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魔法少女とアニマと

「ななな、なんで変身した俺が!?」


 俺は自分の上でスヤスヤ寝ている自分を見て目を白黒させる。


「あ、わかった!こいつ昨日のアニマだな!」


 そうとわかれば話がはやい、さっさと退治してしまおう。

 起こさないようにそーっとベッドから降りようとした所で、目がバッチリあってしまう。


「あう…おはよう」

「あ、おはよう」


 間の抜けた挨拶につい返事をしてしまう。

 おはようじゃねぇよ!起こしたら厄介だから寝てる間に倒したかったのに!

 俺はアニマを突き飛ばし、ベッドから飛び降りる。

 アニマは突き飛ばされた拍子に壁に激突し、涙目を浮かべている。


「痛いよぉ…」


 うぐっ、だからこいつはやりづらいんだよ。

 これでは完全に女児をいじめている気分だ。


「というかなんでお前ウチにいんだよ」

「おうち?」


 アニマはコテンと首を傾げる。


「ええと、ここが俺の…私…?のウチだから?」


 アニマは鏡にうつる自分を見ながら、たどたどしく答えてくれる。

 鏡にうつる自分を見て女の子と判断したらしい。


 俺が1人混乱しながらアニマと対峙していると、部屋の扉がガチャっと開き、山本の声が聞こえてくる。


「どうやらその子、記憶を無くしているようだね」


 そう言いながら、山本は田中と一緒に部屋に入ってくる。

 そんな山本を見ながらアニマは嬉しそうに笑みを浮かべる。


「あっ!山本!」


 アニマはそう叫ぶと、山本をぬいぐるみのようにギューッと抱き抱える。

 そんな山本とアニマの隣では、何か衝撃を受けたように田中が大口を開けている。


「ひ、ひろ氏が2人いるでござるー!?」

「いや、そいつはアニマで…てかなんで田中がいるんだよ」

「なんでも何も、今日は魔法少女定例会でござるよ」


 ああ、こいつまだ俺に魔法少女を布教しようとしてんのか。

 まぁ田中は良いや、深くつっこんだら痛い目みるし。


「しかし記憶を無くしてるってどういう事だよ」

「そのままの意味だよ、アニマとしての記憶はないだろうね」


 げぇ、じゃあこの子今完全にただの女児じゃん。


「なんでよりによってウチに…」

「多分ひろに変身したから、ひろの記憶に引っ張られたんじゃないかなぁ」


 山本はそう言いながら、アニマから離れようとジタバタしている。


「魔力も安定してるし、今この子に害は無いと思うよ」

「えー…じゃあこの子どうすんの…」


 山本はそんな俺の言葉に少し考えるように沈黙する。


「とりあえずしばらく一緒に過ごしてみたら良いんじゃないかな」


 過ごすったって…こいつアニマなんだよなぁ…。

 倒さなくて良いのだろうか?


 そんな事を考えていると、田中が妙案を思いついたと言うように挙手する。


「じゃあこの子は今からひろ氏の妹のまひろたんでござる」

「い、妹ぉ!?」


 何その甘美な響。

 そう考えると悪くないな、俺妹欲しかったんだよね。


 俺が改めてまひろを見ていると、まひろは頭にハテナを浮かべながら小首を傾げる。

 はい、可愛い。


「まひろた〜ん、拙者の事は田中お兄ちゃんと呼ぶでござるよ〜」


 そんな事を考えていたら、田中が変な事を教えだした。


「たなかお兄ちゃん?」

「ぐはぁ!でござる!」


 田中は自分で言わせておいて、吐血したように地面にうつ伏せに倒れる。

 そしてずずいっと俺に顔を近ずけてくる。


「お義兄さん、まひろたんを拙者にくださいでござる」

「お前に妹はやらん」


 誰が義兄さんだ誰が。


「冗談でござるよ、拙者はひろたん一筋でござる」


 田中はそう言ってウィンクを1つ。

 俺はそんな田中を見てニッコリ。

 すごく気持ち悪いな!


