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「それでは・・・両手をお願いします」



 深夜。

 ちょうど0時を過ぎたころ。

 皆に見守られながら、俺は美晴の両手に両手を乗せた。

 アイギスによる俺の送還のための権能をいよいよ発動するためだ。


 別れの挨拶は済ませた。

 最後の最後に全員で記念撮影をしようと言い出した香の願いも叶えた。

 惜しむ言葉をたくさん貰えたというだけでぼろぼろと涙してしまう。

 四十路はいかん。涙脆すぎる。

 それでさえ馬鹿にされることもなく微笑んでくれた皆の笑顔が温かかった。


 しかし。

 唯一、さくらがごねた。

 挨拶らしい挨拶はしたのだが途中から泣き崩れて俺に縋った。

 帰らないでください、通じ合ったではないですか、と。

 そのまま泣き喚いて俺にしがみついて離れなくなってしまったのだ。

 彼女は仕方なく皆に引き剥がされた。



「あああ、武さん、待って、待ってください、お願い、お願いです・・・ねえ、待ってください・・・」



 向こうでレオンが羽交い絞めにしているさくら。

 感動的なシーンのはずがなんともシュールな図になってしまっている。

 でもほんとうに最後だから、彼女だけ別の場所に移動したりするわけにもいかない。

 結果、こうして見える位置で抑えているということになってしまった。



「・・・ふふ」



 さくらの横で澄まし顔をしている香。

 俺と視線が合うと、にこり笑顔を返してくれた。

 あれだけ俺を愛してくれた彼女はさくらのように縋ったりはしなかった。

 むしろあっさりしたもので「元気でね」と、友達とまた会うときのような挨拶を交わすだけだった。

 あまりに対照的なふたりに俺の方が「どうして」と口にしてしまいそうだった。

 でも、その疑問をぶつけられることはもうないのだ。



「いきます。――其の交差したる因果の結び目よ・・・」



 美晴が詠唱を始め、彼女の周囲に白い魔力が満ちる。

 いよいよかと緊張してきたところでそれは起こった。



「駄目ぇ!!!」


「レオン、何を!? ああ、さくら!」


「きゃあぁ!」


「うお!?」



 レオンが突然さくらの制止を解き、解放されたさくらが美晴に飛びついた。

 この期に及んでそんなことをすると思っておらず誰もそれを止められなかった。

 美晴はさくらに押し倒されてしまう。



「はぁ、はぁ、はぁ!! そう、そうなのです!!」


「さくら!?」


「うふ、うふふ!! あと4時間もすれば魔力は消え去るのですよね! そうすれば貴方はここに残ることになる!」


「九条 さくら! 君は何をするつもりだ!」


「おいおい、それはやっちゃいけないよ」



 腕を極め美晴を地面に抑えつけたさくら。

 見兼ねた会長と凛花先輩がさくらを引き離そうと手を伸ばす。



「寄らないで!」


「むぅ!?」


「うお!!」


「ソフィア!?」


「あは、あははは! 良い仕事です、ソフィアさん!」



 近付いた会長と凛花先輩を、今度はソフィア嬢が割って入って吹き飛ばす。

 高笑いするさくらの傍らに彼女は無表情で立ち尽くしていた。

 何が起こっているのか理解が追いつかなかった。



「っ九条、せんぱ・・・! 放して・・・!」


「安心してください、数時間後には解放します」


「駄目、それじゃ先輩が・・・」


「それで武さんが残ってくれるのです。小鳥遊さんも望むことですよね?」


「違う! 私は・・・」


「黙って」


「っ!? うぐ・・・」



 さくらは美晴に当身をして意識を奪う。

 不穏な状況にいち早く適応した凛花先輩がさくら目掛けて駆けた。

 が、その足は直前で急ブレーキをすることになった。

 目の前に刀が振り下ろされたからだ。



「結弦!? 君まで!」


「おい、どうしちまったんだよ、お前ら!!」



 気付けばレオンもジャンヌもリアム君も、さくらの傍に立っていた。

 彼女を守るよう、俺たちに武器を向けて。

 よく見れば彼らの周囲には黒い魔力が漂っていた。

 あれは・・・澱!?

