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13.後悔と償い

元婚約者のせいで余韻に浸ることもなく終わってしまった昨日のデート。

帰宅後はお医者様に手首を見てもらって…あいつの家に抗議文を送る等の話しをしたりして…と、あっという間に時間が過ぎました。


今日はやることがあってまだ寝ないから…と言われてしまってエドワード様へのおやすみもなしに。


ダンも部屋にいてにっこりと見送られたので今日は寝るのが遅くなってもしょうがないということでしょう。

ダンはたとえエドワード様相手でもちゃんと意見できますからね。


なので早く寝た私はいつもよりも早く起きてしまいました。

訓練場に向かうとすでにアルトは来ていたので昨日の話をかいつまんでして、今日からは護身術も教えてもらうことになりました。


逃げるための脚力づくりは続けつつも手を掴まれた時、後ろから羽交い絞めにされた時、複数人に囲まれた時…と様々なパターンの危機を想定して対処法を学びました。


「こっちの手をこうする…っと、あっ、簡単に手が外れますね!」


「関節には可動できる範囲があるのでそれに反する動きをされると離すしかなくなるでしょう。

ご令嬢の力で勝てる相手はほぼいないと言ってよいので、相手の力を利用したりする方向でいきましょう」


「はい、よろしくお願いします!」


それから何時間か練習すると、他の騎士さん達も集まってきたので訓練開始前に私はお暇することにしました。訓練の邪魔になってはいけないですからね。


技術だけでいうならいくつか覚えられましたが反射レベルでできるように、復習と反復練習をせねばなりません。またあいつに会うかもしれないですしね。


…そういえば、なんであいつはあんな風に絡んできたのでしょうか?

私との婚約がなくなったことですし、愛するあの方と堂々といられるようになって良かったはずでは?


それになんだかかっこ悪くなったような?いえ、元からかっこいいと思ったこともないですけど。

それとも最近はエドワード様を毎日見ているから私の目の判断基準が変わってしまった可能性もありますね。


そんな何でもないようなことを考えつつ朝の訓練を終えた私は部屋に帰りました。







(エドワードsaid)

ミリアリアと出かけることになり、自分なりに色々と計画を立てていたのが元婚約者に出会ってしまったことで予定外の事態に陥ってしまった。


けがをさせてしまったのも私がそばを離れてしまったこと、護衛をつれていかなかったことが原因であり後悔しかない。


宰相となり仕事が忙しくなってからというもの出かけることもなくなり、実際に街に足を運ぶのも久しぶりだったこともあるだろう。

そこに女性と共にというのも久しぶ…?初めてでは…?ない気がするが。


とまぁ、私のせいでミリアリアに不快な思いをさせてしまったことが悔やまれる。事前の準備不足が原因と考えられるからもっと情報を精査せねばならない。


その筆頭として、まずはミリアリアの元婚約者でもあるナルキス・コーナーについての現状を調べた。

ダンにも昨日の出来事を共有すれば今までにない速さで情報を集めてくれた。


普段なら睡眠を優先しろと言われる所を本人でさえミリアリア優先だった。

それほどにダンをはじめとした使用人たちに好まれている彼女が来てくれて本当にありがたさしかないな。


「旦那様?」


「あぁ、すまない。この情報を見るに…奴はまだミリアリアにちょっかいをかけてきそうだな」


調査結果に目を落とすと元婚約者が婚約破棄となってからの出来事が書いてある。

どこの誰と会ってどんな会話をしたかまでの詳細な情報の中には胸糞悪い話がいくつもある。

が、1番信じられない点は奴がまたミリアリアとの婚約をすると周囲にもらしていることだ。


「周囲もそこまで馬鹿だとは思わないが、彼女と再度婚約するなどと思ってるのが煩わしいな」


「そうですな。お嬢様はすでにデュアル公爵家、ひいては旦那様に必要不可欠な存在であるといいますのに」


「………」


「ほっほ、否定しませんな」


「お前のからかいにいちいち反論しても意味がないからな」


指で机を叩き場の空気を変える。


「してお前はこれを見てどう思う」


「厄介な存在…ですね。

まず、お嬢様との婚約破棄を行ったことで父親からは勘当を宣言されたご様子。しかし母親から公爵家とのつながりをもてた事実の後押しがあって保留にはなっている。


しかし生家はご長男が継ぐために公爵家のご令嬢と婚姻できなければ貴族でいられなくなる可能性が大きくなりました。


父親からそれを示唆されたために本人も自分の危うい状況にそこで気づいた様子」


俺も同じような感想を抱いたので頷く。


「そして公爵家のご令嬢との関係はひどく曖昧な状態ですな。あちらのご令嬢はかなり奔放にお育ちになられた様子」


「そうだな、簡単な調査でも派手な交友関係がすぐに分かった。

社交が解禁されて広い世界に出てみれば、自分が夢中になっていた男がそこまでではないことに気がついた感じだな」


「そのようで。顔が良いとされている同年代の者には全て声をかけているようで、爵位の関係から相手ものせるだけのせてうまく利用している者も多く、関係をもった令息は何人もおりますな。


