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劣悪な孤児院

転生したことに衝撃を受けて、しばらくの間前世の自我が強く残った。


けど、しばらくすると今世での自分についてもだんだん思い出してきた。



この孤児院は強欲で暴力的な院長が絶対的権力を握っており、ほとんどの職員もその手下となっている。


彼らは孤児院の子供を劣悪な環境で奴隷のように扱い、時には人身売買すらする。


異端な存在の私は死んだ仲間を裏庭に埋める役割をさせられていた。


まだ八歳にも満たない私に、やってもいない罪をなすりつけては折檻を繰り返す。


もし魔力がなければ、私はとうに死んでいたに違いない。


そんなことを考えていると苛立ちがよく伝わってくる足音が聞こえてきた。


そして重い鍵を取り、乱暴に扉が開けられる。


入ってきたのは院長の手下の世話係だ。


世話係といってもただちゃんと仕事をするか見張っているだけなのだが。


「さっさと起きろよ。汚らしい。」


そう言ってスコップと布切れを渡される。


あぁ――また誰か死んだんだと私の記憶が告げる。


受け取らずにキッと睨むと少し驚いた顔をしてそれでも変わらずに


「今日は2人だから。」


そう言って彼女は立ち去った。


ふん、なんて質のいい服だろう。


手も仕事をした事のないように綺麗でさ、私たちを酷使して得た金で贅沢してるなんて許せない。


…かといって私が今何かしたとしてもきっとどうにもならないだろう。


策を練らなければ…


そう考えながら私には高いドアノブを回して廊下へ出た。


エレノアの記憶があったとしてもなかなか新鮮な気分だ。


建物は木でできており、全体的に古びている。


うっ…多少魔力のおかげで治っていたとしても傷が痛むなぁ。


薄明るい廊下を進むと右手の部屋に足音に怯えながら隅で小さくなっている子供達を見た。


何もできないことが歯痒くて目を逸らした。



しばらく歩くと地下へ続く階段が見えてきた。


歩いている途中に何人かの職員とすれ違ったけど、異常に怯えるか嫌悪の目で見るかの2択で分かれた。


これじゃ、悪女にもなるよ。


そうじゃなきゃ、やってけない。


階段は灰色の石でできていて、踏むたびに湿った冷気が足元を這い上がる。


下から漂ってくるのは、鼻を刺すような血と腐臭。


嫌な予感がした。


これが、エレノアの記憶にある――“使えなくなった子供たち”の場所?


子供がいるはずなのに声は少しも聞こえない。


恐る恐る階段を降りると酷い悪臭に見舞われる。


そして、檻の中に死んだ目をした子ども達がいた。


左右の檻で合わせて15人くらい。


もう、何も希望も持っていない目。


できるだけ見ないようにしていたら突然服を引っ張られた。


引っ張られた方向を見ると檻から手を出して1人の男の子が服を引っ張っていた。私と同じくらいかな?


「助けてください……ここから出たいんです!何でもしますから!」


焦茶の髪の毛に黒い目。


こんな状況なのに、まだ諦めていない目。


病気ではなさそうだけどどうしてこんなところにいるのだろう。


そう思ってじっと見る。


「おいっ何見てんだよ!助けろよっ!」


おっと礼儀が欠けてきた。


「いや、君…なんでこんなところにいるの?元気だよね?」


「弟が酷い病気なんだ。病気のやつらはみんな、どこかに連れてかれて…帰ってきたことは一度もない!だからおれ、誰でもいいから助けて欲しくて――外に出ようとしたんだ。」


「…それがバレたわけね。」


「お願いだよ!弟はもう危ないんだ!このままじゃ死んじゃう!」


少年の言葉に、胸がぎゅっと締めつけられた。


エレノアだって、この世界でどれだけ“死にたくない”と願ったか。


…どうにかしてあげたい。このまま死なせたくない。何かできる方法を見つけ出そう。


「わかった。」


私が頷くと少年は心底嬉しそうに笑った。

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