 彼らの瞳は虚ろで、その意思が自分のものではないと窺い知れた。



「さくら! あなた、何をしてるのかわかってるの!?」


「ええ、わかっていますよ泥棒猫さん。散々に煮え湯を飲まされましたから、どうすれば良いのかも、しっかりと」


「!?」



 口調はさくらのものであっても正気ではない。

 皆がそう感じていた。

 だが武器を構えた5人を前に、誰も動けないでいた。



「安心してください、手を出さなければ誰も傷つきません。夜明けには戻ってきます」


「おい! さくら!」


「武さん。貴方でも邪魔は許しませんよ。夜も遅いですから、このままお休みになってくださいね」



 にこりと妖しげな笑みを浮かべて。

 さくらは美晴を担ぎ上げると5人を連れて母体(マザー)の出て来た穴へと滑り降りて行った。

 あまりの出来事に、残された面々はただ茫然とそれを見送ることしかできなかった。



 ◇



 突然のことで驚きはしたが、皆が冷静な話し合いを始めるのは早かった。

 さすが先輩たちだと思った。



「どうして5人はさくらに従ったの?」


「さくらの中にあった澱が共鳴(レゾナンス)を通じて彼らに渡ったのよ」


「それは~まさか~、シスター澪がコウガ様の時に受け取ってしまったという~」


「ええ、恐らくはそれと同じ。彼らはさくらを通じて澱に囚われてしまった」



 この場に残ったのは7人。

 俺と香と、アレクサンドラ会長に凛花先輩、聖女様とデイジーさん、そして先輩。

 さくらを含めた主人公たちと美晴は母体(マザー)がいた穴に入り込んでしまったままだ。



「澱は理性を奪う。欲望の欲するままに行動するようになる。だから私は澱を持っていたときに感情を封じていたの」


「それじゃ、さくらは武を手に入れたいがためにこんなことを?」


「そうなるわね」


「でも、九条さんはいったいどうして澱なんて持っていたの?」


「恐らくはアトランティスで時空(プレインズ・)結界(フィールド)を破ったときだ。飛び散った澱を全身に浴びて倒れたと聞いた」



 会長の推測に思い出す。

 そうだ、あのとき!

 さくらが倒れたというあのときだ!

 俺がさくらの中の澱をぜんぶ消せなかったんだ!



「くそ、あのときに白の禊(ピュリファイ)を俺が使えてさえいれば・・・!」


「過去を悔いている時間もないわ。いずれ魔力の消滅とともに澱も消え、そのときに彼らは正気に戻る」


「そのときには京極 武の帰る術がなくなるというわけか」


「・・・・・・くそっ!」



 突撃すると誰かが死傷する可能性がある。

 かといって放置しても俺が帰れない。

 円満解決にはさくらたちをどうにか制圧するしかないのだが・・・。



「状況把握は十分だろう。君が帰ることができる猶予はあと数時間もない。急がねば」


「でも、でも! あの6人相手だよ!? 無理だよ~」



 そう、さくらだけでも厄介だというのに、立ちはだかる主人公全員を相手にすることになる。

 正気に戻す方法があれば良いが、生憎、そんな手段はない。

 あったならば聖女様があんなに苦しむことはなかったのだから。



「アタイが相手するとしたらレオンとソフィアの2人だね。闘神祭のときにやったからできるだろう」


「では~ワタシは結弦様をお相手しましょう~」


「ジャンヌ=ガルニエは私が抑える。あの素早さは私でないと無理だろう」


「さくらは私が相手するわ」


「そう。恵、私と一緒にリアムの相手をお願いね」


「う、うん・・・でも大丈夫、お姉ちゃん?」


「お、おいおいおい、ちょっと待て、待ってくれ!」



 勝手に話が進んでいた。

 あいつら相手にいきなり殴り込むなんて血気盛んすぎんだろ先輩方。



「京極 武。何を止めるのか。君の時間が無くなるだけだぞ」


「いや待ってくれって。魔物との戦いならいざ知らず、こんなことで誰かが怪我するくらいなら止めてくれ」


「アタイたちの実力は知ってるだろう」


「そうじゃなくてよ。先輩たちにしろ、あいつらにしろ、俺は傷つくのを見たくない。それに目的は俺のはずだ、少なくとも俺を殺すことはできない。なら、俺が行くのがいちばん良いだろ。先輩たちはさ、ここで待っててくれ」



 俺は先輩たちを手で制しながら言った。

 うん、ちょっと格好良いだろ、と自分で思ったりしながら。



「京極君、無理だよ」


「無鉄砲です~」


「無謀だな」


「阿呆か」


「馬鹿ね」


「無計画」


「あんまりな言いようですね!?」



 台無しだよ!!

 確かに行き当たりばったりだけどさ!

 でもそれしか無くね?

 俺が行って説得する以外に円満に解決する方法なんてある!?



「ではこうしよう。説得を試みるのは良い。だが失敗したときは我々が突入する」


「いや、でも・・・」


「でもも何も、京極君は帰るんでしょ? 今しかできないんだから、それを譲っちゃ駄目だよ」


「そうだよ武、貴方は帰るの。水を差されたからって諦めたら許さないよ」


「・・・わかったよ。じゃ、説得が失敗したら頼むよ、先輩方」



 俺は覚悟を決めた。

 皆が争う姿は見たくない。

 何とか説得して円満に解決できるように頑張ろう。


 ・・・ほんとに澱って説得で何とかなんのか?

