表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

94/225

九十四話 あなたのために①

 アレンとルゥが絶体絶命のピンチに瀕している頃。

 シャーロットは、この世のものとも思えないような歓待を受けていた。

 

「ぴぎーっ」 

「え、えーっと……ありがとうございます?」

「ぴっぴぴー♡」

 

 差し出された果物を前に、シャーロットはおずおずと頭を下げる。

 運んできたスライムはうれしそうに体をくゆらせ、ぽよぽよ転がって去っていった。

 それを見送って……シャーロットは辺りを見回す。

 

「ここ、いったいどこなんでしょうか……」

 

 巨大な円柱状の空間だ。

 四方を岩肌で囲まれており、それを埋め尽くさんばかりにツタが生い茂っている。天井を見上げれば突き抜けるような青空が広がっていて、陽の光がふんだんに降り注ぐ。

 そしてその緑の壁には、オーダードラゴンなどの魔物たちがいくつも巣を作っていた。

 

 シャーロットがいるのはその最下層だ。

 緑の絨毯が敷き詰められており、気付いたときにはそこで眠っていた。


 最初は魔物たちに食べられてしまうのではないかと怯えたが……彼らは一向に襲いかかってくる気配を見せず、それどころか順々に果物や花をプレゼントしていく始末。


 おかげでシャーロットは少しばかり落ち着いていた。

 自分はひとまず安全だ。それよりも……もっと気がかりなことがある。

 

「アレンさんとルゥちゃんはご無事でしょうか……」

『無論』

「っ……!」

 

 ハッと背後を振り返る。

 するとそこにはいつの間にやら、一匹の魔物がいた。

 茶色い体毛に覆われた、ずんぐりむっくりとした体。四本の足は短く、額にはバッテン印の古傷が刻まれている。ぽけーっとしたその顔に、シャーロットは見覚えがあった。

 

「あ、あなたは……」

 

 小さく喉を鳴らしてから、おずおずと問いかける。

 

「動物園のふれあいコーナーにいた……地獄カピバラさん?」

『左様。お久しゅうございます、シャーロット様』 


 地獄カピバラはぺこりと頭を下げてみせた。

 ほんの一ヶ月ほど前、アレンと旅行したときに出会った魔物の一匹だ。


(で、でも……どうしてここに?)

  

 ぽかんとするシャーロットに、地獄カピバラは細い目をさらに細めて続ける。

 

『ですが、地獄カピバラは我が種族の名。我が真名はゴウセツと申します。以後、お見知り置きを』

「ゴウセツさん……ゴウセツさんが、私をここに連れてきたんですか? アレンさんやルゥちゃんは無事って……ほんとですか!?」

『ご心配には及びません。すべてお話いたしましょう』

「はあ……」

 

 ゴウセツの口調は穏やかだ。

 もとよりゆるい見た目のため、そうしているとまるで老人のような空気を醸し出す。


 だがしかし、シャーロットは言いようのない不安を感じていた。 

 ゴウセツはゆっくりと歩み寄ってくる。そうしてシャーロットの目の前で……深くこうべを垂れてみせた。

 まるで忠誠でも誓う騎士のように、厳かに告げる。


『おいたわしや、シャーロット様……ですがもう心配はいりませぬ。儂が必ずや、あなた様をお救いいたしましょう』

「…………えっ?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コミカライズ十巻発売!
flpigx5515827ogu2p021iv7za5_14mv_160_1nq_ufmy.jpg
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