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21.何かが起こるのがパーティです

実家に帰って、いい女になる特訓に精を出していた頃、エドワード様の元に王宮からまたパーティの招待状が届いたそうです。


今回もお断りすることが難しく一緒に参加してほしい、とエドワード様からお手紙が届きました。


もちろんですと返答し、当日はお父様達も招待されていることから会場に入る前に落ち合う運びとなりました。


「みんな、また協力お願いね」


「もちろんですお嬢様。会場の男性達の目を全てくぎ付けにしてしまいましょう」


「ふふっ、それは難しいかもだけど…そうね、それくらいの意気込みで頑張るわ」


エドワード様のお家に移動する前のことを思いだします。あの時も大人っぽくなりたいという私の願いに屋敷中のみんなが協力してくれました。


私はたくさんの人に支えられている。お父様やお母様、それに使用人のみんな、それにエドワード様。こんなに味方がいるのですもの、怖くないわ。


きっと前回よりも色々と噂がたてられていることでしょう。ですが私は堂々と、エドワード様の横で微笑んでみせましょう。


どんな女性が来ても負けません、私が婚約者なんですから。






心新たに最大限に気合をいれた当日、会場前でエドワード様を待ちます。爵位が低い者からの入場の為にお父様達はすでに先に会場入りされています。


お仕事の都合上、どうしても時間ギリギリになってしまうとは連絡を頂いていましたが、こうして1人で待っている時間が続くと緊張が増してきます。


早く…


早くエドワード様にお会いしたい。


「ミリアリア?」


待ち望んでいた瞬間…!



