゃないってわかるんだ?」

頬をさすりながら、アルクは言った。

「全員が人間の先生なら可能だろうが、三分の二は機械の先生方だ。息子を甘やかすような校長に誰が付いてくものか」

と、リードは冷静に言い放った。

「ライト・エーアイ軍って何?」

リザが聞いた。

「覚えることないよ、行こう。校内でも見せるよ」

と、センリが怒った声のまま言った。

「でも……」

「行っていて、リザ。後から行くから」

ミレの言葉にリザは安心したようだった。

「うん」

二人は出て行った。

「なんだ?センリの彼女か?」

 まだ痛むのか、頬をさすりながら、やっと目が覚めたようなアルクは立ち上がって言った。寝ているときはそうは感じられなかったが、えらく背の高い人物だ。

「妹だ」

「ありゃーそれじゃ、怒るな。妹なんていたのか、知らなかったよ。しかし、センリは、あんなに気が短い奴だったか?」

 アルクは寝ていた椅子に座りなおした。

「私は気が短いぞ。早く言わないと怒るぞ」

 リードは手をパキパキと鳴らした。慌てて、アルクが言った。

「まて、お前だと骨までやられるって聞いたぞ?アドガーの腕折ったろ?」

「三箇所ねー」

と、ライズが補足説明をした。

「三箇所?腕を三箇所?」

 ミレは驚いたように兄達を見つめた。どこを、どう三箇所折ったのだろう。

「私の勉強の邪魔をしたからだ。両方折ったら勉強が出来なくなるから、聞き手じゃない方をちょっとな」

 それはアルクも初耳だったらしい。

「そ、そんな理由で、三箇所……わーた。いうよ、でもそんなに知っているわけじゃないよ」

「なんでもいいよー」

「ジェディンのことは?」

「名前だけは知っている。エーアイキラーの製造者だって事も」

「彼は今現在も逃亡中だ。もちろん探している最中だ。随分前のある日、親父のところにエーアイキラーにやられないロボットの作り方が描かれた設計図が届いたんだ」

「届いた?じゃあ、ライト軍にいるわけじゃないのね」

「そ。最初は疑っていたが、作ったら本当にエーアイキラーがきかないんで、大量生産。それがディー5ってやつだ。でも向こうも新種を出してきてね」

「どこから、その作り方は送られてきたのー?」

「サザル地方だった。正確にはサザル地方のマークがついていた。親父達は探したけれど、いなかったよ、彼は」

「他に何か知らないか?」

「彼に親戚が一人だけいることくらいかな?どこにいるのか、よくわかんないんだけど。見つかったら向こうにとられる前にこっちで保護するけどな」

「そうか、わかった、ありがとう」

「うわっ、秀才にお礼を言われた。あ、もう一つ、彼はここの学校をトップで卒業しているらしいぜ。機械学をな、専攻していたそうだ」

「へぇーかしこいんだー」

「おまえらだって、トップだろうがー。おれはもう、寝るぞー」

 アルク伸びをしてから寝っころがった。

「おやすみ。ありがとう」

と、ミレもお礼を言った。

「いーえ」 

 もう寝っころがっていて、姿は見えなかったが、振っていた手だけは見えた。ミレは暗幕を閉めた。

 視覚室から外に出て、二人を探すとすぐ近くの柱に描いてある校内地図の前でみつけた。地図を見つめて、あれこれ言っている。

「なにやっているんだ?」

「校内説明」

 まだ少々、不機嫌そうな声でセンリが言う。

「学校内に地図があるの?なんで?」

と、ミレも地図を見つめた。かなり大きな地図でわかりやすい。

「校内で迷うやつがいるからな。それだけ大きいということもあるが、授業の移動には走らなくてはならないこともあるのは不便だ」

「なにか、わかったか?」

声はともかく、センリはまだ不機嫌そうな顔をしていた。

「とりあえず、次に向かうはエファーリア地方だ。ライト・エーアイ軍の本拠地もあるし、ついでにジェディン氏が設計したという、エーアイキラーでも倒せないロボットを見に行こう」

