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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

それは人と竜とドワーフの友情の物語

作者: Shirasu

連載作品、寂滅のニルバーナの番外編の短編小説です。


連載を読んでいない方にも楽しんで頂けるよう、短編として完結させています。


楽しんで頂ければ幸いです。



 そこは神々と人、全ての種族が暮らす世界。

 大神ウラノスが世界を治め、様々な神がその下で世界を管理していた。



 人族のシャンポールとドワーフ族のバーデン、竜族のファフニール

 3人は生まれた時からずっと一緒に暮らしてきた。


 シャンポールは勇者で人族は全ての種族の中で最弱のくせに、精霊を使いこなすことで誰よりも強かった。


 バーデンは最高の鍛治師を夢見ていた。


 そして竜のくせに泣き虫なファフニール。


 3人はいつも一緒、何をするにも一緒だった。



 ファフニールが虐められ、バーデンが助けに行くも結局やられ、シャンポールが2人を助ける。

 いつもこのパターンだった。

 そして3人で将来の夢を語る



「なぁファフニール、お前は将来何になりたいんだ? お前は最強のドラゴン種で、しかもドラゴンの頂点である暗黒竜だろ?」


「僕は二人と一緒に楽しく暮らせればそれで良いよ、誰が偉いとか、誰より強いとか興味ないもん」


「でもこの前クロノス様が嘆いてたぜ! ファフニールはドラゴン族を統べなくてはならない……… 今の気の弱いファフニールじゃ火竜が言うこと聞かないだろうって」


「暴れ者の火竜、あいつ怖いんだよね〜」

「でも大神ウラノス様の方が怖いだろ?」

「そりゃーウラノス様はね……」


「バーデンは俺に最強の装備作ってくれよな!」

「最強の装備って………」


「ほら、大神ウラノス様の御子息であるクロノス様の神器! あんなの作ってくれよ!」


「クロノス様の神器って…… 全てが今は失われてしまったって言う伝説の装備だろ?」


「そうそう、クロノス様の神器は全て失われている……」


「いや、その神器が必要とされたとき、その神器は顕現する。 必要無き今は名も含め全てが失われている……」


「そう! 必要な時に顕現するってことは、作り出されるって事だろ? ならバーデンが作れよ」


「顕現だから作られるのかは分からないだろ? ってか――! 作れるわけ無いだろ!」


「バーデンならいつか作ってくれると俺は信じてるよ」


「………………。」


「まぁまぁ、その時になればわかるよ~」


「だなぁ~ アハハハハ―――」



 そんな話を俺達は毎日毎日していた。

 俺達にはそれだけで良かったんだ……… なのに―――。





「なぁバーデン、ファフニール、火竜山の火の宝珠を取りに行かないか?」


「なっ! 火の宝珠って火竜が大事に守ってる宝じゃ無いか!」


「宝珠、どうせ取ったって2000年もすれば、また復活するって。 俺たちの不滅の友情の証に、火の宝珠取って3つに割って3人で持っていようぜ!」


「火竜はどうするんだ? 自分の宝取られたら、あの火竜…… 烈火のごとく怒るぞ!」


「そこは…… ほら障害が大きく無いと友情の意味ないじゃ無いか!」


「うむ……… 確かに」


「いや、火竜怖いから! メチャメチャ怖いから―――!」



 俺が提案して、渋るバーデンが俺に説得されて、ファフニールが無理矢理付き合わされる……

 それがいつもの俺達のパターンだ。






「お前…… ファフニール! 我が火竜山に何をしに来た―――!」


「フン! 火竜よファフニールがお前の大切な宝珠を頂く! 覚悟しろ!」


「お前は最弱種族の人間ではないか! フン奪えるものなら奪ってみろ! 3人まとめて相手をしてやる! もし我が宝奪えたとしたら…… ファフニールを竜族の長と認めよう―――!」




 火竜との戦いは熾烈を極めた、周囲の山はいくつも消し飛び、大穴がいくつも出来上がり雨が降りそこが海になった。


 俺達は100年火竜と戦い、そしてとうとう火竜が弱ってきたとき………

 俺は火竜の宝珠を奪い取った!


「おのれ! 決着を見ずに宝を盗み出すとは! 人間よ汚いぞ!」


「フン! 俺達の目的は宝珠だ、別にお前より強いことを証明したいわけではない! お前も最初に『奪えたら―――』と言っていたではないか!」


「くッ………………。」



 宝珠を手に入れた俺達は、すぐに火竜から逃げた。

 どうしてか……、火竜も追いかけてくる事は無かった。


 俺達は火竜の宝珠を3つに割り、友情の証として、ひとつずつ身に着けた。




 俺達はその時知らなかった。火竜との戦いを原初の神カオスが見ていることに……。






 その時は突然訪れた―――!


 【大神ウラノスの審判!!】


 ウラノスの審判により、竜族は全ての種族の天敵となった。

 大神ウラノスは全種族に、竜と戦う事を義務付けた―――!