 黒い魔力。悪意。何かしらの特効薬でもあれば良かったのに。



 ◇



 あの穴を滑り降りるわけにはいかない。

 深さもわからねぇし着地が悪ければ死んでしまう。

 俺は遠回りをして正規ルートで侵入することにした。

 場所はわかっている。

 ここから10分ほど歩いた先にある大岩の亀裂だ。

 持ってて良かったゲーム知識。


 真っ暗になってしまうので香が持って来たランタンを持ってきた。

 こつこつと自分の靴の足跡が反響する。

 なぜか石廊なのはきっとアトランティスと同じ理由。

 古代人の遺跡みたいなものだ。


 というか・・・勢いで来たけど魔物が居なくてよかった。

 まだ魔力は消えてないからな。

 もし1匹でもいれば即死しかねん。

 ここは魔王の御前。

 強い奴しか出ねぇ場所だからな。


 急に怖くなって戦々恐々としながら進む。

 よく考えたら明かりなんてつけたら相手に丸わかりじゃん。

 あ、丸わかりで良いのか。

 隠密なんて求めてねぇし。


 長いような短いような迷路を進むこと15分。

 開けた空間に出たことで、ここが終着だと理解した。



「あら、武さん。夜更かしなんて悪い子ですね」



 場に似つかわしくない、楽しげに鈴を転がすような声。

 間違いない、さくらだ。



「ちょっとおいた(・・・)をした子にお話をしなきゃいけねぇからな」


「ふうん。それが女狐のことでしたら応援して差し上げるところですが」



 不気味に声が反響する。

 自分の声が何を言っているのかわからなくなってしまいそうで。

 それが彼女の雰囲気を余計に恐ろしく演出しているようだった。


 大きな空間の真ん中に堂々と彼女はいた。

 彼女は時間を潰すだけだ。

 隠れる気も更々ないのだろう。


 大穴から垂れ下がる月明かりのヴェールの中に、さくらと5人の姿が浮かび上がった。

 美晴はその足元に手脚を縛られてぐったりとしていた。


 そして・・・彼らを見て息をのんだ。

 共鳴(レゾナンス)しているのだろう。

 彼ら全員から立ち上るオーラが循環し、混ざり合い、虹色に輝いていた。

 でもその美しさを台無しにするかのように黒い帯が間に入り込んでいるのだ。

 あれだ、あの黒いやつが元凶なんだ。



「さくら。話が急だったのは悪かった。もうちょっと話をしよう」


「はぁ・・・残念です」


「?」


「武さん、貴方がわたしを求めて下さるならお話を聞こうと思っていました。今更、説得ですか? 言いましたよね、邪魔をするなら許しません、と」



 さくらは、にぃ、と口角を上げて俺を見下すような視線を寄越す。

 周りの5人が俺のほうへ歩み出ようとしていた。



「ままま、まぁ待てって! ほら、そいつらが一緒にいたら無粋じゃねえか! 離れた向こう側でさ、俺とさくらだけで、ちょっとくらい甘い雰囲気になろうぜ!」



 広い空間の端を指す。

 入ってきた側からみて右側の奥だ。


 咄嗟すぎて誘い方が露骨になっちまった。

 こんなのでも乗ってくれ・・・。

 乗ってくれなきゃ・・・どうしよ。



「甘い・・・うふふ、良いですよ♪ 時間より早いですが、わたしとの逢瀬をご希望というのであれば」



 ころころと笑いながらさくらがこちらへ歩み出る。

 良かった、とりあえずは話ができそうだ。


 5人はきっと彼女の思うがままに動くのだろう。

 力技ではどうにもならない。

 なら、こうしてサシで話をするほうが可能性があるというものだ。



「さぁ、参りましょう」



 さくらは俺の手を取るとぐいぐいと引っ張って端へと導いた。

 引っ張られるがままについていく。

 まるで俺と彼女が駆け落ちをして、孤島の洞窟へ逃げ込んだかのようなシチュエーションに思えた。



「ああ、武さん! ようやくわたしのもの(・・)になるのですね!」



 さくらは俺と向き合うと、顔、肩と順に撫でまわすかのように触れてきた。

 そしてそのまま背中に手を回し俺を抱きしめた。

 いつもならこんなことをされれば緊張でどうにかなってしまいそうなところ。

 でも今はトキメキなんて破片も感じなかった。



「・・・どうしました? 彼女(・・)が気になってしまいますか? 何なら始末しても良いのですよ」


「!! い、いや、そんなことはない!」



 俺が反応しない様子を見て物騒なことを言いだすさくら。

 慌てて彼女の背中に腕をまわして抱いてやる。

 機嫌を損ねれば美晴を害しかねない。

 言われるがままにするしかない。



「・・・ねぇ武さん。わたしが貴方のことをずっとお慕いしていると、ご存じでしたよね」


「うん」



