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負けヒロインって言い方、酷くない?  作者: 桃田


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24 邪神が出現したんだって

 夢見が悪かったのは、このせいかしら。いえ、違うわね。色々と思い出しただけよ、憂鬱。


「……というわけで、ラルフとユリアには、討伐隊に参加してほしい」

 覚悟していたといえれば格好いいかもしれないけれど、そんな事はしてなかった。もう少し余裕があるかと思ったし、すぐに討伐隊募集があるとも考えていなかったから。


 あれからまだ数日しか経っていないのに、冒険者ギルドに行くとギルドマスターに呼び出された。先日、邪神が現れたのだそうだ。


邪神本人が直で出現したというわけではなく、各国の王都の空にバカでかい映像が映し出されたとか。その姿は、黒い炎が人の形を成している様にみえるだけでどのような存在かは解らなかったらしい。だが、禍々しい雰囲気で玉座に偉そうにふんぞり返った姿で自らを邪神マガツヒなんぞと名乗ったという。


「聖女様を差し出すように言ってきたのだそうだ」


 その言葉を苦々しげに吐き出す。各国の王都に触れ回ったのは、聖女がどこにいるのか把握していないからではないかと思ったらしい。


「『設定に則り、魔王城の廃墟にて待つ』と宣ったとか。なにがセッテイだ」


 その言葉で察した。どうやらお相手は転生者のようだ。しかもマガツヒなんて名乗ったということは、間違いなく日本人ってことよね。まあ、ロキとかベルゼブブとか名乗ってもそう思うけど。だってこの小説もアニメもメイド・イン・ジャパンだもの。


邪神の出現を派手なパフォーマンスで以て演出かぁ。これもお約束というヤツかな。こちらに転生者がいたとしても、手の内はみんな知っていますっていう事かしら。頭が痛くなりそう。


「魔王討伐の時の様に各地から人員を派遣し、その中から生粋の人員を選抜するという余裕はない。だから、各ギルドから人を推薦して送ることになった。本来なら魔王討伐の際の選抜メンバーなのだが、レイクは先の戦いの傷で参加は無理だ。後遺症は、サザンカやユリアのお陰で随分とよくはなったが」


 このギルドから選ばれたレイク・サールは現在右足が義足になっている。幻肢痛に悩まされていてその対応を二人でしていたのだ。新たな人員を選出しましょうということになって、名前が挙がったのがライルと私なのだそうだ。


「このギルドからは君等二人を推薦したい。それから、治癒要員としてはサザンカにも参加してほしいと伝えてもらえるか。彼女の能力が高いというのも勿論だが、彼女の周辺が今は立て込んでいるだろう。だから、ここから少し離した方がいいとも思っていてな、どうだ」


 えぇ、私、行かないと駄目なの? いろんな意味で、行きたくないのだけれど。行ったとしても、戦力増強にしかならないでしょう。私でなくてもよくない? 話の前半を聞きながらそう思っていた。ここでサザンカの名前が登場しようとは。彼女のことまで考えると、確かにここからしばらく離れたほうが良いかもしれない。治癒担当の後方部隊だからといって安全というわけではないから、きちんと彼女に聞いてみないといけない。でも、ゴタゴタを考えると多分行くと言う気がする。まあ、場合によっては後方支援部隊みたいに戦場になりそうな場所よりも後方に控えるのもありだろう。


「了承しよう」

 ライルが隣であっさり応える。彼にとっては魔王討伐に参加できなかった思いがくすぶっていたのかもしれない。決意に満ちた顔でそう言ったのだけれども。


ギルドマスターはその姿を直視しないようにして、ちょっと目を逸らした。それはなぜかと言うと。現在、ライルの頭の上にはアレクが乗っかっていて、ウンウンと頷いているからだ。無骨で真面目な男の頭の上に、可愛らしいぬいぐるみのような子犬がぺたんとくっついている姿、大変似合わない。


 アレクもフレアもウチにいることになったの。食べられそうになったというのに、二人共エルザの料理に胃袋を掴まれたみたいで。それでも、ギルドに一緒に来るというから今日は連れてきた。ギルドに入る前は、二人共私の足元をピョコピョコ歩いていたのよ。それがギルドに入ってライルを見た途端、アレクったら飛んでいってすぐに彼の頭の上にのっちゃってね。ギルドの中では割と強面で通っているライルなのだけれど。そんな可愛らしい子犬をくっつけている姿を見て、中にいた冒険者の連中は呆気にとられて。目を背けて、笑いをこらえていた。


なんだかごめんなさいと、謝りたくなったけどライルは全く気にしていないようだ。そんなアレクとライルをみて、フレアは私を見上げた。頭の上に乗るのは、ちょっとと思って抱え込んであげた。両手が塞がるけどギルド内だし、とっても軽いし。


「きゃー、可愛い」

 と二人共揃って受付嬢の人気は上々だった。閑話休題。


「それで、ユリアは行ってくれるか?」

 現実逃避していたけれど無理らしい。フレアは腕の中からこちらに期待した目を向けている。


「そうね、サザンカと一緒ならば。ええ、行くわ」

 そう言わざるを得ない。サザンカには私の方から確認することになった。


「ありがとう。お願いする。それで、別件なんだが一つ聞いていいか」

 ギルドマスターが徐ろに口にする。


「その子犬と子狐、従魔かなにかなのか? 今まで見かけたことがなかったが、普通の動物には見えないんだが。連れて行くのならば、討伐隊に参加する前に従魔登録をしていってくれ」

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