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 ゆらゆらと緩慢な揺れが続く。

 まだ真っ暗な空に数多の星が窓から覗いていた。

 天然の星空を天蓋としたベッド。

 贅沢に過ぎるそれを愉しめるのはこの僅かな時間。

 さも宇宙船に乗っているかのような妄想を抱くくらいは許されて良いだろう。



「・・・武」


「起こしたか?」


「ううん。ずっと見てた」


「ずっとって、俺の寝顔を?」


「うん」


「・・・そっか」


「ふふ」



 少し恥ずかしくもあったけれど。

 彼女がただ俺を見つめていたことは溢れる愛情の為せる業だと知っていた。


 腕枕していた左手を曲げて彼女の髪を、頬を撫ぜてやる。

 すると、彼女はぐっと身体を寄せて体温が伝わるように密着してくる。

 それが愛しくて額に口付けを落としてやる。

 ぴくりとそれに反応したのが嬉しくて、2度、3度と雨を降らせた。



「あのね」


「うん」


「もうすぐなんだなって・・・」


「怖いか?」


「怖いよ。だって・・・むきゅ」



 言葉にすると怖いことはより怖くなるだろう。

 そう思って怖さを感じないよう、その言葉を遮るように両腕で頭を抱いてやる。

 すると彼女も腕を回してぎゅうと抱きついた。

 想いの強さが抱きしめる強さで伝わるなら、壊れるほど抱いてやりたい。



「・・・ごめんな」


「謝らないで」


「でも、ごめん」


「駄目」


「ごめんて」


「駄目だよ、何も悪くない」



 彼女へ、何度も重ねてしまった罪。

 それを告白したのはつい半日前のことだった。

 土下座して謝罪する俺の言葉を、女神様は飄々と聞き流した。

 「ふうん。言いたいことだけ言って、私の気持ちはどうしてくれるの?」という言葉を返礼として。

 その結果としてこうなって(・・・・・)いる。

 拒否できるわけもなく。

 もうなるようになれ、と深く考えることを放棄することにした結果だった。



「聞いて」


「ん」


「あのね、私は貴方のやりたいこと、やることをぜんぶ受け入れてるの」


「うん」


「ほかには何も要らない。なんでも好きにして良いから」


「・・・・・・ん」


「だからひとつだけ約束して」



 『約束』。

 彼女とのこの絆は、3年という長い時間をかけて守られた約束から生まれた。

 だから彼女とする約束はとても大切なものと感じている。

 軽々に扱うものじゃない。

 それは彼女も心得ている節があった。


 暗闇の中でもわかるオニキスの輝きが俺を間近で見つめていた。

 でも吸い込まれそうなその瞳から彼女の心の奥底を知ることはできない。

 