 聞き方によれば淫靡な声にさえ聞こえるというのに。

 その声は俺の心に何一つ響かない。

 どうしてこう虚無に感じてしまうのか。



共鳴(レゾナンス)もしましたし・・・貴方もわたしのことを慕ってくださっています」


「・・・・・・」


「ですが、わたしは気付いてしまいました。貴方の心を占めているヒトがいることを」



 さくらは俺の瞳を覗き込む。

 急に表情を消したその顔を見てぞくりとした。



「貴方の元の時代。そこに貴方の想い人がいる。だから貴方はずっとわたしを拒否していたのです。彼女が居る限り、貴方はわたしを受け入れてくれない」


「・・・!!」



 雪子の話はこれまで誰にも話をしていない。

 だというのにどうしてそれに気付いたんだ!?



「うふふ、どうしてわかったのか、という顔をしていますよね」


「・・・俺を、どうしたいんだ」


「どうもしませんよ。ほら、澪先輩と同じですよ」


「同じ?」


「ええ。運命に弄ばれ、想い人とどうしようもなく引き裂かれてしまう。やがて時間が心を溶かし、傍で支えてくれた人に惹かれていく」


「それは結弦と聖女様のことか」


「そうです。武さんも同じ。帰りたくも帰れず、彼女と永遠の別れをしてしまう。そして――」


「――やめろ!!」



 俺は大声を出した。

 さくらはびくんと体を強張らせる。

 言われるがまま聞いていたが――その先は聞くに堪えなかった。



「さくら。お前のやろうとしていることは、お前の尊厳を壊してしまう。やっちゃ駄目だ!」


「尊厳? そんなもの、とうに壊されてますよ! 貴方の心を手に入れられないと知ったときに!」


「そうじゃない! それでもお前は強く綺麗なままだったんだ! その心にいる悪い奴に唆されてるだけだ! そいつが消えたら絶対に後悔する!!」



 必死に彼女の顔を見据えて訴える。

 だがさくらは醒めた瞳で俺を見ていた。

 だからどうした、と言わんばかりに。



「後悔なんて、もうたくさんしました。女狐に先起こされたときからずっと。あの土手で貴方を引き留められなかったときから、ずっとです!」



 どこまでが彼女の声(・・・・)なのか。

 俺にはわからなかった。

 ただ、彼女へ届けるべき言葉を重ねた。



「俺が、俺が好きな九条 さくらは! その雪のような真っ白な肌、銀色(プラチナ)の瞳に、心根さえも白く輝く人なんだよ! 優しくて礼儀正しくて、それでいて強い心を持ってるんだ! 俺のことを一途に想ってくれて、ずっと真っすぐに慕ってくれたんだ! 俺はそんなお前だから絆されて好きになっちまったんだよ!! 俺が好きなさくらは、今のお前みたいに姑息なことをする奴じゃない!!」


「・・・・・・そうですか、残念です」


「ぐ!?」



 さくらはその醒めた表情のまま、俺の腕を捻った。

 呆気なく俺は地面に押さえつけられてしまう。



「がはっ!? くそ、さくら、目を覚ましてくれ!!」



 さくらは腕を捻り上げたまま、俺の身体の上にのしかかった。

 俺に顔を近付けて耳元で囁くようにして言った。



「覚めてますよ。折角、ふたりきりで過ごせると思ったのに無粋なことを言うからです。ほら、これなら動けないでしょう? こうしてずっと傍に居てあげますから・・・」



 くそ、説得なんて駄目だったか!

 彼女の顔を見ようと、首を何とか横に向けた。

 そこにぽたり、と。

 俺の頬に水滴が落ちた。



「! ・・・さくら?」



 見れば彼女の頬が光っていた。



「う、うう・・・く、はぁ、はぁ、はぁ・・・」



 2滴、3滴。

 ぽたりぽたりと俺の顔に、彼女の熱い想いが降ってくる。

 綺麗な顔をくしゃりと歪ませて。 

 不覚にもその泣き顔が奇麗だと思ってしまった。


 そのさくらの銀色の瞳の奥。

 まるで燃え盛るように黒い影が踊っているのが見えた。

 やはりあいつが・・・!!



「そこまでだ! 京極 武から離れるのだ!」



 アレクサンドラ会長の声が響いた。

 大勢の足音がこの部屋の中へ飛び込んで来るのがわかる。

 しまった、先輩たちに失敗したと思われたのか!?



「ああ・・・折角のふたりきりの時間を。無粋な人たちです。武さん、大人しくしていてくださいね」


「あぐっ!?」



 当身!?

 首と背骨の間の、神経が集まっているあたり。

 的確に突かれたその衝撃が俺の意識を奪うのは一瞬だった。



「すぐに終わらせますから」



 最後に聞こえたその声はとても寂しそうだった。













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