だからこそ1番都合よく、自分に夢中だと思っている彼を逃がさないようにしていると」


「自分の欲求を全て満たしてくれる者はいない中、自分への愛の為に婚約破棄までした男というのが自尊心をかなり満たたしたようだな。

奴が新しく婚約などができないように圧もかけているようだ」


ミリアリアよりもこんな女を選んだ奴の気がしれないな。

性格は天と地ほどの差があり、知識も、感性も、容姿だって何一つ負けるところもない。

唯一は生まれた家の爵位位だが育てられた環境としてはそこも負けないな。


胸糞悪い奴の話しで眉間に寄っていたしわが彼女のことを考えただけでふっととけたのが自分でも分かった。

そして俺の顔を見たダンもふっと笑う。


「馬鹿な男で良かったですな、お嬢様を自ら手離してくださったことだけは感謝せねばなりませんな」


「そうだな。だが、手離したくせにいまだ、ミリアリアが自分を好いていると勘違いして結婚だけはしてやろう、等と周囲にもらしている事実は見過ごせない。


奴が公爵令嬢とどうなろうが、貴族でいようがいなかろうが興味はない。

だがそれにミリアリアを巻き込むようなことだけは許してはならない」


「もちろんにございます。

引き続きかの者の状況には目を光らせておきます、エドワード様はお嬢様との愛を深めていてください」


「あっ…ぃ、などと…」


にこにこと笑っているダンに悪気はなく、からかい半分だが本気で言っているのだろう。

それにいちいち反応していれば疲れるから受け流すにかぎる。


「………引き続き奴やその周辺の情報収集は頼んだ。それから彼女の護衛を増やす、その選定も頼む」


「かしこまりました。後で書類にてご報告いたします。


そういえば…本日お嬢様はすでに起きられて自主的に護身術を学び始めたそうです。

アルトより報告があり、お嬢様の希望があった為、今後も続けて特訓を行っていきたいとのことでした。

許可をだしてもよろしいでしょうか?」


「護衛の仕事だ、と思うが彼女のことだ、自分を鍛えれば少しでも皆の危険を減らせるからだと言いそうだな。

許可しよう、ケガをさせないようにだけ気をつけてくれ」


「彼も無理はさせないでしょうが、旦那様の意向は伝えておきます」


そうしてダンと共に連日、通常の仕事に加えて情報収集や護衛の手配、屋敷の警備強化等にも力をいれていると自然と家に帰ってからの作業時間が増えてしまった。


朝の馬車の中で彼女からしっかり寝てほしいと毎日のように言われ続けたが、落ち着くまではと言って流していた。


申し訳ないと思いつつも彼女の為だからと真剣に向き合わなかったせいか、今俺はとても後悔している。




「本当にすまない。

今後は気を付ける、睡眠時間を削ることはしないようにする。


………どうか泣かないでくれ」


「っふ、ぅぅ」


久しぶりに睡眠不足になり注意力が散漫になったせいか、鍛錬中に軽いけがをしてしまった。

大した事がなかったので特に言わなかったのだが、彼女が包帯に気づき聞かれたので答えたらこの状況だ。


泣きながら言われた言葉を読み解くとどうやら自分のせいでケガをさせてしまったと悲しんでいるらしい。

もちろん俺自分のせいだということは何度も言ったのだが、ずっと抱えていた不安が一気にきたらしい。


「うぅっ、ふっ、ご、ごめん…なさい。わたし、がっ、めいわっ、くかけたっ、せいでおけがをっ、うぅ」


「本当に君のせいじゃない。俺が君の忠告を無視して睡眠をおろそかにしたせいで少し集中できていなかったようだ。

このケガの原因は俺だし、そもそもケガ自体も大したことはないんだ」


彼女の目元に溜まった涙を指ですくう。


「泣かせてしまってすまない、だがありがとう。

俺をここまで想ってくれる君の気持ちが嬉しいよ」


「え、えどわーど様…」


「ずっと君の忠告を無視してしまったのだから償いが必要だな、何か願いはあるか?なんでも言ってくれ」


「つぐない…」


「あぁ、君を泣かせてもしまったんだから俺にできることはなんでもしよう。

その代わりといっては何だが、俺の願いとして泣き止んでほしい。

…君の涙を見ると俺はどうしていいのか分からなくなるようだ」


涙にぬれたままの瞳でしっかりと俺の顔を見て、ふっと彼女に笑顔が戻った。


「お願い…なんでもいいんですか?」


「あぁ、もちろん」


「聞いた後にそれはダメ…はなしですよ?」


「君は無茶なことを言う人ではないと知っているから大丈夫」


「じゃあ、私のお願いは………」

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