「なに?」


「死なないで。絶対に、もう死なないで。3度目は許さない」


「うん。そりゃあ、俺だって死にたくねえし」


「貴方が帰って来ないなら私は追うよ。どこへでも、どこまででも」


「ええ!? おい、命を粗末にすんなよ!」


「死ぬことが前提なんて言ってない。そっくりそのまま熨斗をつけてお返しするよ」


「っ・・・わかった。気を付けるから。約束する」


「うん、約束。ほんとうに・・・貴方は自分の命の扱いが軽すぎるから」



 ふわりと俺のほほに口付けをして。

 ぎゅっと俺の左腕を抱える彼女。

 少し声が震え、ぐすりと鼻をすする音がした。

 彼女の目元を拭ってやって、頭を撫でてやった。


 1度目はAR値を求めて。

 2度目は皆を逃がすために。

 理由だけなら格好良いかもしれない。

 でも死なないためにやってることで死んでたら世話もない。


 2度もゲームオーバーになったはずの俺がこうしてここにいる。

 こんな幸運、奇跡以外の何物でもないのだから。

 もしかしたらどこかで描かれた世界線なのかもしれない。


 もしそうだとするなら。

 モブを目指していたはずの俺は、いつの間にか物語の主人公的な立場になっていたのだろう。

 今度は俺から彼女の上に身体を重ねた。

 青白い光が互いの想いを汲んで心に訴えかけていた。



 ◇



 人類によるムー大陸への大攻勢は過去に2度あった。

 1度目は北米のトゥランとその関係者が主体となり大攻勢をかけた『ヒエロス・ロコス』。

 2度目は欧州のキャメロットにより立案された『希望の(ホープフル・)十字軍(クルセイダー)』。

 いずれも失敗に終わっているわけだが、これにより相手の陣容を知る手がかりは作れていた。


 そして今回、3度目となる大攻勢を高天原学園が主体となり計画していた。

 その作戦名は『アメノムラクモ』。

 高天原学園および世界政府肝入りの作戦であり、過去の失敗も踏まえて周到に計画されたものだ。

 ラリクエ(ゲーム)でもあった、魔王討伐のための最後の戦いだ。


 魔物は攻撃対象を見ると殺到するという性質がある。

 この性質を利用するため、アメノムラクモは3方面作戦を基本としていた。

 先に2方面で上陸し敵を引きつけ、残りの1軍で手薄となった敵本体を叩くというものだ。 

 実際、ラリクエ(ゲーム)でもそう解説されていた。


 太平洋のど真ん中にあるムー大陸。

 日本にある部隊は北西から。

 北米にある部隊は北東から。

 そして欧州からの遠征軍は南から、タイミングをずらしてムー大陸へと上陸するというのが概要だ。


 ただ、現実は想定外の魔物側の大攻勢に晒され、人類側の戦力は大幅にダウンしていた。

 奇跡的にその攻勢を退けたのがアメノムラクモ作戦の中心である日本だった。

 だからこのタイミングで攻勢をかけることができている。

 高天原学園に残っていた生徒をはじめ、最前線に最も近い日本列島に手厚い防衛線を作っていた世界政府軍がこの作戦の主力だ。


 日本とは対照的に、欧州と北米、そして日本以外のアジアの広い地域では大惨事の再来と呼ばれるような状況だという。

 人類は特定の地域に戦力を集中させ何とか魔物の襲来を持ちこたえていた。


 北米では西海岸のロサンゼルスを中心として周辺の都市を人類が死守した。

 リアム君の故郷であるフェニックスも無事だったそうだ。

 トゥランの学生たちも、世界政府軍も、西海岸のその一帯を目指して転戦し、何とか生き残ったらしい。


 欧州の被害は最も大きかった。

 ユグドラシルとともに教団が壊滅したことで魔物との全面戦争に突入したことが原因だった。

 教団へと恭順していた国々は軒並み魔物の犠牲になったという。

 イベリア半島を中心にイギリスまでの、大西洋側の細長い地域で反教団勢力を作り上げていた貴族連合が、何とか人類の生存域を確保している。

 このため今回の大攻勢への戦力を拠出することが難しい状況だった。


 俺たちはその欧州の遠征軍の代替としてこの作戦に組み込まれた。

 戦艦えちごおよび戦艦アドミラル=クロフォードの戦力はそれだけ大きかったからだ。

 突撃部隊として最後に上陸し魔王を討伐するという重責を負うことになった。


 俺の周囲の主人公を含めた優秀な人材が勢揃いしているのだから然もありなん。

 アイギスが「人類総戦力の3分の1」と評しただけはある。

 俺が考える魔王討伐の理想的な(・・・・)かたちが自然と出来上がりつつあっった。


 実際、軍事的にちょうどバランスが取れているらしい。

 このあたりの軍事作戦は世界政府のお偉いさんが考えたそうだ。

 実働部隊は言われるがまま従うだけ。

 そんなわけで、俺たちは黒海から幾度かの補給を挟んで船旅を続けていた。



 ◇



 先刻、小鳥遊さんからこんな入れ知恵をされた。

 「先輩、共感(エンパシー)を促進する方法があります。興味ありますか?」と。

 それがアイギスからの情報だとわかっていても俺はその言葉に飛びついた。

 だって香との約束を守るためには作戦の成功率を上げるしかない。

 それには戦力を向上させるのが手っ取り早く、可能な限り打てる手段は打ちたい。


 実は主人公連中に確認したところ皆が誰とも共鳴していないという事実が発覚した。

 ジャンヌ&リアム君あたりはしてるって思ってたのに「傍に居ると気分が良いことがある」とかなんとか。

 共鳴率が50%手前ってことか?

