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出来損ないの人器使い  作者: salt
第1章
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21話「旅立ち」

「いいんじゃないかしら?」


「はい!似合っています!シロさん」


「じゃあ……これにしようかな」


 リリスは満面の笑みを浮かべ、アリスは満更でもない表情を見せる。


 カーミラから報酬を受け取った翌日、3人は旅の準備を整えるため買い物に来ていた。

 そこで、2人の提案で今まで全く付けていなかったシロの防具を買いにきていたのだ。


 さっきから2人が持ってくる防具をいくつか試着していたのだが、防具を全く付けない戦いに慣れてしまったため、動きやすさ重視の軽鎧を買うことになった。


「よくよく考えると、今まで何も付けていなかった方がおかしいのよ」


「でも、ルウムさんは何も付けていなかったよ」


「あの人が異常なのよ。まあ、テラーみたいなとんでもない攻撃を受けたら意味ないけどね」


 アリスはため息混じりで答える。


「じゃあ、シロさん!次は私達の服を選んでください!」


 リリスは可愛らしい服をいくつか手に試着室へ入っていった。


「え?2人は防具は買わないの?」


「アンタは私達に戦わせようと思ってるの?」


「……いえ」


「よろしい」


 アリスは満足そうな笑みを浮かべるとリリスと共に試着室に入っていった。


 これから旅に出ようとしているのに可愛らしい服を選ぼうとする2人はルウムと対して変わらないと思うが、彼女達が喜んでいるのならいいだろう。

 シロはそう思うことにした。


 そして、いつくもの服を試着した結果、アリスは赤を基調とした動きやすそうな服を。

 リリスは明らかに動きづらそうな水色のフワッとしたワンピースを購入した。


 リリスの選んだ服はアリスが猛反対したのだが押し問答の末、リリスが押し切って購入することになった。

 最近、リリスは本当に変わってきた。

 もう引っ込み思案で途切れ途切れにしか喋れない彼女はいない。

 もしかすると、これが本当の彼女なのかもしれない。


「シロ。次は食糧を買いに行くわよ」


「あー、ごめんちょっと行きたいところがあるからお願いしていいかな?」


 旅に出る前にどうしても会っておきたい人がいるのだ。


「そっか、じゃあ適当に買ってくるわね」


「えー、私もシロさんに着いて行きたい」


 我がままを言うリリスの首元をアリスが掴む。


「いやいや、アンタはさっき散々我がまま言ったんだから、こっちに付き合いなさい」


 アリスはリリスの首元を掴む。


「……はい」


 その力でアリスの怒りを察したのか、リリスは渋々アリスと共に買い出しへ向かっていった。

 ズルズルとリリスが引きずられて行くのを見送った後、シロは壁の外へと向かうのだった。


 ◆◆◆◆◆◆


 双子と別れてから程なくして、シロは外壁の外の農村地帯へ来ていた。

 辺りには畑が広がり心地よい風が土の香りを運んでくる。


「ルフ!」


 シロは奉仕活動で耕した畑に種を撒いている少女に声をかける。

 薄汚れはローブを纏った彼女は呼びかけに気が付き手を振った。


「いやー、大変だったみたいだねぇ。大丈夫?」


 ルフはいつもと変わらないゆったりとした口調でシロに微笑みかける。


「うん、奇跡的に僕は大丈夫だよ……」


「聞いたよ……ケンプさんのこと……」


「……」


「でも、彼は満足していた。私はなんとなくだけどそう思うんだよねぇ」


「……それは、ルフの占い?」


「そう。なんとなくだけどねぇ」


 そう言いながら彼女は大きく伸びをする。


「それで、今日はどうしたの?」


「今日はお別れを言いに来たんだ」


「そっか……旅に出るの?」


 少し寂しげな声色のルフが全て見透かすような瞳で見つめる。


「うん……でもアリスとリリスと一緒に行くことにしたんだ」


「そっかぁ。じゃあ仲直り出来たんだねぇ」


「うん、ルフのお陰だよ。ありがとう」


 シロは深々と頭を下げた。

 ルフのお蔭でシロは大切な物に気が付けた。

 もし彼女が居なければシロはアリスとリリスを失ってしまったかもしれないのだ。


「気にしないで……でもお別れなんだねぇ」


「……うん」


 この街に戻るかは分からない。

 もう2度と会うことはないかもしれないのだ。


「でも、私と君の運命は一度交わった。だから、また会えるかもしれないよ」


「それもルフの占い?」


「いいや、これは私の希望かなぁ」


 ローブの影に彼女ははにかむような笑顔を見せた。


「そうだね……また必ず会おう。じゃあ行くよ!」


「うん……気をつけてね」


 シロは壁の中に戻ろうとするとーー


「シロ!」


 ルフの呼び止められシロは思わず振り返る。


「ねぇシロ……もし……もしもう一度会う時が来ても私達友達かなぁ?」


「もちろん!」


 そう言いながらルフに大きく手を振った。

 彼女もシロに大きく手を振り返す。


 2人はお互いの姿が見えなくなるまで手を振っていた。


 翌日


「よし行こう!」


「ええ!」


「はい!」


 雲ひとつない青空の元、シロ、アリス、リリスの3人はウェステの街から旅立つ。


 まだまだ自分には知らないことが沢山ある。

 だけど、この2人と一緒ならいつか答えを見つけられそうな気がするんだ。


 じいさん……僕旅に出て良かったよ!

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