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魔法少女、増える

「ユリ、その姿!」


 前回ヌレーメンに追い詰められていた俺は、ユリが発しているであろう光の膜の中で驚愕する。

 ユリも遅れて気づいたのか、自分の服を見て目を丸くしている。


「へ、変身してますわ!」


 まさかこのタイミングで覚醒するなんて…。

 なんかカッコイイじゃん!

 俺が胸熱展開に目をキラキラさせていると、ユリは何やら悲しそうに呟く。


「変身パンクはないんですのね…」


 田中みたいな事を言い出したぞこの子。

 しかしユリは衣装変わるだけなんだな、俺なんて性別も歳も大分変わったってのに。


『ひろは心の闇がすごいんだろうねぇ』


 山本が頭の中で何か言っているが、俺はノーマルだぞ?


「そ、そんな事より…今はヌレーメンをなんとかしないと」


 俺は痛むお腹を抑えながら立ち上がろうとするが、あまりの痛みに立ち上がることが出来ない。

 そんな俺の様子に気づいたユリが再び涙目になる。


「ひ、ひろさん!なんとかしないと…」


 そう言いながら俺のお腹に触れる。

 するとまたも謎の光が現れ、痛みがスーッと消えていく。


「あ、あれ?痛くないぞ?」


 つい今しがたまで感じていた痛みがなくなっている。

 よくよく見ると、傷が塞がっているではないか。

 ユリも驚いて目を丸くしている、もしかしてこれ。


『ゆりはヒーラーみたいだね』


 山本が頭の中で教えてくれる。

 やっぱりそうか!

 どうやらユリは、結界や回復とか俺が出来ない補助的な事が出来るようだ。

 これなら多少無理しても色々助けてもらえるぞ!


 パァン。


 そんな事を考えていると、光の膜の外で水が弾ける音が聞こえてくる。

 そこにはとめどなく水の弾丸を撃ち続けるヌレーメンの姿。

 どうやらユリの光の結界を壊そうとしているらしい。


「ユリ、結界を維持するのは大変か?」

「い、いえ、全然なんともないですわ」


 ほんとに何でも無さそうな顔をするユリ。

 これはほんとに大丈夫そうだ。


「よし、それじゃあそのまま守りは任せた!」


 俺はそう言うと、火の玉を生成する。


「これでもくらえ!」


 火を扱うアニマとの戦闘になった時に強化された火の玉は、青色の光を発しながらヌレーメンに向かって飛んでいく。


「スケ!?」


 そして着弾、じゅわぁという音と共にヌレーメンが蒸発する。

 しかし…。


「流石に核まで遠すぎるか…!」


 火の玉はヌレーメンの体を半分程蒸発させて鎮火、ヌレーメンの体が再生していく。

 どうやら火力不足らしい。


「せめてもうちょっと体積が少なければ…」


 あと一歩届かず悔しがる俺を見ながら、ユリがハッとした顔をする。


「あ、あの!でしたら私が体積を小さくします!」

「え!?どうやって!?」


 ヌレーメンの弾丸で見る影もないグラウンドを見ながら、ユリがキリッとした表情を浮かべる。


「あのアニマさんを結界の中に閉じ込めます」


 なるほど、試してみる価値はあるな。


「アニマには核ってものが存在するんだ、集中したらふわっとわかるんだけど、それを囲うように結界をはれるか?」

「わかりましたわ!」


 俺の言葉にユリは頷くと、静かに目を瞑る。

 そしてあらぬ方向に結界が生成され、少し困った表情を浮かべる。


「どうやら私の近くにしかうまく結界がはれないみたいです」


 まぁ練習もしてないし、いきなりそんな上手く出来ないか。

 俺はなんやかんや家で練習したし。


「だったら近ずくしかないな」

「あ、あの!私まだ上手く光を操れなくて、動きながら使える気がしませんわ…」


 ユリはそう言いながらシュンと顔を陰らせる。


「ごめんなさい…役に立てなくてぇ!?」


 俺はそんなユリをお姫様抱っこする。


「ななななにを!?」

「これなら結界に集中出来るだろ?」

「ででで出来ませんわ!?」


 ユリが顔を真っ赤にしてあわあわしている。

 出来ないって言ってるけど、結界は安定してるし大丈夫そうだ。


「よし!いくぞ!」


 俺はユリを抱えたままヌレーメンに接近を試みる。

 凄まじい量の水の弾丸が飛んでくるが、ユリの結界のおかげでなんともない、結界すげぇ。


 そしてそのままヌレーメンの目と鼻の先まで来ると、ユリに向かって叫ぶ。


「ユリ!頼んだ!」

「は、はいですわ!」


 ユリはそう言いながら手を伸ばすと、ヌレーメンの体の中に手を突っ込み、核を隔離するように結界を生成する。

 すると核の部分だけが空中に残ったかと思うと、体の水がボトボトと崩れ、ベシャッと地面に転がる。


「このくらいの大きさなら...俺の火力で蒸発させれるよな!」


 そしてユリと入れ替わるように結界に包まれた核を掴むと、手の中に炎を生成する。


「燃え尽きろ!」


 その言葉と共にジュー!と物凄い音が響き渡り、核はしばらく結界の中でじたばたもがいていたが、すぐに蒸発してしまった。


「や、やった...」

「やりましたわー!」


 俺がポカンと口を開いていると、ユリが抱きついてくる。

 今回はかなり苦戦したな…。

 そう思いながらユリを降ろすと、ユリは少し寂しそうな顔をしながら地面に降り立つ。


「てかあっつい!絶対火傷してるじゃん!」

「み、見せてください!」


 そう言いながらユリは俺の手をにぎにぎすると、火傷がほわほわと治っていく。

 いやー、便利だわ回復魔法、治るって言っても変身とけるまで痛いのは変わらないし。


 改めて回復魔法のありがたみにニッコリ。

 ついでにそんな俺を見てユリもニッコリ。

 なんだこれ。


 そんなニッコリしてる俺達の耳に、パチパチと拍手の音が聞こえてくる。


「いや〜お見事ですね〜」


 そこには楽しそうに笑うつむじかぜの姿。

 そういえばまだこいつが残ってた!


 つむじかぜを睨みながら、ユリと共につむじかぜと対峙する。

 しかしつむじかぜは不思議そうに首を傾ける。


「今日はワタシは戦わないと言ったでしょう、また会いましょう!」


 そう言うとつむじかぜの姿が消えてしまった。

 それと共にボンッと音がなり、ユリの変身がとける。


「あ、あら?」


 どうやら本当にアニマの気配は無いらしい。

 ってことは俺もやばいな!


「ごめん、また後で会おう!」


 俺はそうユリに言うと、急いでその場を離れるのだった。

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