 あんなに仲が良くても共鳴しないなんてどうなってんの?

 もしかして致してないから?

 皆、そんなに初心なの?

 いやさすがにそれを俺の口から勧めるのはどうなのよ。


 そんなわけで、俺は入れ知恵を使って彼らの共鳴(レゾナンス)を後押しをするために順番に声をかけた。

 ふたりひと組で集まってもらい個別に対応することにした。



 ◇



「武くんと手を繋ぐと安心する~!」


「そ、そうね。子供っぽいけど悪くないわ」


「・・・始めんぞ」



 リアム君の個室へ集まった俺とジャンヌ。

 3人で円座に座り、互いに手を繋いで円環を作っていた。


 リアム君はいつもどおりの笑顔。

 ジャンヌもツンデレっぽい雰囲気でデレてる。なんか顔が赤い。

 ・・・つーかさ、これ、俺が後押ししなくても良くない?

 それより俺と共鳴してもらっちゃ困るんだけど。


 よく考えたらリアム君と俺は共鳴寸前だった。したんだっけ?

 あれはシミュレーターの中だからノーカンだよな。たぶん。

 ジャンヌともシミュレーターの中で・・・ノーカンだノーカン。

 それにアトランティスの前に滾々とオタク道を真髄を説かれたっけ。

 いや関係ないな、あれは。


 一抹の不安を抱えながらも俺は詠唱を始めた。



「其の境は彼我になし――魔力同期(マジック・リンク)



 白魔法の中級汎用能力(コモン・スキル)が発動する。

 触れた部分から魔力を導通させ、濃度が均一になるよう魔力が動くというもの。

 AR値の高い俺の魔力がふたりとへ流出していく。

 しばらく喪失感が続くと徐々に収まってくる。

 3人で魔力濃度が一定になってきた証拠だ。


 すると一方的だった流れが向きを変えて循環を始める。

 左手からリアム君の穏やかな茶色の魔力が流れて来る。

 右手からジャンヌの情熱的な紅色の魔力が流れて来る。

 リアム君の明るく癒されるような魔力と。

 ジャンヌの鋭くも優しい魔力と。

 それぞれが俺の中で語りかけてくる。

 僅かに感じるふたりからの俺への想い。

 でも今はそれに感化されないよう、無心になって待つ。


 やがてふたりの魔力は俺の中で循環していく。

 混じり合う、白と赤と茶。

 それらはまた、俺の両腕をとおしてふたりへと環っていく。



「ん・・・あったかい。これ、リアムだ」


「あは、ジャンヌだぁ! 武くんもいる!」



 ばちんと静電気のように弾ける衝撃があった。

 すると急に俺の身体が熱くなってくる。

 あ、これ。レゾナンス。

 え、俺まで一緒に共鳴してる?


 見ればジャンヌもリアム君も目を閉じて循環する魔力に感じ入っている。

 ふたりは涙を流しながら笑みを浮かべていた。

 俺たちの身体からは赤と茶の魔力が混じり合ったワインレッドのオーラが浮かんでいる。

 ああ、間違いなくレゾナンス。


 うん、成功したのは良い。

 良いんだ。

 良いんだけど、これ、俺まで巻き込まれてる。

 なんかぽかぽか温かいを通り越して熱い。

 そっと手を離して脱出しようとしたけど、がっちり繋いで放してくれない。

 なんかこのパターン、前にあったんだけど!


 だんだんと目が回ってくる。

 あああ、なんでこんな、魔力酔いみたいになっちまうの!?

 香で慣れたんじゃねえのか!? どして!?

 そもそも俺だけ酔ってこいつらが平気なのなんで?


