九十四話 あなたのために①
アレンとルゥが絶体絶命のピンチに瀕している頃。
シャーロットは、この世のものとも思えないような歓待を受けていた。
「ぴぎーっ」
「え、えーっと……ありがとうございます?」
「ぴっぴぴー♡」
差し出された果物を前に、シャーロットはおずおずと頭を下げる。
運んできたスライムはうれしそうに体をくゆらせ、ぽよぽよ転がって去っていった。
それを見送って……シャーロットは辺りを見回す。
「ここ、いったいどこなんでしょうか……」
巨大な円柱状の空間だ。
四方を岩肌で囲まれており、それを埋め尽くさんばかりにツタが生い茂っている。天井を見上げれば突き抜けるような青空が広がっていて、陽の光がふんだんに降り注ぐ。
そしてその緑の壁には、オーダードラゴンなどの魔物たちがいくつも巣を作っていた。
シャーロットがいるのはその最下層だ。
緑の絨毯が敷き詰められており、気付いたときにはそこで眠っていた。
最初は魔物たちに食べられてしまうのではないかと怯えたが……彼らは一向に襲いかかってくる気配を見せず、それどころか順々に果物や花をプレゼントしていく始末。
おかげでシャーロットは少しばかり落ち着いていた。
自分はひとまず安全だ。それよりも……もっと気がかりなことがある。
「アレンさんとルゥちゃんはご無事でしょうか……」
『無論』
「っ……!」
ハッと背後を振り返る。
するとそこにはいつの間にやら、一匹の魔物がいた。
茶色い体毛に覆われた、ずんぐりむっくりとした体。四本の足は短く、額にはバッテン印の古傷が刻まれている。ぽけーっとしたその顔に、シャーロットは見覚えがあった。
「あ、あなたは……」
小さく喉を鳴らしてから、おずおずと問いかける。
「動物園のふれあいコーナーにいた……地獄カピバラさん?」
『左様。お久しゅうございます、シャーロット様』
地獄カピバラはぺこりと頭を下げてみせた。
ほんの一ヶ月ほど前、アレンと旅行したときに出会った魔物の一匹だ。
(で、でも……どうしてここに?)
ぽかんとするシャーロットに、地獄カピバラは細い目をさらに細めて続ける。
『ですが、地獄カピバラは我が種族の名。我が真名はゴウセツと申します。以後、お見知り置きを』
「ゴウセツさん……ゴウセツさんが、私をここに連れてきたんですか? アレンさんやルゥちゃんは無事って……ほんとですか!?」
『ご心配には及びません。すべてお話いたしましょう』
「はあ……」
ゴウセツの口調は穏やかだ。
もとよりゆるい見た目のため、そうしているとまるで老人のような空気を醸し出す。
だがしかし、シャーロットは言いようのない不安を感じていた。
ゴウセツはゆっくりと歩み寄ってくる。そうしてシャーロットの目の前で……深くこうべを垂れてみせた。
まるで忠誠でも誓う騎士のように、厳かに告げる。
『おいたわしや、シャーロット様……ですがもう心配はいりませぬ。儂が必ずや、あなた様をお救いいたしましょう』
「…………えっ?」





