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魔法少女とミラーマッチ

 前回斎藤からアニマ発生の報を聞いた俺とユリは、住宅街の屋根から屋根へ飛びうつりながら目的地へと急行していた。


「斎藤ちゃん!アニマさんの気配はどこにありますの?」

「あそこである!」


 ユリに抱き抱えられた斎藤が、そう言いながらぬいぐるみのような手で街の一角を指さす。

 良いな…俺も抱き抱えられたいな…。


 そんな事を考えながらも、斎藤が指さした先を見て、俺とユリは顔をしかめる。


「うっ…あれは…!」


 斎藤が指さした先には、血まみれで倒れているスーツの男と、なきじゃくる幼女の姿があった。


「これはひどい」


 俺とユリはすぐさまその2人に駆け寄る。

 なんやかんやで一般人がこんな状況になっているのを見るのは初めてだ。

 今まで変態的なアニマが多かったが、今回はとてつもなく凶悪なやつが相手らしい。


「ユリ、その人治せそうか?」

「はい!まだ息はあるようなので大丈夫ですわ!」


 俺はホッと息を吐くと、なきじゃくる幼女に近づく。


「よしよし、もう大丈夫だ、あとはお姉ちゃん達に任せな」


 そう言いながら幼女を抱き寄せようとした所で、斎藤が慌てたように叫ぶ。


「小娘!そいつがアニマだ!」

「え?」


 そんな齋藤の叫びを聞いた俺は、間一髪、幼女がどこからか取り出した包丁を回避する。


「この子がアニマ!?」


 まさか幼女の姿をしたアニマがいるとは…。

 恐らくその見た目でスーツの男をおびき寄せ、包丁で刺したのだろう。

 こいつは凶悪だ、これ以上被害が出る前になんとかしないと。


 俺はすぐさま距離を縮め、幼女目掛けて拳を振り上げる。

 すると幼女は目をうるうるさせながら、こちらを見据える。


「お姉ちゃん、いじめるの?」


 その言葉を聞いて思わず急ブレーキ。


 な、なんて戦いづらいやつだ!

 今まで戦った中で1番凶悪なんじゃないかこいつ?


 思わず止まってしまった俺は、しかし覚悟を決めて幼女の前に立ち塞がる。

 被害も出てるし、ほっとくわけにはいかない。

 せめて1発で倒してやろう。


 そんな事を考えながら再び手を振りあげる。

 そんな俺を幼女は興味なさげに見つめる。


「あーあ、だめかぁ」


 そう呟く幼女に拳を振りおろし、砂埃が舞い上がる。


「けほっ、けほっ、やったか!?」


 俺は思った以上に強く叩きつけすぎたなと反省しながら、砂埃が晴れるのを待ち、晴れた先の光景を見て目を見開く。


「「んな!?」」


 そこには俺と全く同じ姿をしたアニマの姿。


「「ど、どうなってるんだ!?」」


 俺がそう叫ぶと、アニマも全く同じ事を叫ぶ。


「ひ、ひろさんが2人!?」


 スーツの男を治療したユリが、目を丸くしながらあわあわしている。


「どっちが本物ですの!?」

「「ユリ!俺が本物だ!」」


 ユリにそう言うが、アニマも全く同じように叫ぶ。


「「この!真似するな!」」


 俺とアニマは同時にそう叫ぶと、全く同じ挙動で拳を振り上げる。

 そしてクロスカウンター、同じように顔を抑えてうずくまる。

 こいつ…ステータスまでパクってやがるのか!?


 俺はだったらとアニマから距離をとる。


「「これならどうだ!」」


 アニマと俺はそう叫びながら魔法弾を生成、全く同じ場所に撃ち込み、相殺される。

 な、なんて厄介なやつだ。

 能力までコピーしてやがる!


 俺とアニマはお互いに睨み合いながら同時に飛び蹴り、お互いダメージを受け、ゴロゴロと地面を転がる。


 全く同じ行動に全く同じダメージ、このままじゃ最悪同士討ちだぞ!


 俺はかつてない危機に焦りながらも、再び魔法弾を生成する。


「ひろさん、飛んでください!」


 ユリのその言葉を聞き、俺とアニマは思いっきり地面を蹴る。

 すると俺の方の空中に結界が生成され、俺はその上に着地する。


「ユリ、見分けがつくのか!?」

「はい!」


 ユリはそう言うと、何やら顔を赤らめてもじもじ。


「その…愛の力ですわ…」


 なにか小さい声で言っているが、今はそれを聞いてる余裕は無い。


「ユリ、相手の弾幕だけ結界で撃ち落としてくれ」

「わかりましたわ!」


 俺とアニマは同時に魔法弾を生成、射出する。

 しかし今回は相殺される前に、アニマ側の弾幕だけユリが撃ち落とす。


「う、うわぁぁぁ!」


 そんな叫び声と共に、アニマが悲鳴をあげる。

 よし、今だ!


 俺はこのチャンスを逃すこと無く、よろめくアニマに接近すると、その顔目掛けて思いっきり拳をぶつける。


 メコォという音と共にアニマの顔がぶれ、塀に向かって飛んでいく。


「う…ぐぅ…」


 アニマはそう最後に呟くと、霧散するように散ってしまった。


「倒した…のか?」


 そんな俺の言葉と共に、ユリがボンッと音を鳴らし元の姿に戻る。

 どうやら倒したらしい。

 やりましたわね!っと抱きついてくるユリに笑みを浮かべる。


 しかし…。

 アニマを倒した時、今までのような核を潰した感覚がなかったのだ。


「なんか…変な手応えだったな」


 まぁとりあえずユリに元に戻るところを見られる訳にはいかないし、さっさと退場するとしよう。


 ・・・


 ピピピピピピ


 そんな目覚ましの音を聞き、俺は目を覚ます。


「あー、昨日は疲れた」


 そう言いながら、思いっきり体を伸ばす。

 昨日のアニマは本当に大変だった。

 恐らくユリがいなかったら、俺もやられていただろう。


「全く、ユリ様様だな」


 そう言いながらベッドから降りようとして、俺は何か体が重いことに気がつく。

 単純に疲れてるだけかと思ったが、物理的に重い感じだ。


「母め、寝てる間に何かかけたな…」


 そう言いながら布団の上を見て、俺は目を見開く。


「ちょ!?えええええええ!?」


 そこには、変身した姿のひろがスヤスヤと寝ているのだった。

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