そのとき、変な音がした……。

ガガガピー……。

もってきていた、無線機だった。機械から怒鳴り声が響いた。

「おい、お前達、まだか?エント様がお待ちだぞ!」

「もうしわけありません」

 リードがすました口調で答えた。

「早くしないと首が飛ぶからな!」

ぷつっと音が途切れた。

「今……エントって……」

と、ミレは驚いた顔をした。

「エント……って、あのエントかなぁ……」

 センリも呆然としているようだった。

「まさか。だってロボットの権利を主張している人よ?」

「エントって誰?」

と、聞くのはやっぱり、リザだった。

「この国の首相よ。でも……なんで反ロボット軍とつながっているの?本当にあのエント?」

 いつの頃からか、そしてなぜだかわからないが、国には大統領派と首相派に分かれており今はロボット推進をしてきた首相が主導権をにぎっているのだった。三年に一度、選挙が国の大臣や住人によって行われていた。しかしその票があまりにも近すぎて、揉めそうなときだけ地方にも参加を求めるがそんなことは滅多にないのが現状だった。

「とりあえず、敵のトップは見えた。それにペンダントは向こうが握っていると思い込んでいるらしいからな。ペンダントの意味の解明はまだ出来ていないが、あの嫌いな顔のあいつだけにはやりたくない。行こう」

「好き嫌いが結構あるのね」

「あー、僕もはじめて知った。この二人といて、七年くらいたつけどなぁ……」

「めったに嫌うことはない。エネルギーを使うからな。無視していればいいのだが、向こうがほっておかないというのだから、しかたがない」

リードは校舎内をほとんど覚えているのか、さくさく校舎内を迷うことなく歩いていると、ルイとアズに再び会った。

「あ、リードライズ兄弟」

「なにー?」

「なじむな」

「ディブル氏がさがしていたわよー」

と、まだなにか不服なのかリザのほうをジロジロ見つめながら、アズが言った。

「本当か?」

「うん」

と、ルイが言う。

「どこにいる?」 

「研究室だと思う」

 聞いたとたんにリードは走り出した。あまりに急激に走り出したので、みんなの動きが遅れるほどだった。もう角を曲がって見えない。

「まってー、リードー」

 全員で追いかけたが姿を見失ってしまった。

 その頃、リードは迷うことなく、ディブル氏の元へ急いでいた。その研究室のドアを開け次第、声をかけていた。

「ディブル氏、できましたか?」

「できたよー、できたよー、見たい?見たい?」

 そこにいた、白衣を着た若めの男性はとてもキラキラさせた目をして笑っていた。これを見ると、つい、リードも笑顔になる。

「ええ、ぜひ」

「じゃ、三つ向こうの教室が空いているから、そこで、真ん中においてやろう。もう机もおいてあるんだよ」

「早い準備ですね」

「早く、見せたくってーさー」

 その白衣の男の足取りはまるで子供が楽しみにしていた遠足に行くように軽かった。二人は移動し、中央に置かれた金属の机に小さな四角い箱を乗せて、タイマーを入れて、教室から出た。


「こっちだっけー?」

と、ライズは辺りを見回わすが、どこにもリードの姿は見当たらない。

「どこに行ったのかしら?」

「えーと、地図はー」

「見ないとわからないの?」

「普通は知らないよ、ディブル氏みたいな危ない研究所……」

 そこまで、センリが言いかけたときである。

ドッカーン

急にものすごい音がした。

音の方へ走っていくと先に真っ黒な、煙が来た。それを窓を開けて、追い出しながら、前を見つめると、教室が一つ吹っ飛んでいた。ドアはひん曲がり、中から黒い煙が出ていた。一つしかない机がぺったんこに床にくっついていて、真っ黒にこげていた。

「また、ディブル氏がなにか、壊したのかも……」

「またって……何の専門の先生なの?」

「それよりも、リード!」

と、センリは大声で叫んだ。

「ここにいるよ」

と、割と近くで冷静なリードの声が聞こえた。真っ黒になった教室より奥から出てきた。

「大丈夫か?」

「もちろん。遠隔操作による、爆破だったんだ。少しわけてもらったから行こうか?」

と、リードは大したことではないというような口調で言った。そして、歩き出したのでみんな慌ててついて行った。

「わけてもらったって、何を?」

と、ミレが聞いた。

「爆弾……みたいなものだ」

「みたいなもの?」

「途中でー爆破とかしないー?」

「しない」

「なんで、そんなもの、わけてくれるのさ?」

と、センリもびくびくしながら聞いた。

「火薬の調合にアドバイスしたんだ。おかげで、きれいな爆弾で、空気も汚さない。今のは少量だったけど、量によっては、ビルの真ん中におけば、四方に広がり、まっすぐに落ちていく。学会に発表できるような爆弾が出来た」

