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四十九話 成り行き任せの大進軍②

 それからのアレンは八面六臂(はちめんろつぴ)の活躍を見せた。

 傀儡一家(くぐついつか)根城(ねじろ)に殴り込んで、数多くの人形遣いと戦ったり。

 

「なにっ……!? 我が人形の攻撃がまるで効かないだと!?」

「笑止! 操る指の動きさえ見ておけば、避けることなど容易(たやす)いわ!!」

 

 人狼族のみで結成されたパーティ、ウルヴズ・スタンと正面衝突したり。

 

「そーら、人狼族には効くだろー。特別調合の香水だ!」

「ぐぐぐぐぐっ、か、体の力が抜けていく……!」

 

 優秀な魔法道具技師を抱えた精鋭部隊・黄昏の足跡と偶然にも出くわして。

 

「ああっ! この人たち、この前うちの会社になっがいクレームつけてきた厄介なお客さんたちですにゃ!」

「なんだとー! ミアハさんの敵はあたしの敵だし!」

「俺が贔屓(ひいき)にしている業者を(おびや)かす輩に容赦はせん!!」

「あ、あんたら一体なんなんだよ!?」


 アレンは破竹の勢いで領土を広げていった。


「あれ、大魔王どの。なんでこんな場所に?」

「いいところに出くわしたな! メーガス! すこし手を貸せ!」

「ええ……俺、これから最近始めた花屋のバイトがあるんですけど」

「ほう、いい職場を見つけたな! ならば手が空いたらすぐに来い! ついでに薬草の種の大量注文を入れておけ! 次からもおまえの店で買う! 贔屓(ひいき)にしてやると店主に伝えておけ!」

「はあ、お買い上げあざーっす? で、何を手伝ったらいいんですか?」

「この地域をかけた最終決戦に打って出る! シャーロットのお出かけを守るためになぁ!」

「…………は?」




 

 そんなこんなで、あっという間に時刻は夕暮れとなった。

 街外れの広大な空き地で、アレンはぐいっと額の汗をぬぐう。 

 

「ふう……いい運動になったな」

 

 その背後には、冒険者崩れのならず者たちが死屍累々(ししるいるい)と横たわっていた。

 シャーロットが向かう先々を縄張りにしていた者たちである。その数は百を下らない。


 ただ、後半からは全く関係のないパーティたちも入り乱れて、総力戦のような様相(ようそう)(てい)してしまった。どうやらアレンの進撃を聞きつけて危機感を抱いた者たちが捨て身でかかってきたらしい。まあ、アレンがほぼひとりで問題なく片付けてしまったのだが。

 

「と、とうとうやっちまいやがったよ、この人……」

 

 一部始終を見守っていた、毒蛇の牙(サーペントファング)のグローが顔を青ざめさせる。

 その一方で、メーガスは首をひねるのだ。花屋のバイトが一段落してから、最終決戦に駆けつけてくれた。

 

「こいつらをブチのめすのが、なんでお嬢さんのお出かけを守ることになるんです?」

「まあ、後で説明してやろう。ひとまずは……」

 

 そうしてアレンは隅に座り込んだ男たちの元へと近づいて行く。

 顔色の悪い男と、人狼族の男、銀の鎧をまとった男。

 順に、傀儡一家のウォーゲル、ウルヴズ・スタンのラルフ、黄昏の足跡のドミニク。

 アレンがわりと序盤の方でぶち倒したグループの頭だ。

 

「これに懲りたら人に迷惑をかけることなく、真面目に冒険者稼業に精を出すんだぞ」

「おにいがそれを言うの……?」

「いやまあ、おかげでこの辺りは平和になりましたけどにゃー」


 エルーカやミアハがこそこそとツッコミを入れてくるが、アレンは無視しておいた。


「……わかりました」

 

 三人は顔を見合わせてから、大人しくうなずく。

 そうかと思えば顔を覆ってぐすぐす嗚咽を上げる始末だった。

 

「これからは心を入れ替えます……女神様へのご恩に報いるためにも!」

「あんないい子がこの世にいていいのか……」

「く、国に残してきた妹を思い出しました……!」

「……貴様らもシャーロットに世話になったのか」

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― 新着の感想 ―
[良い点] なんか...シャーロットさんの近衛騎士団作れそう...wwwww
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