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4.本当の想いを伝えます

「いやぁー、良かった良かった。これで俺も陛下も一安心できるってもんだ」


「お前に心配させた覚えはない」


「まぁまぁそう言うなって。


俺はこれから陛下の所へ行く用があるから俺が報告しておいてやるよ。だからお前達は色々話しておけよ。


ミリアリア嬢、こいつ無愛想だし厳しいしで人付き合い上手くないけどよろしく頼むな」


「おい!」


「はっはい!たくさんの助言を頂きありがとうございます」


盛大に眉間に皺を寄せた宰相様を残して大きく明るい声で笑いながら団長様は部屋を出ていきました。


「………まぁあいつが言っていたことは嘘ではない。


私は不必要に笑ったりしないし仕事に対して妥協しない、それで辞めていった人間は多くいる。


女だからという理由で容赦したりしないが本当にいいんだな?」


「もちろんです!まだ学ばなければならないことも至らない点も多くあると思いますが努力します。


宰相様の婚約者としても補佐官としても頑張りますので宜しくお願いいたします」


大きくお辞儀をしていたら頭上から小さな声がしました。


「………エドワードだ。宰相は役職であって私の名前ではない」


「はい!ではエドワード様とお呼びしてもよろしいでしょうか?


私の事はミリアリアとぜひ呼び捨てにして下さい」


お名前で呼んでいいなんて!嬉しくてつい口角が上がってしまいます。気持ち悪い顔になってなければ良いですが。


「わかった。ミリアリア、早速だがこれからのことを決めてしまおう。時間は大丈夫か?」


「父が友人と話している間に散策として出てきていたので、長い時間でなければ問題ありません。


ですが詳しいお話は後日の方がよろしいですよね?エドワード様も何か御用があったのではないのですか?」


「私がこちらに来た理由自体は無くなったが仕事はまだある。そうだな、取り急ぎ必要な事だけ決めてしまおう。


婚約を君の家に申し込むがすぐにして良いか?何か理由があれば遅らせるが」


「是非すぐにでもお願いいたします。エドワード様の気が変わらないうちにでも!父には本日帰りの馬車で話しておきます」



手にしたチャンスを逃せないとばかりに意気込んでしまいます。


「ここまで話しておいてやめることはない。私はそんな不誠実ではないつもりだ」


「…あっ、申し訳ありません。そんなつもりで言ったんではないんです!


その…こんな風に男の人を好きになったのが初めてで、その人と婚約できるなんて夢ではないかと思ってしまって。


現実で婚約の話が進んでいれば夢でないと実感できるかなと思ったのです。


失礼な言い方でした、本当に申し訳ありません」


婚約をすぐに申し込んでくれるというのが嬉しすぎて余計な事を言ってしまいました。


1度頭の中で話すことを整理してから口に出す様にしないとダメですね。


「………いや、こちらこそ責めるような言い方をした、すまない。私は人の感情を読むのが苦手らしい。


あいつ…バルトや陛下からも言われてはいるのだ。それで損をしていると」


「そうなのですね…


ふふ、エドワード様にも苦手なことはあるのですね。でしたら私は感情や思っていることをきちんと伝えるようにいたします。


何も言わずに察してもらおうとするだけではお互いにいい関係が築けるとは思えませんし、夫婦を目指すならなおさらです」


「そうか。


………ありがとう。私も君といい関係を築けたらと思うよ」


そう言ってエドワード様は微かにですが微笑まれました。


ほとんどの表情筋は動いていませんでしたが口角がほんのりと!ほんのりと上がったのです。


嬉しい気持ちともっと笑ってほしいという欲もでてきます。


恋とはこんなに激しく感情が揺さぶられるのですね、そう考えるとやはり元婚約者にはなんの感情も湧かなかったなと思いだしてしまいました。


「では、すぐに婚約を申し込む。明日にでも君のご両親にも挨拶に伺おうと思うのだが、その時に我が家への住み込みの話もしておこう。


我が家の準備はしておくから君の好きなタイミングで来ると良い」


「分かりました、ご迷惑でなければすぐにでもお願いしたく思います。


エドワード様に早く元気になってもらいたいですし、それに私が少しでも早くお傍にいたいです」


素直に口にするのは貴族としては良くないとされていますが公の場以外では積極的に気持ちを伝えるようにしましょう。


エドワード様に好意を持つ女性は多いのでその人達には負けられません。


「あ、あぁ分かった。後の事は君が我が家にきたら考えていこう。


ではとりあえずまた明日、君の家で」


「はい。明日はお待ちしております、エドワード様」


何故か最後の方はせかせかと出て行ってしまわれました。やはり仕事のことが気になっていたのでしょうか?


そういう点に気づける気配りもできるようにならないといけませんね。


1人でうんうんと頷きながら考えているとふと気づきました。



私この場所から勝手に帰っていいのかな?というか、ここからお父様の所にはどうやって帰ればいいのかしら?


