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十九話 嵐を呼ぶ闖入者②

「それで用件はなんだ。ひょっとして、叔父上はまだ俺を連れ戻そうとしているのか?」

「まさか。パパはもう諦めてるわよ」

 

 エルーカは呆れたように肩をすくめてみせる。

 出された紅茶を立ったままぐいっと飲み干して、雑にテーブルへと戻す。

 

「おにいみたいな一匹狼に、学院のポストは勤まらないってね。それならフラフラしつつ研究成果を発表してもらった方が、よっぽど成果があるってものよ」

「なんだ、ようやく分かってくれたのか」

「あたしに言わせればヌルいの一言だけどね」

 

 じとーっとした目でアレンをにらむエルーカだった。

 そんななか、シャーロットが控えめにアレンの袖を引く。

 

「アレンさんにとってはおじさんなのに、妹さんにとってはパパさんなんですか?」

「ああ。言ったろ、こいつは俺の義理の妹なんだ。血は繋がっていない」

 

 アレンはエルーカを顎で示す。

 実際、彼女とアレンはあまり似ていない。共通点といえば髪色くらいだが、エルーカが黒なのに対して、アレンは黒と白の半々だ。

 

「俺は幼少期に親を亡くしてな。遠い親戚であるクロフォード家に引き取られたんだ。エルーカはそこの娘。おまえと同じ歳だぞ」

「そ、そうだったんですか……すみません。ご家庭の事情を詮索(せんさく)したりして」

「別にかまうものか。知られて困るものでもないしな」

「いや、あたしは現在進行形ですっごく戸惑ってるんだけど」

 

 エルーカは仏頂面(ぶつちようづら)でシャーロットをじーっと見つめる。

 

「この人誰? おにいの彼女?」

「かっ……!」

 

 その瞬間、シャーロットの顔が耳まで真っ赤に染まった。

 あわあわと慌てながら、アレンとエルーカを交互に見やる。

 

「ち、違います! でも、その、えっと、あの……そ、そういうのも悪くは――」

「そうだぞ、エルーカ。失礼なことを言うな」

「えっ」

 

 なぜかショックを受けたように振り返るシャーロット。

 そんな彼女の肩をぽんっと叩き、アレンは言ってのける。

 

「こんな性格破綻(はたん)社会不適合者兼、陰険天才魔法使いと恋仲などと誤解されては、シャーロットとしては反吐(へど)が出る思いだろう。こいつの名誉のためにも、そこはきちんと否定しておくぞ」

「そんなこと思っていませんからね!?」

「おにいはたまに自己評価が完璧すぎるんだよねー」

 

 エルーカは不思議そうに顎をなで、アレンとシャーロットを凝視する。


「じゃあ、彼女じゃないならどこの誰? なんでおにいなんかと一緒にいるの」

「そ、それは……」

 

 当然、シャーロットは答えに(きゆう)する。

 しかしアレンはさらっと言ってのけるのだ。

 

「こいつはシャーロット・エヴァンズ。隣国から逃げてきたお尋ね者だ」

「ちょっ、アレンさん!?」

「はあー……?」

 

 理解不能、と首をひねるエルーカに、アレンはこれまでのあらましをざっくりと説明した。


 無実の罪で国を追われたこと。そんな彼女を(かくま)って、今現在いろいろと『イケナイこと』を教え込んでいる最中ということ。


 説明が終わると、シャーロットは真っ青な顔でアレンに耳打ちする。

 

「い、いいんですか……!?」

「今誤魔化したところで、どうせこいつは自力で調べる。なら正直に説明した方が早いだろう」

「で、でも、妹さんですし……アレンさんのことを心配するんじゃ……」

 

 シャーロットは心配そうにエルーカを見やる。

 エルーカはしばらくしてから、特大級のため息をこぼして(ひたい)を押さえてみせた。 

 

「はあ……おにいはバカだとかねがね思っていたけど違ったわ。大バカものよ」

「ほう。それはどうしてだ」

「そんなの決まってるでしょ!」

 

 エルーカはびしっとアレンに人差し指を突きつける。

 

「食べ物を与えたり、自分を殴らせたりとかじゃなくて……もっと女の子がよろこぶようなイケナイことを教えてあげなさいよ!」

「ツッコミどころはそこなんですか!?」

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ツッコミが……足りない……っ!
[気になる点] あ、低いんじゃなくて完璧なんだ...
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