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負けヒロインって言い方、酷くない?  作者: 桃田


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25 邪神討伐隊参加へ

 従魔登録は簡単にすんだ。従魔だという証明のためにピアスか首輪、足輪のいずれかを付ける必要があると受付嬢に言われた。


「一番外れにくいのは首輪です。足や耳の場合は消失する可能性がそれなりに高いですから」


 なかなか物騒なお話だけれど、言われてみればそう。では何が良いか当人たちに聞いてみようと、足元におろしていたフレアを見ると、子狐な彼女はふんと鼻を鳴らした。


「首輪とか巻かれるものは嫌」

 とのことだ。


「えっと、ピアスでお願いします」

 そういう事になった。

「おしゃれね」


 さほど大きくはないピアスを右耳の際につけて、ちょっと得意げな様子のフレアは可愛い。アレクもピアスにしてもらったようだが、最初にチクリと刺されときにキャンと鳴いていた。


 賢い従魔は言葉を話す場合もあるので、二人はさほど目立たないかと思ったが幼気な犬と狐の姿は十分人目を引くようだ。しかも子犬はやり手で名高いライルの頭の上なのだから余計だろう。


「で、ライル。討伐隊に参加するのはいいけど、準備はどうする? あと、サザンカにも確認しないとね」

 ということで、一旦私の家へと向かうことにした。

 

 サザンカは乗る気だった。

「行きます!」

 よっぽど、アレと物理的にも離れたいらしい。下手をすれば、もうこの街に戻ってこない気かも。確か彼女の出身は、ここではないはずだったし。


 なんか私を除いて、みんなが盛り上がっている。

「何、一人で黄昏てるのよ」

 フレアが後ろ足で立って、ちっちゃな腕組みをして(いや、組めてない。可愛い)、こちらを見る。

「何、何か気がかりでもあるの? キリキリと吐きなさい」


「悪いわね。ちょっと色々と考えたいことがあるの」

 そう言って、私は部屋に戻った。



 そう、気がかりはある。聖女システィーナだ。彼女は敏い。変化(へんげ)しているとはいえ、誤魔化しきれる気がしない。彼女は別格なのだ。


 私の力は一兵卒のものに過ぎない。確かに攻撃魔法は段違いで優れている自負はあるけど。だけど、それだけ。一軍を指揮する、大局を見極めて策を練るなんて真似はできない。こちとら戦争を知らずにのほほんと生きていた一般人なのよ。


 歴史は知ってたって戦略なんて知らないわよ。チンギス・ハーンは凄いと思うし、鉄血政策のビスマルクは好きだったけどそれだけ。真似なんか小指の先だって無理。


 優秀なスナイパーは、与えられた命で標的を仕留める。その仕事が周囲にどのような影響を及ぼすのかを読むことは、その役割には含まれない。私の存在はその程度だ。


 でも、システィーナは違う。先の魔王討伐では、聖女としての役割を果たすだけでなく、討伐隊を指揮し、魔王を倒した。さすが未来の女王陛下として立つ人物だといえる。口惜しいけどそれが事実。


 討伐隊はそれなりの規模になるだろう。だから、隅っこでおとなしくしていれば、彼女の目につかないかもしれない。


 そうは思っても、今回自分が一緒に行くメンバーが半端ない。ライルはケガがなければ、魔王討伐隊にも選抜されていただろうし、そのなかでも突き抜けた存在になっていた筈だ。そう、アレックスの様に。


 サザンカの技術も衆目を集めるだろう。そして、フレアとアレク。この二人だって、活躍すれば注目を集めるに違いない。そうね、居直りますか。例えばサザンカの護衛みたいな。そうね、ちょっとギルドマスターに話をしておこう。



 出発は3日後になった。

 久々に母国の土を踏んだ。討伐隊はそれなりの規模になるだろう。それでも総勢数百だろうか。これでも少数精鋭って奴だと思う。


「ライル、久し振りね。元気そうで良かったわ。身体は治ったの」


 ライルの幼馴染が彼を見つけて駆け寄ってきた。多分、リストを見て、待ち構えてたのかしら。その後ろには、なんと騎士団長のカエサルがいる。


 おう、早々にバレる可能性が爆上がり? なんといっても彼は騎士団長であり、魔力や雰囲気で気が付かれる可能性は高いからね。さて、どうでしょうか。


「ライル、知り合い」

 そう呼びかけてみる。ちょっと高めだけど、少年の声と言っても通るぐらいの声で。

「ああ、ユーリ。前に話をした幼馴染のメリッサだよ」


 知っている。彼女、魔王討伐でそれなりの活躍をしていたから目立ってた。ただ、話をしたことはなかったけれど。だからカエサルとそんな関係だなんて知らなかったわよ。


「メリッサ、久し振りだな。身体については万全だよ。彼女、サザンカのおかげだ」

 一緒にいるサザンカを紹介するために前に呼んだ。


「ああ、彼女が。噂は聞いている。今回の働きを期待している。聖女様だけに負担がいかないように、ぜひその力を振るって欲しい」


 メリッサの後ろからカエサルがそんな事を言う。きっと、別の国で聖女に張り合うのにサザンカの話を広めているのかしらね。何か棘のあるような言い方。メリッサも幼馴染のライルと一緒にいるサザンカが気になるのか、上から下まで眺めている。いやね、幼馴染まで囲っておきたいのかしら。


「よろしくね、サザンカさん。ライルの事、ありがとう」

 にっこり笑ってメリッサが言う。


「ライル、彼女とはいい関係なのかしら」

 すぐにライルの方を見ると、首をこてんと傾けてそんなことを続けてくる。


「メリッサ、お前何を言い出すんだ」

 ライルが眉を顰めて何か言おうとしたのを遮ってみる。


「ライル、駄目ですよ。彼女はボクの彼女なんですから」

 私はサザンカの腰に手を回す。サザンカは小柄なので私よりも背が低い。だからそれなりに見えるはず。


「今回は彼女の護衛としてボクが来ました。ライルさんに抜け駆けさせませんから」

 そう言ってみる。ライルは両手を上げてやれやれという風情を見せる。


「そう威嚇するなよ。サザンカには恩はあるが、そういった感情は持っていないって説明しただろう。今回だってギルドからの依頼だから一緒に来ることになっただけなんだから」

「大丈夫よ、ユーリ。私にはあなたがいるのだから」


 ちょっといたずらっぽい表情をしてサザンカが私に話しかける。その彼女にウィンクする。

「そうだね、サザンカ」


 どうやらメリッサはサザンカの品定めを止めたようだ。そりゃそうでしょうね。今、私の格好は青年に見えるはずだ。今回、参加するにあたっては男装することにしたんだ。髪も短くしたしね。


それで、サザンカの彼氏という立ち位置にしてもらった。サザンカもしばらくは男は懲り懲りだと言っていたので、ペアだという事にすれば変な男にも声をかけられることもないから、その方が良いって事にした。サザンカの護衛という事で、ギルドマスターにも話を通してある。


 カエサルも気が付かなかったみたいだ。彼は私に一瞥をくれただけ、それだけだったから。それからは簡単な話をして彼らとは別れた。足元にいたフレアとアレクは大人しくしていたので、気が付かなかったかもしれない。

あけましておめでとうございます。

旧年中は読んでいただいてありがとうございました。

本年もよろしくお願いします。

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