魔法少女!
母の足音が洗面所の前にたどり着く
ヤバイヤバイヤバイ
見知らぬ少女が、家の中にいました。
完全に不法侵入だ!少女でもそれはアウトだ!
ひろおにいちゃんのお友達です。
完全に犯罪じゃないか!俺はロリコンのレッテルは貼られたくない!
素直に話す?
頭のおかしな子としか判断されないだろ!
ヤバイどうやっても今の俺の状況を説明できない…!
混乱する俺は咄嗟にドアノブに手をかける。
「ひろく〜ん?」
「は、入ってます(限りなく低い声で」
「どうしたのその声?風邪〜?」
ダメだったー!
「ひろくん?どうしたの?何かあったの?」
母がノブをガチャガチャといよいよ本気を出してきた。
俺今魔法少女なんだよね!?力強いはずだよね!?
『魔法少女はアニマがいないと普通の女児と同じくらいの力なのさ』
山本がそう教えてくれる。
何その融通の効かない力ぁ!
折角変身してるんだからその辺りは常に強パッシブついてても良いんじゃないかなぁ!?
そんな事を泣きそうになりながら考えるも、普通の女児の力で大人の女性の力にかなうはずもなく。
洗面所の扉がゆっくりと開け放たる。
万事休すか…!
母が洗面所に入ってきてポカンと俺を見下ろす。
「ひろくん?そんなところでどうしたの?」
「はえ?…あ、いや、なんでもないよ?」
俺は咄嗟に自分の姿を見て安堵する。
よ、良かったーーー!戻ってるーーー!
母は頭にはてなを浮かべてこちらを見ると、居間に向かって歩いていった。
「お、おい山本、戻ったぞ」
「それは良かったね」
こいつ…!なんかいちいち腹立つな!
母が入ってくる瞬間に謎空間に移動していた山本が、やれやれと帰ってくる。
俺はそんな山本を小脇に抱え、母にみつからないように部屋に戻ると、正面に置いて話を聞く事にする。
「さっきも言ったけど、君にはこれから魔法少女としてこの街を救ってもらうよ」
「やだよ!誰が好き好んで女児に変身せにゃならんのだ!しかもそれって危ないんだろ!?」
「いやと言っても、今この街でアニマと渡り合えるのは君しかいない、君はこの街の人達を見捨てるのかい?」
山本の言葉に、うっと言葉を詰まらす。
その言い方は卑怯じゃないか?
「警察とか自衛隊とか、そんなのじゃだめなのかよ?」
「あいつらに物理的な攻撃は効かないんだ、拳にでもなんでも魔力を宿してないと無効化されるんだよ」
「他の魔法少女とかはいないのか?」
「今は君しかいないね」
山本の話が本当なら、対処出来るのは俺しかいないのだろう。
もし俺が戦わなければ街の住民が危険に晒されるというのも本当なのだろう。
でもなー!女児は嫌だなー!
正義のヒーローには憧れた事あるよ?でも魔法少女はなー!
俺が葛藤していると、山本は机の上のドーナツを勝手に食べながら、話を進める。
「どちらにせよボクは魔法少女のマスコット的存在として、君を助ける必要があるのさ」
「…助けるって?」
「魔法の訓練とか色々さ」
「魔法!?」
尚も渋っていた俺は、その言葉に思わず食いつく。
「え、なに?魔法とか使えちゃうの?」
「そりゃ魔法少女だからね」
わーお、悪くないな魔法。
俺は全力で手のひらをクルーすると、山本にキラキラとした目を向ける。
「で?どうやって使うんだ?その魔法ってのは?」
「魔法は変身してないと使えないよ」
えー…変身するのはやだなぁ…。
でも魔法には興味あるし…!
「…どうやったら変身できるんだ?」
山本はドーナツを食べ、げぇーっぷと音を鳴らすとお腹をポンポン。
「そこも気合いだよ」
…相変わらず適当だな。
まぁ言ってても仕方ないか。
俺は精神を集中し、むんっと力を込める。
すると体が暖かくなり、体の底から力が湧いてくる。
目を開くと、そこには小さなお手て。
無事変身出来たようだ。
「おっけー、これで良いな」
俺は変身した事によってはえてきた三つ編みをいじいじしながら山本を見据える。
「で!どうやったら魔法を使えるんだ!?」
「魔法を覚えるのは簡単だよ、君の場合は…そうだな、例えばマッチの炎を手に当てれば、マッチの炎並の力が出せるようになる」
「つまりどういう事だってばよ」
「そこのライターで自分の手を焼いてごらん」
「ええ…」
なんかそれは嫌だなぁと思いながらも言われた通りにする。
ライターの火をつけ、自分の手に押し当てる。
「あっつ…くないな」
「魔法少女だからね、身体能力は女児でも耐久力はそこそこあるよ」
ほーん、少し暖かい程度にしか感じない、すげーな魔法少女。
「それじゃあ次はさっきの感触を思い浮かべながら目を閉じて」
言われるままに目を閉じてライターの火を思い浮かべる。
するとポッと目の前に小さな炎が浮かび上がる。
「おお…すっげぇ!」
「次はその炎を動かす事をイメージしてごらん」
言われた通りにイメージすると、炎が自由自在に動き回る。
「わかったかい?」
「ちょっとだけわかった気がする」
「そうかい、じゃあ次はそこの扇風機を自分にあててごらん」
言われるがままに扇風機に当たる。
「じゃあ今度はその風を思い浮かべるんだ。」
すると今度は風がそよそよと溢れ出す。
「わかったかい?君にはコピー能力が備わっているんだ」
「お、おう、わかったぜ」
俺はキラキラした目で炎を動かし、風を操ると、それならと机の上のペットボトルに手をかける。
「つまりこういう事だよな!」
ペットボトルの水を手にかけると、今度はそれをイメージする。
すると水が現れ、自由自在に動かせる。
「思った通りだ!」
なんて便利な能力だ!これってなんでもいけるんだよな?
「ジュース飲み放題じゃん!」
「君の発想は小物じみてるね」
うっさい!なんとでも言え!
うしし、これで俺も魔法使いってか。
変身するのは嫌だが、これはこれでなかなか…。
他にも試したい事が出てきたぞ!
…といってもそろそろ晩御飯の時間だ、そろそろ戻らないと。
「で?どうやったら変身を解けるんだ?アニマとも戦ってないけど」
「アニマと戦わないと戻れないよ」
「え…?」
「アニマと戦わないと戻れないよ」
え…つまりどういう事だってばよ。
2日起きに変更です!