「ひろ氏〜折角だから今日はまひろたんと2人で親睦を深めると良いでござるよ〜」


 田中はそう言いながら荷物を背負うと、さっさと帰宅してしまった。


「えー、あー…」


 俺はまひろに視線を向ける。


「とりあえず出かける?」

「うん!」


 ・・・


 という訳で、現在俺はまひろと共に近くのスーパーまで来ている。

 最初は話す時にギクシャクしていたが、まひろが天真爛漫な性格なのと、基本俺の記憶だよりに動くので、なんかフィーリングがすごく合う。

 なにより俺の妹だしね。


 俺がニヨニヨとまひろと話していると、まひろが本日何度目かの叫びをあげる。


「あー!あれ可愛いー!」

「よーし、じゃあ俺あれも買っちゃうぞー」


 そんな事を言う俺の両手には、既に大量の買い物袋の山。

 だって妹を甘やかすの夢だったんだもん。


「あ、そうだ」


 俺は一言そう言うと、店で買ったヘアピンをまひろにつける。


「わー!可愛い!」


 まひろはすごく嬉しかったのか、ピョンピョン飛び跳ねる。

 うん、まひろの方が可愛いぞ。


 そんな事を考えながらニヨニヨしていると、聞き覚えのある声が耳に入ってくる。


「ひろさん?」


 そこには斎藤を抱えたユリの姿。

 げぇ!まさかこんな所で会うなんて!


 何気に変身前の姿で会うの初めてなんだよなぁ…。


 そんな事を考えながら、俺が少し挙動不審になっていると、まひろが頬を膨らませてユリにつめよる。


「ひろじゃないよ、まひろだよ、ね、ひろお兄ちゃん!」

「お、おう、そうだな」


 まひろがそんな事を言いながら笑顔を向けてくるが、俺は内心ヒヤヒヤしていた。


「ひろ…お兄さん…」

「ああ、うん…ええと…俺はこの子の…まひろのお兄さんで」


 しどろもどろに答える俺をユリは訝しむように見つめる。


「あなた達、もしかして…」


 ヤバい、ユリが色々と見破りそうだ。


「ああ!ちょっと急ぎのようがあるんだった!」


 俺はまひろの手を引いてそそくさとその場を逃げ出す。


「ユリお姉ちゃんまたねー!」


 そう手を振るまひろを引き連れて、今度はフードコートを練り歩く。


「まひろ、何か食べたいものあるか?」

「うーん、クレープが食べたい」

「おっけ、クレープな」


 俺はまひろと手を繋ぎながらクレープ屋の前に並ぶ。

 すると、遠くからまた聞き覚えのある声が聞こえてくる。


「ひろちゃーん!」


 今度はひなたがまひろに向かって抱きついてきた。

 そんなひなたにまひろは頬を膨らませる。


「ひろちゃんじゃないよ、まひろだよ」

「そうか!まひろちゃんか!私はひなただよ!」

「うん!」


 まひろはひなたと両手を合わせてキャッキャと喜ぶ。

 え?それで良いの?

 ひなたもまひろもコミュ力お化けだな。


「良かったらひなたちゃんもクレープ食べるか?」

「食べるー!」

「よしよしじゃあ一緒に並ぼうなー」


 そう言いながらひなたと一緒にクレープ屋に並ぶ。

 今度ひなたには、知らない人について行かないよう言っとかないとな。


 そんな事を考えながら嬉しそうに話す二人を見てニヨニヨ。

 クレープを食べた俺達は、帰宅する事になった。


「今日は楽しかったー!」


 帰宅途中、まひろが海岸沿いの夕日を背に満面の笑みを浮かべる。


「そうだな」


 なんかこういうの良いな、本当に兄妹みたいだ。

 俺はそんな事を考えながら1人幸せを噛み締める。


「それは困りますねぇ…」


 そんな俺の耳に、野太い男の声が聞こえてくる。

 そして、唐突に視界が歪んだかと思うと、見慣れた男の姿。


「つむじかぜ!?」


 なんでこんな所に!?

 俺はすぐさま変身を試みるが、その前に大きく吹き飛ばされる。


「げほっ、ごほっ」


 あまりの痛さに嘔吐する俺を尻目に、つむじかぜはまひろの首を絞めるように掴む。


「や、やめろ…」


 なんとか口を開きながら変身する。

 すると嘔吐感は無くなり、力が漲ってくる。

 しかしつむじかぜはそんな俺を興味なさげに見ると、まひろの口に何かを垂らす。


「アニマと魔法少女が仲良くするなんて、ナンセンスですよ」


 その言葉と共に、まひろの体が大きく仰け反る。


 そして投げるようにまひろを地面に投げつけたつむじかぜは、面白そうに俺達に視線を向ける。


「まひろ!大丈夫かまひろ!」


 そう言いながらまひろを助け起こす俺の腹に、とんでもない衝撃が与えられる。


「ま…ひろ…?」


 そこには俺の腹に拳を突き立てるまひろの姿。

 そしてその目はとても冷たい物に変わっていた。

話の流れ的につむじかざがクソ野郎になってしまう件。

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