それから慌てて周りに誰かいないか探したりして、暫くしてから私を探していた父と合流できました。





そして今はそわそわしている父と一緒に帰りの馬車の中です。


「ミリーや、大事な話とはなんだい?先にちょっとだけ教えてくれないか?」


「お母様にも一緒に話したいので帰ってからです」


「だが今後の仕事や環境についても関わってくると言われると気になるんだが」


「帰ってからです」


「ミリー…」


少し目をうるうるさせる父は年齢の割に可愛いんですよね。背も小さくて愛嬌のある雰囲気だから親しみがある。


だけどお仕事の時の真面目な顔はかっこよく見えて、そんなところが好きなんだと母が以前言っていました。


「悪いことではないので安心して下さい。それに先に話してしまったらお母様がすねますよ?」


「ううむ。だが言わなければ…」


「お父様は隠しきれません。


素直で正直なところがお父様の魅力ですがそのせいであんなやつに騙されていたことをお忘れですか?」


「そ、それは本当に申し訳なかった。ミリーの婿の為ならと疑いもせず援助してしまったのは間違いだった」


しゅんとして俯いてしまった父を見てふっと息を吐きます。


「もちろんお父様が私の為を想っていてくれた気持ちは分かりますし嬉しかったです。


それに私もお父様達の気持ちも確認せずに耐えていたのも良くなかったです。


今回はお互いにいい勉強だったと切り替えましょう?」


「ありがとう、ミリー」


「さぁお屋敷まであと少しです。今はお父様が王宮でご友人とどんなお話をされていたのか聞いたりしてもよいですか?


それかこの前話していた領地で実験を始めたあの件がどうなったかでもよいですし」


「あぁ、あの件か!実はあそこなんだがな…」





そうして2人で色んな話をしていると馬車が止まりました。


「あぁ、もう着いたのか。いつの間にか時間が経っていたようだな」


「そうですね。気になっていた話が聞けて良かったです」


馬車を降りて、門をくぐり、少し歩いて玄関を開けます。


すると玄関には先程の父と同じように…いや、それ以上にそわそわした母がいました。


そして私達の姿を見ると駆け寄ってきます。


「貴方!一体何が起きているの!?デュアル公爵家の封蠟が付いたお手紙が届いたのよ!」


「こっ、公爵家から?どういうことだ?我が家はあんな高位な方と関りなんかないぞ?」


「でも実際にお手紙がきているのですよ!我が家が何かしてしまったのかしら。どうしましょう!」


「と、とりあえず読むしかないだろう。なんの話か検討もつかんし」


「あのー………


私が検討つきます」


「は?」


「え?」


父と母が順番にこちらを振り返りながら呆けた顔をしています。


「お母様、ただいま帰りました」


「あら、まぁ、私ったら挨拶もしないで。


ミリーお帰りなさい、愛しい貴方も」


「あぁ、そうだな。ただいま愛しい妻よ。


して、ミリーや検討がつくとはどういうことだ?」


私の両親はいってきますとただいまの挨拶に必ず愛しいを付ける。本当にいつまでたっても仲がいいんだから。


「はい。私がお父様に言った重要な話に関わってくるのです。


ゆっくりお話ししたいので、まずはリビングにでも行きませんか?ディナーを…といいたい所ですがきっと落ち着かないですよね。


トーマス、軽くつまめるものかお菓子とお茶を用意してもらえる?」


両親が騒いでいる時からさりげなく後ろに控えてくれていた執事に声をかけます。


「かしこまりました。すぐにご用意しても?」


「そうね、2人とも気持ちが落ち着かないだろうからこのままリビングに行きます」


「では、すぐにご用意して参ります」


「えぇお願いします。ではお父様もお母様もこのまま一緒に行きましょう」


「あぁ分かった」


「分かりましたわ。トーマス、できればリラックスできる香りのいいお茶にしてちょうだい」


「かしこまりました奥様」


そして席についてからは手紙の内容が気になる母が早く見ようと迫るのを止めつつまずはお茶を飲んで一息つきました。


はぁー、落ち着くー。


私だって今日は色々ありましたからね…


気分が高揚していて気が付かなったけど、たった1日で私の人生が大きく変わりました。


政略結婚がダメになって、生涯独身を貫こうとして、好きな人ができて、その人と婚約できそうで…感慨深いものですね。


「ミリーや、1人で落ち着かないでくれ。


すまないがそろそろ話してくれないか?この手紙も話を聞いてからの方が良いのだろう?」


「そうよ、お茶を飲んでからというから待っていたのよ?


