魔法少女の素質
第2章始まります。
それは俺が魔法少女になって1ヶ月、戦いにも慣れてきたとある日の事だった。
「これで…とどめだーー!!!」
「ぶひぃぃぃぃ」
俺の新必殺技が決まり、ドカーンという音とともにアニマが四散、シュタッという音とともに俺は地面に降り立つ。
「悪は絶対許さない」
「随分ノリノリだね」
決めポーズと共にドヤ顔を決めていた俺の前に謎空間が開き、山本が現れる。
「い、いいだろ別に!たまにはそういう気分にもなるんだ!」
俺が顔を真っ赤にして反論していると、山本はいつものフォルムのまま空中でふよふよ、俺の事を見ながら口を開く。
「大分変身にも慣れてきたね」
「まぁな、こんだけアニマと戦ってたらそりゃ慣れるって」
この1ヶ月色々なやつと戦ったからなぁ…。
ロリコーンや最初のくろいやつみたいな特殊な能力は何も無いやつがほとんどだが、中には火を操ったりするやつもいた。
おかげで俺は今、火の元素に関しては強火の威力を出す事が出来る。
あとはまぁアニマ倒すのは関係ないが、アニマを倒した後もある程度は強化された状態になれるようにもなった。
なにより1番の収穫は、変身時間を気合いで少し伸ばせるようになったことだ。
「今までは変身がいつ解けるか、いつ変身するかひやひやしてたからな」
最初の頃はしょっちゅうおねしょんして、田中の家にお世話になってたが、今では無いし、アニマと戦ったあとすぐに変身が解けて周りに奇異の目で見られることもなくなった。
つまり今俺はアニマを倒したが、まだ魔法少女形態なのだ。
「ここ最近ではネットニュースでも謎の魔法少女あらわるって話題にあがるようになったし、俺ってもしかして有名人?」
「新聞記者に見つかったのは痛手だったね」
山本はやれやれと俺の頭の上に乗る。
「おい、勝手に人の頭の上に乗るんじゃないよ」
「良いじゃないか、君もボクに乗った事あるだろう」
「1回だけな!お前は毎日のように乗ってくるだろ!」
そんないつものやりとりをしていると、1人の女学生が俺に近づいてくるのが見える。
「あ、あの!」
「ふぁい!?なんでしょう?」
随分と可愛い子だったので、変な声がでてしまった。
腰まで伸びた長い金髪のツインテール、お目目はパッチリで、変身後の俺より少し背が高いくらいか。
制服は近くのお嬢様学校、百合園学園の物だろう。
そんな彼女は俺の前でもじもじすると、告白するように俺の手を取る。
「あ、あなたのファンです!いつも応援してますわ!」
「え、え〜、照れるな〜、どこで見られたかな〜」
「ニュースサイトで見た時に心を奪われました!」
ニュースサイト見ただけで?やっぱ俺って有名人じゃん。
ついつい鼻の下が伸びてしまう。
「あ、あの、それで!もしよろしかったら…」
彼女がそこまで言いかけた所で、遠くからサイレンの音が聞こえてくる。
「おっと、もういかなきゃ!またな!お嬢さん!」
俺はキザったらしく言うと、持ち前の跳躍力でビルの上までジャンプする。
彼女はまだ何か言いたげだったが、警察に捕まる訳にはいかないのだ。
若干後ろ髪が引かれないこともないが、俺はビルからビルに飛びうつりながら、人通りの少ない路地裏までやってくる。
するとボンッと音が鳴り、視界が1段くらい上がったので、手を見ていつもの姿に戻った事を確認する。
「タイミングドンピシャ!今日もおつかれさんっと」
山本にそう呼びかけるが、山本は俺の頭の上でなにやらブツブツ言っている。
「どうしたんだ山本?今日のアニマ戦で何かあったか?」
俺がそう言うと、山本は「いや…」と一言、少し溜めるように言葉を吐く。
「ひろ、さっきの子、魔法少女の素質があるよ」
「え!?」
山本の言葉に俺は驚愕する。
「まだ覚醒してないけど、君の認識阻害を破る程度には魔力が固まってるね」
「それは直接俺を見たからじゃないのか?」
「ニュースサイトを見たって言っていただろう?写真を見ただけで君を見つけれるなんて大した才能だよ」
そうか、写真にも認識阻害がかかってるから、ニュースサイトを見ただけで俺とは判断出来ないのか。
「え?じゃああの子どうするの?」
「もちろんスカウトしにいくよ」
「へー、じゃあしばらく山本は忙しくなりそうだな」
俺は他人事のように鼻をほじる。
実際他人事だし。
そんな事を言っていると、山本は何言ってんだこいつという顔を俺に向けてくる。
「君がスカウトするんだよ」
「はぁ!?なんで!?」
「彼女のそばには新たなマスコット的存在の気配がある、マスコット的存在は近づきすぎると爆発するんだ」
何その設定怖い。
「だから君には彼女のスカウトに行ってもらう」
「…スルーする事は?」
「ダメだね、変なマスコット的やつが来たら、彼女は闇の魔法少女になって世界を滅ぼしかねない、魔法少女の先輩としてなんとかするんだ」
山本の頑として譲らない体勢に、俺は言葉を詰まらす。
なんか嫌だなぁ…。
でもまぁ魔法少女仲間が増えるチャンスとも言える。
何よりあの子とお近づきになれるチャンスかも…!
「ったくしゃーねーなー!そうと決まれば田中に相談するか!」
俺はデレデレと田中の家に歩き出す。
「ひろ、田中が最近変身した君を見てないと嘆いていたよ」
「そりゃそうだよ、変身してるとあいつ変な目で見てくるもん」
ついこの間なんて、Twitterで俺の事を彼女とか呟いてたし。
「けどあんまりお預けして、田中が変な事しないと良いね」
「まさか!いくら田中でもそうそう変な事なんて…お、田中!良いところに」
田中のアパートの前まで来た俺は、鉢合わせた田中に声をかける。
「おぎゃー!最近ひろたんに会えないでござるー!!」
全力で地面に寝転がり駄々をコネ出した田中を見て逃げ出したのであった。
とりあえず第2章終了、23節まで書き上げました!
第3章は未定です。