 ぐるぐる視界が回り、やがて平衡感覚が消えてくる。

 びくびくと身体が跳ねてる。

 ふたりとも気付いて放してくれれば良いのになんかレゾナンスに夢中だよ。

 ああね、最初に交感したときの感激は俺も覚えてるよ。

 でもこれ、第三者の俺が一緒なのはどうなんだ。

 こいつらの想いの中に俺が邪魔してねぇの?


 いろいろと余計なことを考えているうちに前のめりに倒れたところで俺の意識は途絶えた。

 しばらくして目が覚めるとジャンヌとリアム君が両側に添い寝していた。

 リアム君だけじゃなくてジャンヌまで毒気が抜けたように顔を赤らめてにこにこしてた。

 え、なんで俺に抱きついてんの?

 ・・・大丈夫だよね、何もしてないよね!?



 ◇



 お次は結弦とソフィア嬢。

 事情を説明するとソフィア嬢の個室へ呼ばれた。

 いやいやいやいや、女の子の部屋なんて!

 固辞して結弦の部屋でと言うと「わたくしの大切な方をもてなしたいのですわ」と懇願される。

 結局折れてしまい、こうして彼女の部屋へ集まっていた。



「それでお前らって、共感(レゾナンス)しそうな感触はあったりすんの?」


「いえ。結弦様のことを強く信頼はしているのですが、なかなか共鳴に至りませんの」


「オレもソフィアとは仲良くしてるよ。放課後に食事したり寝るまで一緒にいたりしてたから」


「その。抱きしめたり、キスをしたりもしております。昨日も添い寝いたしましたわ」


「なるほど・・・」



 いやそれ、既に恋人同士っぽい過ごし方だよね。

 むしろそこまで至ってかなり濃厚な接触までしてんじゃん。

 どうしてそれで共鳴してねぇの?

 何か問題があるとしか思えねえんだが。


 ツッコミを声に出さないよう、用意されたアールグレイに口をつける。

 芳醇な香りが少し気を宥めてくれた。


 こんだけ好いててどうして共鳴できないんだろ。

 ジャンヌ&リアム君みたいに初心な感じでもない。致す手前まではしてるんだし。

 俺は香とこんなスキンシップする前には共鳴していた。

 話を聞いてる限り、共鳴しててもおかしくないと思うんだが。

 平均的な共鳴に至る条件ってどこまでなんだろ?



「ん~・・・まさか、他に気になる人がいて気もそぞろってことだったり?」


「っ!! ごほっ、ごほ! ご、ごめん。むせた」


「・・・・・・」



 同じく紅茶を啜っていた結弦があからさまに動揺する。

 俺から目を逸らして、視線を泳がせている。

 いやお前、わかりやすすぎる。

 それソフィアに対してどうなのよ。



「ちょっと話を聞こうか、結弦」


「おおお、オレはソフィアが一番だよ!」


「落ち着け、大丈夫だ]



 慌てる結弦の両肩に手をかけて宥める俺。



「世界平和と天秤にかけるんだ、洗いざらい吐いてもらうから」



 ◇



 そうして俺は結弦に白状させた。

 結弦は俺がアトランティスへ出立した後の出雲での出来事について話した。

 聖剣を知り、彼女の過去を知り、彼女の中の闇を斬った。

 何とか彼女の一命を取りとめるために脱出して。

 その後、回復したふたりで恐山の龍脈まで閉じに行って日本を守った、と。



「それで澪先輩(・・)と一緒に行動するうちに惹かれていって。ずっと俺に甲斐甲斐しくしてくれるから」


「劇的ですわね。澪様が結弦様に心を寄せるに十分なきっかけですわ」


「結弦はどうなんだ? 聖女様のことどう思ってる?」


「・・・昔話を聞いて同情はしてた。それだけだったんだけど」


「けど?」


「ああもう! あの笑顔なんだ! あんなに氷みたいに冷徹だったのに急にとろけるような笑顔で接してくるようになったんだよ! 無理だよ!!」


「「・・・・・・」」



 結弦は真っ赤になって突っ伏した。

 ソフィア嬢と目を合わせて頷き合う。

 こりゃもう間違いない。

 聖女様のアプローチもそうだし、結弦のこの反応もそう。

 そもそも聖女様を呼び捨てにしてた時点で怪しかったんだ。


 ・・・いやそれはそれで良いんだけど。

 そもそもこれ、ソフィア嬢への裏切りだよね?

