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3.恋って本当に胸が騒ぐのね

「よ、よめってあの嫁ですか?」


「あのが何の事を言ってるか分からんが多分そうだろう、だが相性などもあるしな。まずは婚約者でどうだろう?」


「なんでそんなお話になるんですか!誰かを休ませたいとか私の魔法が必要だとかそんなお話だったと思うのですが」


「君の魔法はその場で寝てしまうんだろう?そうなるとあいつも立場もあるからどこでも、という訳にもいかないからな、婚約者なら家に行っても問題ないだろう?


あぁ、だが寝かせてから夜に帰るのも大変だろうから花嫁修業という名目で住むのもいいな…」


考えながら不吉なことをおっしゃる団長様。


「無理です無理です無理です」


「大丈夫だ。君なら適任だと思う。俺の直感はあたるんだ」


「ただでさえ私は浮気されて婚約破棄された女なんですよ!?


それが宰相様のお嫁さんなんて無理に決まってます!というか宰相様のってどういうことですか!?」


今更ながらに自分の言葉で驚きました。そういえば団長様は我が親友にしてこの国の宰相の…と言っていた。




この国の宰相様といえば、団長様と並んで陛下の最側近として有名です。


圧倒的な強さを誇りつつ人情に厚い団長様と

数々の画期的な政策をうちだす冷静沈着な宰相様は

炎と氷の騎士と呼ばれているとか。


お2人ともタイプは違いますがカッコ良いですしね…か、考えていたら少し落ち着いてきました。


そんな宰相様の嫁に私が、なんてありえるわけないですし。


「確かに宰相をしているがあいつ自身は次男で実家の公爵家を継ぐわけではないから家格などは気にしなくて良いし。


婚約破棄も君の言う通り浮気されて、つまり相手に有責だったのだから問題ない。


それで君を傷物として見る奴らがいるのも確かだが、そんな事で見方を変えるやつじゃないさ」


「いえ、家格がどうのとかそういう問題だけではなくて私じゃ相応しくないというか、釣り合わないとか…」


自分で言っていて悲しくなりますがそれが事実、私みたいなちっぽけな令嬢じゃ隣に立つのもおこがましいです。



宰相様といえばご令嬢達がキャーキャー言っている位カッコよくて、陛下から信頼される位仕事ができて、次男とはいいますが公爵家のご出身。


なぜ未だにご結婚されていないのか不思議な位です。


他国の美しいと有名な王女様からも求婚されたことがあると噂で聞いたこともあるくらいですし。


「これはただの俺の直感だから理由がある訳ではないんだが…


君ならあいつとも上手くやれると思う。大丈夫だ」


「大丈夫と言われましても…そもそもこのお話を宰相様は知っておられるのですか?


普通に考えたら受け入れてもらえるとは思いませんし」


「まだ話してはいないな。だがあいつもそろそろ結婚した方が良い。


ずっと陛下からも言われているし、君ならあいつを支えてくれる気がする。


だから頼む!あいつの嫁に来てくれないか?」


そう言って団長様に手を握られます。ひぇ、顔がいい人のドアップは心臓に悪い。


ついつい頷きそうになって困る。


この状況をどうしたらいいのか困っていると別の方向から声がかかりました。



「こんな所で浮気とはいい身分だな。ベロニカ嬢にまた叩き出されるぞ」


「ちが…」


浮気!?とは聞き捨てならない。


確かにこの状況を外から見たらそう見えるかもだけどあの最低男と同じことをしたと思われるのは嫌だ。


違います!と反論しようと団長様の手を振り払い、後ろを振り返りましたが声がでません。


そこにはとてつもなく魅力的な男性がいたのです。




元は青みがかった銀髪であっただろう今は少しパサついてくすんで見える髪、目の下の隈は濃く、少し頬もこけている。


肌や唇も潤いがなくパサついてすらいるかも。


寝てないからなのか今怒っているからなのか分からないがするどすぎる目つき。


全身から疲れているのが伝わってくるほどなのに、ピシッとした背筋。


声にはちゃんと力があり耳にちょうどよい低音。




なんでだろう。この人を見ていると癒してあげたいという気持ち、母性本能?みたいなものが溢れてくる。

まだ出産経験はないから、ないはずですけど。


とにかくこの人が愛おしい。傍にいたい、必要とされたい。こんな感情初めて…


ポケーっとその人を見つめちゃいますが、開いてしまっていた口は慌てて閉じます。


「まさか、俺が浮気などするはずがないだろう?俺が愛するのは生涯ベロニカただ1人だ」


「防音の魔道具をかけた部屋で若い女性と、見つめ合いながら手を握り合っていたら誰でもそう思うだろう」


「いや、ちょうどいい所に本人が来てくれた。お前の婚約者になってくれと頼んでいたんだ」


「はぁ…




お前は馬鹿か?自分が何を言っているかちゃんと理解しているのか」


「まぁお前よりは馬鹿だとは思うけどな?