とはなりませんでした。私に声をかけてきたのはナルキスだったのです。なぜここに…とも思いましたがきっとあの公爵令嬢と一緒に入場する為でしょう。


思案していただけなのですが無視されたと思ったのか、腕を掴まれました。


「おい!聞いてるのか」


「離してください。ご令嬢を待っているのでしょう?誤解されたくありませんし、話しかけないでいただけると助かります」


「誤解って…別にただ話しているだけだろう」


「貴方と仲が良いと私が思われたくありません。


私はもう新しく婚約した方がいるのです。貴方のように婚約者に迷惑をかけるような行動は少しでもしたくないです」


離してくれないので腕を振って振り払います。


「迷惑って…」


「以前、街ですれ違った時も話しかけてきましたよね?もう私と貴方は何の関係もございませんので今後はただの顔見知りです。


ですのでまず、名前で呼ぶのもやめてください」


ナルキスは驚いたような表情をした後、なぜか急にニヤニヤとし始めました。


「あぁそういうことか。嫉妬してそんなこと言ってるんだな?」


「……はぁ?」


「俺がお前じゃなくて彼女を好きになってしまったことにすねているんだろう?前のお前なら俺にふさわしいと思えなかったけど今なら、まぁ…」


そんなよく分からないことをほざきながらまた手を伸ばしてきます。


ここは護身術の特訓の成果を発揮するべきか!と思いつつ、折角着飾ったドレスを乱したくないと躊躇してしまい、ただ身を引くくらいしかできませんでした。


すると後ろからぐっと誰かに抱き寄せられます。それは当然…


「また君か、私の婚約者に何か用か?」


「エドワード様!!」


エドワード様は私を自分の後ろへと隠しつつあいつから遠ざけてくれます。


「いや、俺たちは婚約して…」


「それは過去のことだろう?今、彼女と婚約しているのは私だ」


「別にちょっと話をしていただけなんですから…」


「では触れる必要はないだろう。

それに彼女の反応を見て嫌がっていることに気が付かなかった訳ではあるまい」


「そんなこと」


エドワード様はただまっとうなことをおっしゃっているのになぜか食い下がってきます。本当に何がしたいのか、とあきれていたらある意味で待ち人、きたるです。


「ナルキス?なんでこんなところにいるのよ!私に探させるなんて」


公爵家のご令嬢は恐らく指定していた場所に彼がいなかったことにご立腹の様子。わいわいと騒いでくれたおかげで離れることができました。


「俺が待たせたせいで絡まれてしまったな、すまない」


「いえ、あれはあいつがおかしいんです!なんで今更私に絡んでくるのでしょう」


「………


美しくなった君を見て、惜しくなったんだろう」


「え?」


今、美しくなった、とおっしゃいましたか!?え、えぇ?言われた言葉に驚いて少しぽかんとしていたのでしょう。エドワード様が珍しく声に出して笑います。


「くくっ、懐かしいな。君と初めて会ったあの日も君はそんな風に口をあけてこちらを見ていた。


その、なんといったらよいのか分からんが、とても綺麗だ。俺が贈ったドレスを着てくれたんだな、とても似合っている」


「…嬉しいです。


その、もちろんドレスを頂いたこともですが、褒めてくださってありがとうございます。エドワード様もいつもかっこいいですが今日は更に素敵です」


「ありがとう。君がいなくなってからも怒られないようにきちんと体調管理はしていたからな。




………だが、君がいないのにはまだ慣れていない、から。


今日からもうこっちに戻ってくるんだろう?」


「はい、荷物などは馬車で運んでもらっているので。今日はこのまま一緒に帰らさせていただきたいです」


「そうか」


ふわっと笑うそのお顔、最近は私によく見せてくださいますよね。

自惚れなのかもしれませんが、だとしても、貴方も私を…と思ってもよいのでしょうか?


問いかけるように彼の目を見つめますが、もちろん伝わりません。


「どうかしたか?」


「いえ、何でもありません。そろそろエドワード様もご入場でしょうか?」


「そうだな、行こうか。ではどうぞこちらに」


スマートなエスコートで会場へと足を踏み入れます。

前回と同様、入った瞬間からずっとたくさんの視線にさらされます。


ですが以前よりは緊張はしていません。2度目ということもありますが私には譲れない思いがありますもの。


堂々とエドワード様の隣に立つ、それだけが私がやるべきことです。ただそれだけを胸に。


宰相でもあるエドワード様にはひっきりなしにお声がかかります。今回は陛下からの呼び出しがない為、私と一緒にいてくださっています。


時節、私も話に混ざることがあります。私達で普及させた書式のことだったり、それぞれの領地のことだったりと。


私なりの意見や考えを述べると、感心してさらに詳しく話しをしてくださる方も多くいます。

さすが宰相と話せるレベルの方達は噂話などではなく有意義な時間のつかい方をしてくださいますね。


「いやぁ、素晴らしい方で!エドワード卿は女性との噂が一切ないので私も気になっていたことがありますが、こんな素晴らしいお嬢さんがいたとは」


「えぇ、私も良き縁に恵まれたと感謝しております。彼女の協力もあって大きな改革も進められました」


「あの文書ですな?あれはたしかに良い。我が財務部でもすぐに取り入れましたところ文官達のミスも減りまして大助かりです」


「あれは…」


「うちの部でも…」


「いやいやっきっと…」


周囲にいた方も参加して大きな輪みたいになってしまいました。今までよりも余計に目立つのかその更に周りにいる人達の視線が集まります。


その中の1部にこちらをにやにやとした表情で見ている方がいらっしゃいます。私と目が合ったのが分かると近づいてきました。


「おうおう、またやってんな。お前らの周りは騒がしいからすぐにどこにいるか分かるわ」


エドワード様が囲まれているからか私の方に話しかけてくださいました。


「エドワード様のお立場もありますもの」


「今までは誰も近づかなかったぞ?常に無表情で近づくなってオーラだしてたからな。今は嬢ちゃんのおかげでとっつきやすくなったんだろ」


「そんなことないと思いますけど?最初から優しかったですし」


「それはお嬢ちゃん…って、まぁこれはいいか。それよりもお嬢ちゃんに伝えたいことがあってだな」


団長様のお話をうかがおうとした瞬間のことでした。


「なんで貴方のような女が!エドワード・デュアル様やバルト・ロメル様と一緒にいるのよ!」


「?」


何事?と思ったら、ナルキスを連れた公爵令嬢がこちらに、というより私に怒りをあらわにしてきます。


「聞いているの!?なんであんなみたいなナルキスに捨てられた女がお2人といるのよ!不釣り合いだからさっさとどこかいきなさいよ」


「………」


爵位が上の方からは許しがない限り話してはならない、という常識があるのでお言葉を返せません。彼女の言葉は問いかけでもないですし。


私に無視されていると思ったのか更に色々言ってくるご令嬢。団長様が間にたってくれようとした時でした。


「こんなに可愛げない女だから捨てられるのよ!以前も差し上げたけどあなたにはこれがお似合いよ!」


バシャッ!