1人だけそんなに落ち着いていないで母様達にもどうしたら公爵家から手紙が届くのか教えてちょうだい」


2人もお茶は飲んだけど落ち着けてはいなかったみたいです。そりゃそうですよね。


「まず、お父様と一緒に王宮へ文官の方に話を聞きにいった、ここまではお母様も知っていますよね?」


「えぇ。貴方がもう結婚をあきらめて働きに出ると言いましたからね」


「そうです。私もそのつもりでお話を伺って、良い方向の回答を頂けました。


そしてお父様とご友人で話があるというので庭の散策をさせてもらっていたのです」


「そうだ、そして全然戻ってこないミリーを庭へ探しに行っていたら騎士の方と一緒に戻ってきたんだ」


「そうですね。あの騎士の方は親切に道に迷っていた私を元の場所まで案内してくれたのです」


本当に助かりました。あの時あの方に出会えていなかったら私は未だに迷子です。


父が考えながら聞いてきます。


「庭の散策をしていたんだろう?どうして迷子になったんだ?あの時来たのも庭がある方向とは違ったが」


「あぁそれは、騎士団長の執務室に行っていたからですね」


「ん?騎士団長の執務室?」


「え?どういうことかしら??」


2人は意味が分からないというように首をかしげています。

そうでしょうそうでしょう、普通ならそんな状況になりえないですからね。


「詳しく話すと時間が足りないのでかいつまんで話しますね。


まず、騎士団長様に出会って執務室に連れていかれました。


婚約破棄の件をご存じで、それで私に頼みたいことがあるとのことでした」


2人とも訳は分からないながらもとりあえず頷いてくれています。


「その頼みごととは団長様の親友の婚約者になって欲しいというものでした。


その方は仕事が忙しく体調も崩されているので支えてほしいと」


2人は理解が追い付かなくなってきたのか何も言わずに目を見開いてただこちらを見つめているので続けます。


「そしてその親友というのがこの国の宰相をされているエドワード・デュアル様でした。


一度そこで私は無理だ、身分も釣り合わないとお断りしていたのですが、そこにご本人が現れたのです。










………そして私はエドワード様を一目見た瞬間、恋に落ちてしまいました」


「「こ、恋?」」


「そうなのです!素敵な方だというのは噂で知っていましたが直接お会いしてみたらそれ以上だったんです。


元婚約者が真実の愛がどうとか言って浮気しておりましたが今ならほんの少しだけ気持ちも分かります。


もちろん、もっとやりようがあったと思いますし許せるはずもないんですけど。


本気で人を好きになるということだけは初めて理解できました」


父の目をしっかりと見つめて自分の気持ちを伝えます。


「今まであえて言っていませんでしたが私はナルキス様に恋をしてはいませんでした。


あくまでも政略結婚の相手であって好きも嫌いもなかったのです。


だから浮気をされていることを知った時も対処しなかったんです。それからあまりにも酷い状況になってきてやっと嫌いと思う様になったんです。


それくらい私には人を好きになるということが分からなかったんです」


「そんな風に思っていたんだな…


私は良かれと思ってあんなやつをミリーの婚約者に選んでしまった。娘の本当の気持ちにも気づかないでなんてひどい親だ」


父は目元に手を当て俯いてしまいました。母もそんな父に寄り添い悲しい顔をしています。


「お父様とお母様のような関係に憧れていた頃もありましたが私は諦めてしまいました。


だけど今また、今度こそ目指してみたいと思えたのです。


あの婚約破棄があったからこそ、こうして普通ではありえないご縁ができたのです。


お父様、あちらの有責とはいえ話し合いなど大変でしたでしょう?私の為にありがとうございます」


頭をしっかりと下げてから顔をあげ、両親に笑顔を見せます。


「そのお手紙は婚約の申込のはずです。どうか受けてはもらえませんか?


私が望んでいるもので、お父様とお母様のように愛し合った関係を目指しますし、もっといい関係をエドワード様と築いてみせます」


「………そうか、本当にミリーの意思なのだな?依頼を受けて我が家の為とかだったらそんなことしなくていい、私がなんとかしてみせる。


もうお前に気持ちをおさえさせたりせん」


「ありがとうお父様、でも本当に私の意志なの。


きっとエドワード様が私の最初で最後の恋する相手だと思う」


母には父とのなれそめを聞いたりしたこともありますが、父とはこういう話をしたことがないので少し恥ずかしくて照れちゃいます。なんか体が熱い気もしてきました。


「貴方、ミリーが感じたこの縁を信じてみても良いのではないでしょうか。貴方が私に求婚してきた時も貴方の一目ぼれからでしょう?


確かに困難におちいった時もありましたが今こうして私達は可愛い娘もいてとても幸せですわ。


どんな形であれ、相手を想う気持ちがなければ幸せはやってきません」


「そうだな、私達も周りから反対されたり、最初は君に冷たくされたりと色々あったな。


それでも今、こうして家族で笑って話せている。




………そうだな、ミリーが望んでいるのなら私達は反対などせんよ。


ただ1つ、困ったりどうしようもなくなった時はいつでも私達を頼ること。それだけは譲れないからね」


「そうよ、貴方の為なら公爵家にだって乗り込んでやりますからね」


両親の温かい言葉に涙が出そうになりますがグッとこらえて笑います。しめっぽいのは我が家には似合わないので。


「それはそうと私、お母様が最初は冷たかった話なんて聞いたことがないです。どうしてだったんですか?」


「あら~、あれはまぁ、いろいろと、ね?」


「あの時の母さんはなぁ…「貴方!」


「えー、聞きたいから止めないで下さいお母様」


こうして和やかに家族の会話を楽しんでしまい、しばらく経ったのちに思い出したように手紙を開けました。


明日、エドワード様が挨拶にくるというのを読んで驚愕した両親に知っていたのなら早く言いなさい!


…と怒られつつ大慌てで準備に奔走することになりました。

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