 どうすんの、この状況。



「まぁ相棒(バディ)! なんてこと!」



 ほら、ソフィア嬢が眉を吊り上げて怒ってんじゃん。



「モノにするならしっかりと掴んでおくべきですわ!」


「うん、だよな。共鳴までもうちょっとなんだよ」


「は?」



 思わず声をあげちまったじゃねえか!

 どうしてそういう反応になんの!?

 ああもう、久しぶりにラリクエ倫理に遭遇したよ!


 とりあえずソフィア嬢が結弦に対して悪感情を抱いてなさそうだから良しとする。

 


「んん、結弦の事情はわかった。そんで、ソフィアはどうなんだ? お前も何かあるんじゃね?」


「ななな、なんのことですの? わたくしは結弦様が一番ですわ!」



 焦って目を逸らすソフィア嬢。

 ああね、さっき結弦だけじゃなくてソフィア嬢も動揺してたの、見逃すわけないじゃん。

 つーかソフィアさん、揺さぶられると弱いのはゲームと同じなんだよ。



「ほら落ち着けって。結弦だけだと不公平だろ?」


「~~~~~~!!」



 ◇



 あわあわとしたまま事情を告白したソフィア嬢。

 事情が事情だけに俺から責めるわけにもいかなかった。



「・・・まさか相手がさくらとは」


「あああの、あの! 成り行きですの! わたくしから求めたわけではございませんの!」



 同じく皆が行動を別にした、俺がアトランティスへ行っている間。

 俺を追うための行動を開始したさくらに語られ、意気投合し、迫られ、そして致してしまったという。

 恐る恐るといったようにソフィア嬢の口から語られるさくらとの蜜月。

 いや蜜月というかなんというか。

 さくらの強引な一面を知ってしまった。

 俺という目的のために結託したふたりの共感から生まれた共鳴(レゾナンス)っぽい。


 うん、そうか。

 そうなのか。

 百合ルートを想定してなかった俺も俺だけど。

 結弦×聖女様よりも衝撃が大きくて呆然としてしまった。



「武様のご無事が確認できたところで自然消滅ですわ。さくら様はやはり武様に夢中でいらっしゃいますから」


「んでも共鳴はしたんだろ? さっき隠してたわけだ」


「・・・・・・ええ、はい」


「ああ、良いんだ。怒ってるわけじゃない。ふたりがうまく共鳴できない事情が知りたかったんだ」



 暴かれて慌てたままのソフィア嬢を宥めながら考える。

 そうだよな、こいつらが別人と共鳴したとしても、このふたりでも共鳴できるはずなんだ。



「お前らお互い、相手を咎めるつもりはないんだろ?」


「ええ、勿論ですわ。わたくしと結弦様の関係と、結弦様と澪様のそれとは別のお話ですから」


「うん、オレもソフィアやさくらの関係は別で考えてるよ」



 ふたりともすっきりしてんね。さすがラリクエ倫理。

 俺には真似できんよ。

 このふたり、息は合ってるんだから、やるだけやってみるのも良いか。

 できると思うんだ、ジャンヌ&リアム君でうまくいったし。



「なぁ。お前ら憎からず想い合ってんだろ? 試すだけ試してみても良いか?」



 結弦とソフィア嬢は互いに目を合わせる。

 互いに目で会話した後、ふたりでこくりと頷いた。


 その後、無事にふたりを共鳴させることはできた。

 ジャンヌ&リアム君のときと同じく、何故か俺まで共鳴っぽくなって倒れたのはどうにかならないのだろうか。



 ◇



 残るはレオンとさくらの組み合わせ。

 このふたりを共鳴させればかつてのキズナ・システム問題も解消できる!

 俺はひとり、自分の戦略が整いつつあることに満足しながらふたりが待つレオンの個室へと向かったのだった。











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