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8 実験、実験

「ユリアさ~ん、助けてください」

 サザンカになきつかれた。



「治癒魔法は、怪我をする直前に戻すという考え方が分かり易いかもしれません。今の自分の身体の状態に見合った形に戻すという感じでしょうか。

 若返ったりするわけではないのです。だから、怪我した状態が身体に定着してしまうとそれ以前に戻すのは難しいのです。

 例えば、ギックリ腰になってすぐならば元に戻すのは可能ですが、長年蓄積された腰痛を治すことはできないのです」


 サザンカは治癒魔法についてそう簡単に説明してくれた。一般的には一週間から一〇日ぐらいの間に処置しないと、治癒魔法における怪我の完治はないのだという。加えて、怪我を治す薬は一般的な治癒魔法と同様レベルらしい。


 稀に聖女とよばれるような存在の治癒魔法はまた一味違うらしい。同様の治癒魔法は勿論使えるのだが、それ以上の効能をもつらしい。それがあるからこそ、聖女は特別視されているのだという。


「その聖女様によって、特別な効能というのは違うと聞きます。私が知っている話だと、一人につき一度だけですが若返りを行えたというものがあります。あるいは、別の聖女様ですが、病気を治癒させる能力がおありだったという話も聞きました」


 今代の聖女であるシスティーナも何かそういうのがあったのだろうか。私は知らないけれど。でも、だからこそ魔王討伐に参加したのだろう。


 話を戻そう。


「ですから、この治療方法は画期的です! 是非、広めるべきです! 」


 サザンカの意気込みは凄かったが、私はそんな熱意は持てなかった。いや、ライルで成功してそれで気が済んでしまったのだ。


前世の記憶が落ち着いてきたせいか、それほど前の自分にこだわりがなくなったせいかもしれない。


 それにサザンカとは半年以上もかけて一緒に治療に関わったため、彼女もそのやり方は十分理解しているはずだと思っていた。だから、治療方法についは彼女に任せたのだけれど。


 ライルの復活の衝撃はなかなかに大きかったようだ。半年ほどライルが冒険者ギルドの医療室に通っていたのは誰もが知っている。


 だから、皆はサザンカの治療が功を奏したのだと考えたみたい。それでライルみたいに後遺症が残っているような人々が、医療室に来るようになったのだそうだ。


「俺さ、長年の腰痛持ちなんだよ。これもなんとかならないか? 」

「怪我してから肩の調子が悪いんだ」

と相談してくる冒険者もいるのだという。


「私一人だと、とてもじゃないですけど対応しきれないのですぅ」

 医務室を借りていたという恩義もあるし、ということで週に二回手伝いに行くことになってしまった。


 だけど私の中の興味関心は、実はもうここに無い。今のマイブームは、雷針を使った魔物討伐だったりする。

雷針、使う魔力量が小さい。その上でツボに当てれば、動けなくさせられて、討伐が楽になる。


 将来的にはドラゴンにブレスを吐かせないで討伐、なんてこともできるはず。魔物を綺麗に捕獲、討伐できれば稼ぎも増える。ま、お金には困ってないけど。私、優秀ですもの。なんてね。

 残念ながら前世の私は鍼灸師だったのだが、今世のわたしは攻撃型の冒険者というわけなのだ。バシバシ討伐するほうが性に合っている。


 それで効能について身を以て体験しているライルと共に、森に行っては色々と実験している。話を持ちかけたら、彼も乗り気になってくれたのだ。彼自身がかなりのやり手なので、実験も兼ねている討伐での協力は正直物凄く助かっている。


 ライルの治療で色々と試したおかげで、鑑定との組み合わせを使うことで魔物の弱点というかツボが見えてきた。人とはやはり違うのだけれど、なんとなく感覚的に分かる。


 今思えば、前世の記憶が戻った直後に、スコルピオンに的確な電撃を食らわせたのって、おかしい事なのよ。


 だって、ツボも電撃のサイズも理解していなかったのに。どうも感覚的にそういうのが分かるようになったって事なんだとは思う。しかも、彼の息子さんを半年から一年ぐらいの役立たずにするという時限付きでこなせた自信が何故かあるのだから。


でも、このままでは駄目だと思う。だって、何かのきっかけでその感覚が失われてしまえば、二度と使えなくなる。ちゃんと論理的に落とし込める所はやっておきたい。なぜ、どうやってできるのかを把握しておきたい。


 ライルの治療については、スコルピオンの時ほどハッキリとは分からなかっただけれど、これはひとえに感覚的な部分しかなかったからだと思う。それに、治療と攻撃は違うから。


スコルピオンに関しては、完全に攻撃対象だったから。残念ながら? 私はやはり治療よりも攻撃の方が得意らしい。


 身体の構造や医学的な見解を学んだことで、感覚的だった部分も随分と整理して考えられるようになった。それを応用して治療へ使えたんだと思うのだ。


こうやって積み重ねていけば、治療にしろ攻撃にしろ、より高みを目指せるはずだと今は考えている。


 それに、ライルの治療で一緒に協力してくれたサザンカが、雷針を使った治療が行えるようになったってことは、第三者も使える技術になりうるってことだ。

それならなおのこと、キチンと形にしたい。


で、ツノウサギの様な小さな魔物から始めて、現在は小鬼や魔猿たちを対象に、実験、実験。沢山湧いてくるから、し放題よ。

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