そういって彼女は手に持っていたジュースを私の胸元にかけました。


その場の雰囲気は凍り、誰もが信じられない…といった表情になっています。この様子に気づいたエドワード様がすぐに私を隠すように抱きしめてくれようとしたので、手でその動きを止めます。


「ミリ…」


「エドワード様、大丈夫ですわ。


………皆様、晴れやかなこのような場を騒がせてしまい申し訳ありませんでした」


ゆっくりとその場に向けてカーテシーをして、顔を上げてにっこりと微笑みます。


「このような恰好では場を乱してしまいますので下がらせていただければと存じます。本日はありがとうございました。


エドワード様、少し早いですが帰りましょう」


「あぁ。


すまない、後を頼めるかバルト」


「もちろんだ。ミリアリア嬢、俺がそばにいたのに申し訳ない」


「バルト様に責は一切ございませんでしょう?お話の途中で下がることお許しください。ぜひまたお話の続きができれば幸いです」


そんなこんなで会場を後にした私達はすぐに馬車で岐路につきました。


「なんてことだ。また大事な場面で傍にいないなんて本当にふがいない」


「そんなにご自分を責めないでください。悪いのは彼女、またはそのご機嫌を損ねた私くらいですわ」


「君に悪い点何てなかっただろう!」


「常識を優先するよりも彼女の言葉に答えてしまう方がよかったかもしれません。少し判断を見誤ってしまいましたね」


ああいう人の話を聞かないタイプには正論は通じませんからね。エスコート役もあいつだったから期待なんてできないし。


私のことはまぁ良いんです。


「そんなことよりもこのドレスの染み…落ちますかね?折角エドワード様が選んでくださったのに。大事にとっておこうと思ったんです」


「………はぁ、君は優しすぎる。もっと怒っても良いんだ。


ドレスはまた君に似合いそうなものを贈る」


「怒る…

うーん、怒ってはいますよ?ドレスのこともそうですし、折角気合入れてきたのに台無しにされちゃいましたし。


それよりも私のせいでエドワード様がお辛さそうな顔をさせる方が悲しいです」


向かい合わせの彼の頬に手を伸ばします。


「エドワード様は優しいので」


頬に手を当てるとジュースをかけられた私よりも冷たい気がします。きっと色々考えてご自身を責めていらっしゃるのでしょう。


心配ないですよ!という気持ちを込めて全力の笑顔を見せます。


するとエドワード様は私の手にご自分の手を重ねて、ぎゅっと握りしめます。


「ありがとう。こんなに情けなくて申し訳ない。


だが君の暖かい言葉のおかげで少し落ち着いたよ」


「「………」」


2人とも無言になるとジッと見つめ合います。すると、少しですが掴まれた手に力が籠められます。


そして、ゆっくりと顔が近づいてきます。


………


……



ガタンッ!!


もう少しで…!というところで馬車が大きく揺れ、驚いてお互いに離れてしまいました。なんてこと!?今のは完全にチャンスだったのに!!


「………すまない」


「い、いえっ!」


気の利いた返しもできなくて、そのせいでそこからは2人で無言になってしまいました。あぁ、ここでうまく話せたらもう1度、となったかもしれないのに!!


心の中でうなっていると家についてしまい、なおかつエドワード様から今日は先に寝ていてくれと言われてしまいました。


久しぶりだから一緒に、と言いたかったのですがダンを連れて部屋に下がって行かれるのを見送るしかできませんでした。


私の意気地なし…


今日は諦めて1人で寝ますか。


明日からも一緒にいられるので今日は1人で反省会といきましょう。





そんな楽観的に考えていた私はまだ知らなかったのです。今日を境にエドワード様から一切部屋にいれてもらえなくなるなんて…

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