だけどこの件に関しては本気だ。この子ならお前を安心して任せられる」


その後もお2人での会話は進みますが、私は自分の後ろにいる方、会話から察するに宰相様であろうお方をじっくり見つめます。


評判になるほどのカッコよさ、確かに分かります。


眠れていないのが原因か哀愁漂うというか色気もすごいのです。


先程からずっと心臓がドキドキしていて他の音が聞こえない位です。


この人のお嫁さんを薦められたのか…釣り合わないと思う、会って余計にそう思います。


…だけど


「お嬢さんもこんな馬鹿の話に付き合う必要はない。迷惑をかけたな」


そう言って深い森のような濃い目のグリーンの瞳に見つめられながら声をかけられた瞬間、覚悟が決まりました。


「私を貴方様のお嫁さんにしてください!」


「………は?なにをい…」


「私じゃ貴方様に釣り合わないのも、迷惑になるかもしれないのも理解しています。だけどそれでも貴方様を一目見て恋をしました。


何も知らないくせに何を言っているんだこの小娘は、とお思いかもしれません。


その通りです、だからこそもっと知りたいのです。私にチャンスをくださいませんか!?」


「いや…」


「1度婚約破棄されたことのある身ですので、貴方様が合わないと思った時には婚約を破棄して下さい。もちろんそうならないように努力します。


傍にいることを許してもらえるように役に立ってみせます!ですので軽い気持ちでとりあえず婚約して下さいませんか?」


胸の前で手を組んで必死にお願いします。


女性としては少々高めの私の身長でも見上げる形になる位に背も高くていらっしゃる。それに腰の位置が高いということは足も長いのだろう。


ますます好きな所が増えていきます。


「とりあえずとは…


君が1度そういう経験をしているのならそう考えてしまうのも無理はないが、婚約とは契約の一種で本来気軽に解消や破棄などしていいものではないんだ」


「もちろんです。私は結婚までしたいと考えておりますので問題ありません。


ただ、貴方様の負担になりたくはないので逃げ道ではないですが選択肢はあるということだけは頭においておいて欲しいのです」


「…ふー、君がちゃんと考えていることは分かった。


だが私はこの年になるまで結婚したいと思ったことがないからこうして今も1人なんだ。


そういう話が全く無かった訳でない、私が結婚というものに魅力を感じていない」


「私も結婚に夢をみているわけではありません。元婚約者との未来を考えていた時も愛されて養ってもらいたいとかではなく、領地を守る為位にしか考えておりませんでした。


私が今、貴方様との結婚を望んでいるのはただお傍にいて支えて差し上げたいという気持ちだけでございます。


こんな感情を持つのは初めてなので私はもっとこの気持ちを知りたいのです」


「………」


何も言わないのは否定の言葉を選んでいるのか、それとも少しでも迷ってくれているのか。


もうここはたたみかけるしかない!


「私は成人したばかりなので、体力には自信があります。明るいことが取り柄だと言われてるので貴方様を暗い気持ちにはさせませんし、打たれ強いのでめげずに食らいついていく根性はあります。


父の手伝いをしておりましたので書類整理などでしたらお役にたてる場面もあるかと思いますし、掃除も得意です。


お茶を入れるのも…できはしますが普通なのでおいしく入れられるように練習します!」


宰相様は無言で眉間にしわをよせておられます。やはり私なんかじゃダメでしょうか…




「ほらどうだ?こんなにけなげにお前を想ってくれてるみたいだぞ?


