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出来損ないの人器使い  作者: salt
第1章
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14話「リリスの憂鬱4」

 リリスの想いを聞いた時、シロはまるで頭をを殴られたかのような衝撃を感じていた。


 人器がなく、差別された過去。

 自分が誰かも分からず、ただ居場所を探していた。


 リリスの想いは誰よりも分かるはずだったのに、それに気が付けない自分が悔しかった。


 そんな自分に出来る事は何か?


 気が付いたらリリスに手を差し出していた。


 彼女の手が触れた瞬間、シロの中にリリスの感情が流れ込む。


 予感はあった。


 シロは魂を注ぎ込む時、相手の魂の器の形が僅かに見える。

 それは揺れ動く感情そのもので、ことあるごとに形を変えるのだ。


 しかし、アリスとリリスはその器の形が似ている。そう思うことがあった。


 今、シロの目の前にはアリスとリリス2人の心の形がある。


 これを1つにするんだ……


 あんなに心優しいリリスを……

 あれだけ妹想いのアリスを……


 泣かせるわけにはいない!


 じいさんに与えてもらったものを……今僕がリリスに与えるんだ!


 幼馴染みの少女を想う少年は見た。

 鈍色の髪の少年の人器が形を変えていくのを。


 シロの両手に握られていたのは。

 アリスとリリスの魂。

 シロには見たこともない人器であったが、2人が教えてくれる。


 それは、銃という失われた兵器。

 その銃身は金。持ち手は青。

 アリスとリリスが融合して誕生した人器、二丁の銃であった。


 シロは静かにその銃口を少年に向け引き金を引く。

 打ち出された弾は少年に当たり、光り輝く水となって足を覆う。


「え!?」


 一瞬リュバルは驚いた表情を見せるが、すぐに足の痛みが消えていくことに気が付く。


「大丈夫。ちょっと待ってて」


 少年が不安にならないように優しい口調でシロは語りかける。


 周囲を囲う狼はシロのただならない気配を察したのか、茂みの中に身を潜めたまま姿を見せない。


 シロは両腕を広げながら2つの拳銃を構え、気配のする方に数発引き金を引いた。


 ダンダンダンダンダン!!


 雨音を掻き消すかのように銃声が響く。

 リリスによって生成された水弾はアリスの雷によって加速し、雨の滴を切り裂きながら狼を襲う。


「ギャッ!ギャッ!キャンッ!」


 茂みの中から狼の悲鳴がいくつも聞こえてる。


「……行ったかな」


 予想外の攻撃を受けた狼の群れは逃げていったのだろう。

 もう気配は感じられない。


「すごい……」


 シロの背中を見ていたリュバルは感嘆の声を上げる。


「大丈夫?もう立てるね?」


 リュバルにとって、そう言いながら振り返るシロの姿は、言いようがないくらい美しく、カッコ良く見えた。


 ◆◆◆◆◆◆


 その夜ーー

 アリスとリリスは教会の礼拝堂の椅子に座っていた。

 正面には蝋燭によって照らされたティーレの石像がゆらゆらと影を作り出している。

 既に雨も上がっているため、聞こえるのは微かに響く虫の鳴き声だけ。


 2人に会話はなく、沈黙が2人を包んでいた。


「リリス……アンタがそんなこと思ってるなんて知らなかった…… 」


 沈黙をアリスが破る。

 アリスはただ、蝋燭に照らされるティーレの石像を見つめている。


「姉さん……ごめんね」


 リリスは極度の恥ずかしがり屋であるが、姉と2人の時は普通に喋ることができる。


「私、恐かったの……姉さんが居なくなったら私には何も残らないから……」


「リリス……」


「分かってる。分かってるの……これは私の我がままだって。それに、人器になった時に感じたの。姉さんがどれだけ私を大切にしてくれているか……」


 リリスも揺れる石像に視線を向ける。


「私達……ずっと一緒ににはいられないんだよね……」


「そんなこと!!」


 アリスはリリスに視線を向ける。リリスの長い前髪から大きな瞳が覗く。


「ううん……いいの。でも、シロさんが私に居場所をくれた。ここに居ていいって言ってくれた」


 リリスはゆっくりと立ち上がる。


「私、シロさんが好き」


「!?」


 アリスは目を丸くする。


「だから……姉さんには負けない」


 リリスのその言葉には強い意志が込められていた。

 シロに出会ってアリスが変わったように、リリスもまたシロに出会って変わったのだ。


 それを感じ取ったアリスは口元が一瞬緩む。


「……いい度胸じゃない!」


 アリスはバッと立ち上がり、リリスに向かって仁王立ちをする。


「私に勝負を挑むなんて百年早いってこと思い知らせてあげるわ!」


「えー、でも姉さん……私にその胸で勝負を挑むのは百年早いと思うんだけど……」


 リリスはアリスのささやかに膨らんだ視線を向ける。


「ぐっ……煩いわね!!大体あんたは……」


 その夜、遅くまで2人の笑い声が礼拝堂内にこだましていた。


 いつまでも3人一緒にいる事は出来ないかもしれない。

 でももう少しこのままで居たい。

 リリスはそう願っていた。

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