今日でお別れスピンオフ「蘭子の新人OL日記」
私は出島蘭子。大手企業の新人OL。
主な業務は営業補助。男性社員の資料作りやコピー、相手先企業との打ち合わせの段取り等である。
男性社員は皆とても優しいし、先輩OLの方々も、怖い人はいず、とても良い環境だ。
でも一人だけ気になる人がいる。
平井課長。
男性社員も女性社員も、私の事を「蘭子ちゃん」と呼んでくれる。
普通なら「出島さん」が当たり前なのだろうが、この課では女性は全員名前で呼ぶらしい。
それなのに、課長は私を「出島さん」と呼ぶ。
もしかして嫌われているのだろうか?
凄く不安になったので、真弓先輩に訊いてみた。
すると真弓先輩は大笑いして、
「違うわよ、蘭子ちゃん。そうじゃないのよ」
「どういう事ですか?」
私はあまり真弓先輩が笑い続けるので、不思議に思った。
「課長の奥さんが『蘭子』さんなのよ。だから呼びづらいんじゃないの?」
「ああ、そうなんですか」
納得した。良かった、嫌われてるんじゃなくて。
そんな事なら、言ってくれればいいのに。
「課長」
何故かビクッとされる。この人、恐妻家なのかな?
「な、何かな、出島さん?」
「それです」
「え?」
私はキョトンとする課長に、
「私が奥さんの名前と同じ名前だから、呼びにくいんですか?」
すると課長はもの凄く驚いて、
「ちょ、ちょっといいかね」
と別室になっている課長室に連れて行かれた。
「君、私の妻の名前をどこで知ったんだ? 誰にも教えていないはずなんだが」
「え? 真弓さんですけど」
課長の顔色が悪く見えたのは、照明のせいだけではないはずだ。
私はとんでもない事に気づいてしまった。
知らないはずの事を知っている人がいる。真弓先輩と課長、何かあるの?
もしかして、不倫?
そんな話、ドラマの中だけって思ったんだけど。
だから、私の名前を呼び辛かったのか。
更に納得できた。