 審判が下りた瞬間……… ファフニールが頭を抱え暴れ出す。


「ア“ァァァァァ―――!! グァァァァァァ―――!!」


「おい! ファフニール! どうした、しっかりしろ!」

「ダメだ! ファフニール! 暴れたら皆が―――!」


 いくら抑えても、ファフニールの自我が戻る事は無かった。




 暴れるファフニールを遠目に見ながら、俺とバーデンは途方に暮れる。

 すると突然、俺達の前に火竜が降り立つ。


「人間、ドワーフ! よく聞け! もう少ししたら我もウラノスの呪いで理性を失う! 強いものほどウラノスの呪いの影響を受けやすい!」


「でも、ファフニールは………」


「しゃくだが、アヤツは我ら竜族で一番強い! 強すぎるのだ! だから奴は自分にリミッターをかけて、力を抑えていた…… だが、今は大神ウラノスの呪いで理性が飛んでしまった。 リミッターのかからないファフニールは誰も止められぬ!」


「そんな………」


「だが手はある、しゃくだがお前たちは我の宝珠を3つに割り、各々で持っているな!」


「あぁ」


「火の宝珠は浄化の力を持っている、たとえ大神ウラノスの呪いだとしても、数千年かければ浄化できるはずだ! その宝珠をファフニールは己が体内に取り込んだ…… ウラノスに対しての最後の足搔きだったのかもしれぬ…… アヤツは自我を失いつつも、お前たちに自分の未来を託したのだ」


「ファフニール………」


「残りの火の宝珠2つ持っているな?!」


『あぁ』俺とバーデンは火の宝珠を取り出す。


「ドワーフよ、このヒヒイロカネ金属に、その2つの火の宝珠を練り込み、クロノスの神器、【クロノスの小手】作り出せ。 小手は拘束を意味する神器でもあり、小手に宿る2つの火の宝珠が1つの火の宝珠を取り込んだファフニールを眠りにつかせ、封印することが出来る。 そして数千年かけてファフニールを浄化させる。 数千年後、そのクロノスの小手を持った者がファフニールを封印から解き放つ!」


「しかし火竜よ、クロノスの小手を作ると言われても……」


「至高の技を持つ鍛冶師バーデン、お前なら打つことが出来るだろう! 神器となった小手は、精霊を宿すはずだ!」


「わ、わかった必ず作り上げて見せる!」


「精霊に選ばれし人よ、小手に宿りし精霊の力を引き出すには、水、火、風、土の4大属性が必要だ。 その属性を持つ4大精霊とかならず契約を成し遂げろ! そしてクロノスの小手を使い我らが長ファフニールを救ってくれ………」


「あぁ まかせろ! ファフニールは俺達の友、言われなくても必ず助けて見せる!」


「あぁ……頼んだぞ! 我もそろそろ限界だ、正気を失う前に火竜山にて眠りにつくとする。 悠久の時を経て、我が長ファフニールが我を救いに来ることを願っているぞ!」




 火竜は悠久の眠りについた。

 俺達は火竜に言われた通り動き出す。

 俺は水、火、風、土の4大精霊を探し出し契約する為の旅に出た。

 バーデンは【クロノスの小手】を作り出すために、何度も何度も小手を作り直す………


 俺は100年かけて4大精霊を探し出し、契約することに成功した。

 そして戻ってきたときには、俺達が暮らしていた、あの緑豊かな大地は、正気を失い荒れ狂うファフニールにより蹂躙され荒野と化していた。


 しかしバーデンは脇目も振らずに、小手を作り直す。

 俺が帰ってくるまでに1000回、作っては壊し、作っては壊し、作り直したようだ。

 それからは俺も手伝い、二人で何度も何度も作り直す。


 それから900年の年月が過ぎた。

 小手を作り直す事10,000回に達しようとしていた……


 それを見ていた者たちは、10,000回も作り直す愚かな所業を嘲笑し、侮蔑を込めてその籠手を【愚者の手】と名付けた。

 だが2人はどれだけ皆に嘲笑されようとも、10,000回作り直そうとも 諦めなかった。


 そして、この2人の執念は会心の籠手を作り上げる!

 その小手には【金属の精霊アウラ】が宿る。

 1,000年かけて、10,000回作り直して完成した小手。


 【クロノスの小手=愚者の手】の完成である。




 俺はクロノスの小手を装備し水、火、風、土の精霊たちを顕現させ、眼下にファフニールを見る。


 かつて最愛の友だった竜、自我を亡くし破壊の限りを尽くしているその姿……


「誰よりも心優しく、誰よりも暴力を嫌っていたお前が…… ファフニール、お前は今辛いよな? 悲しくて悲しくてしょうがないよな…… いま俺が止めてやる! お前の悲しみを終わらせてやる!」



 俺は4精霊を飛ばし、剣を構えファフニールに挑む!



「我が最愛の友ファフニール……… いざさらば!  願わくば来世でまた会おう―――!」



寂滅のニルバーナの番外編で、短編集として完結していますが……

ゆくゆくは本編とも交わってきます。


この世界を楽しんで頂けたら幸いです。


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