かなりの音におどろいた生徒達がその教室方面に向かってどんどん集まる中、リードの爆弾の説明を聞きながら、五人だけは逆方向に向かって歩いていた。そして草むらの中の道を歩いていった。門の前に出る。

「あ、あの、なにかあったんですか?」

 門の前にいた生徒たちが聞いた。

「デェブル氏の実験だよ」

「またですか……」

 なるほどという顔を門番の二人は同時にした。

「じゃ」

「はい、お気をつけて」

 再び、ライズの運転で走り出した。ミレが聞いた。

「なんで、ディブル氏って言われているの?先生じゃないの?」

「先生だけどー、本人がー先生って言われるのはいやだって。それでーみんな、ディブル氏って呼ぶのー」

「なんの教科担当なの?」

「……建築なんだ」

 センリは少々ためらってから言った。

「建築?」

と、ミレは怪訝な顔をした。なんで建築を教えている人が教室を爆破するのだろう……。

「本当に建築?爆学じゃなくて?」

 そうミレが聞きなおしたのも無理はないだろう。

「本当に建築の先生だ。爆薬は趣味なんだ」

 リードが変わりに言った。

「趣味……」

 ミレはあきれたように言った。

「生徒に、またかって言われるほど、あれこれ、壊している人なの?建築の先生なのに?」

「一ヶ月に一度は必ず、どっかで煙がでるよ。前なんか、廊下中、緑の液体が広がって掃除が大変だった」

 そのときの様子を思い出したのか、げんなりしたような顔をしてセンリは言った。

「あれは失敗作だ。森の中で気がつかない粘着力のあるものを作ろうとしたらしい」

と、リードが代わりに弁明していた。

「その前は花火だった」

「たしかに、爆薬ね。でも、花火ってもう職人が全部ロボットになっているんじゃないの?」

「それを自分で作ったんだ」

「実験ー。自分でやりたいってー」

「花火ってきれいよね」

と、リザは目をきらきらさせて言った。

「知っているの?」

「うん、みんなで見に行ったよ。……どこに行ったのかは覚えてないけど」

「それでうまくいったの?」

「完成はしたけど……うまくいったといか、失敗したというか……」

センリは言葉をにごらせた。

「どっちよ?」

「完成して、実際に打ち上げてみたら、真上ではなく、斜めの校庭側に飛んでいったんだ」

 リードが解説をした。

「それって、大丈夫だったの?」

と、ミレは目を丸くしていった。

「平気ーだからー、まだ先生」

「なるほどね。すごいところね」

 もう小さくなった校舎を振り返って見つめていった。

「校庭って何?」

「学校内にある、庭だよ。また今度案内するよ」

「うん」

と、センリの言葉にリザは素直にうなずいた。

「それにしても、それでも先生が出来るのね」

「本当は教師じゃなくて、研究者になりたいようなんだが、親のあとをついでの建築士なんだ。その建築を教えている」

「建築士で爆薬が趣味の先生なんて、変わっているのね」

「あの学校で変わっていない人のほうが少ないよ。それぞれの専門を極めている人たちだからね」

センリが追加した。

「生徒にも変わっているのが多いけど」

「そういうもんなの?学校って」

リザが聞く。

「んーどうだろうー、他の学校ー行ったことないしー。ミレたちのところはー?」

 ライズが聞く。

「私たちのところは先生は三人しかいなくって、あとはパソコンによる授業だから。先生といっても近所の顔見知りだし。結構普通の人たちよ」

「ふーん、そっかー」

「ライズ、エファーリア地方までどのくらいかかる?」

「んー昼くらいにはつくよー」

「そうか」

と、言うとリードは目をつぶった。


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