俺から頼んだ時は無理だとしか言わなかったのにお前に会ったらいきなりこうなったんだ。


お前の肩書とかそういうのになびいた訳じゃない。本当に一目ぼれってことだろうな」


団長様が笑いながら援護してくれています。必死にその言葉に頭を縦に振って同意を示します。


「………


まだ君は若い、これからいい人にめぐり合うチャンスはあるだろう。だから…」


「ないです!婚約破棄されたのでもう結婚はあきらめて生涯独身のまま王宮で働こうかと思っていたのです。




だから、だから…


私が生理的に無理だとか、容姿が好みじゃないからとか、傍にいるのが耐えられないとかじゃなかったら…」


言っていて泣きたくなってきてしまいました。こんなに嫌がられているのに自分の気持ちを押し付けるなんて…


手を握りしめて涙は何とか堪えられました。


「君の覚悟は分かった。










………そこまで考えて想いを伝えてくれたんだ、私もきちんと君に向き合うことにしよう」


「え…」


「正直、今君を完全に信用できてはいない。


私は冷たいらしいから君を傷つける言葉を言うこともあるだろう。君が若いから、女性だからと遠慮することもしない。それでもいいか?」


こちらを見る目や言葉は確かに冷たく感じる。


ただその瞳には本当にいいのか?と問いかけるような優しさもあると私には思える。


「っはい!」


「こいつの提案だと我が家に花嫁修業という名目で住みこむという話だったが」


「ご迷惑でなければお願いいたします!」


「君の能力もこいつにざっと聞いた。本来なら聞くべきではないが、自分に使われるというのであればできれば詳細を聞きたい。良いか?」


「詳細をお伝えするのもかまいませんし、魔法を使う際には必ず先に使うとお伝えします」


「文官を希望していたと言っていたな。


私の補佐官もやってみるか?正式ではない簡易的なものであるし、他の者と同じように使えなければすぐに辞めてもらうが」


「はい!お役に立てるよう頑張ります!」



嬉しい!こんなことって本当にあるのね。初めて好きになった人の婚約者になれて、やってみたいと思ったお仕事もできる。


元婚約者のおかげとは思わないけどあの日あの時あの場で浮気してくれてよかった。


全てがこのめぐりあわせの為だったのかしらとも思えてきた。






「…」


「なんともまぁ、嬉しそうな表情しちゃって。どうだ?俺の直感もいい仕事するだろ?」


「…まだ分からんだろう」


「まだ…な?」


浮かれて話を聞いていなかったと慌てて思考を戻すとニヤリとした団長様とますます眉間に皺を寄せた宰相様がいます。


なんのお話をされていたのでしょう?


「とまぁ、お互いの了承も得られた事だしこれで2人は婚約するということだな!


ミリアリア嬢、こいつのことよろしく頼む。


それで心構えとか伝えたいことがあってだな…」


そうして団長様から色々とアドバイスを頂きました。


宰相様を狙っていた女性やお仕事関係で邪魔をしようとしてくる貴族の方などの人間関係。


これから必要になってくるであろう知識は何かなど、とても勉強になります。


正直な話、私との婚約は周りからはどちらかというと歓迎されないだろうとのこと。


妬みや恨みなど多くの悪い感情にさらされるだろうから、いつでも自分を頼ってもらっていいともおっしゃってくださいました。団長様には感謝してもしきれません。


少しでも恩に報いる為にも宰相様の役にたってみせます。頑張ろう!!









(宰相side)

あいつが執務室に女を連れ込んだという連絡が入って、まさかと思いつつもとりあえず確認の為に来てみれば本当だった。


その上、手を握りしめているではないか。


相手の女性の顔は見えないがかなり若い、こんなことがベロニカ嬢にバレでもしたら大事だ。絶対に私にまでとばっちりがくる。あいつの嫁になるだけあって豪胆な方だからな。


そして奇行をとめて話を聞いてみれば俺の婚約者だと?こいつはついに頭まで筋肉になったのか、と思いつつも更に詳しく聞く。


すると彼女が最近王宮のパーティーであった事件の被害者…話の感じだと実行犯?でもあったみたいだがその人だという。


そして婚約うんぬんの話も俺が最近睡眠を取れていないのを心配してのことらしい。


確かに睡眠不足がたたったせいか、ここ数日は仕事でミスをしてしまいそうになって驚愕した覚えもある。


眠ろうとしても色々と考えが頭をめぐってしまい眠れない、という今の状況は私もなんとかしたいとは思っていた。


だがしかしその為に婚約というのは…


こちらを見ている令嬢の顔を見れば少し口が開いている。




慌てて閉じたな。



こちらを見る瞳はキラキラとしていて何故かむずがゆくなる。


俺を狙ってくる女達とはどこか違う種類の視線だな、どちらかというと新人騎士が団長であるこいつの剣捌きを見ているのと似ている気がする。


「私を貴方様のお嫁さんにして下さい!」


予想だにしない発言に困惑していると、更に言葉をつのってくる。


諭してもみたが効果はなく距離もつめてくる。いつもは不快に感じるその行為も強く握りしめて白くなっている手を見ていたらそうは思わなかった。


だから本音を、結婚に興味がないことも伝えた。それでも彼女はいいと、自分の考えを言ってくる。


今まで言い寄ってきた女達とは何か違う、と感じたが改めて彼女を見てその若さにひるんだ。


父と子と思われてもおかしくない年齢差、どう考えてもダメだろ。


あいつからの援護の言葉。


それは分かっているが…

彼女の必死な様子に断りづらさはあるがそれでも否定した。


そうしたら彼女の大きなやわらかい桃色の瞳に涙の幕がはってしまった。


必死に流さないように努める姿に胸が痛む。こんなこと今までは無かったのだが…



今ここで断った方が良い気はする。それでも無理だと言おうとしたが口から出たのは全く逆の言葉だった。


自分でも自分の発言に驚き、更に色々と言ってしまった。


一体私は何を…


結果、婚約者として我が家に招き、尚且つ俺の補佐管としても傍におくことが決定してしまった。


彼女の顔は喜びにあふれ、犬が興奮しているがごとく激しく降る、ないはずの尻尾が見える。


あいつがニヤニヤとしながら声をかけてくる、本当に腹が立つ顔だ。


確かに聞いた感じだと彼女の固有魔法はすごく有用そうではあるし、今までまとわりついてきた女達のようにはならないのではと期待はもてる。


そしてあいつがアドバイスと称して色々話しているが、なぜ俺ではなくあいつが私の家での注意事項を話しているのか疑問だ。


…まぁ彼女は真剣に聞いているからいいのか。あいつが無駄な知識を植え付けていなければ良いが。


あいつの直感を信じる訳ではないが、面倒くさいことにだけはならないでくれれば流れに身を任せてみるのも一興か。

初日投稿は3話でした。お読みくださった方はありがとうございました!

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