百五十六話 ミアハの願いごと②
本日、4月16日(木)はコミカライズ更新日!
「いいから物は試しよ。ミアハちゃんも試してみて。ここに座って、足を入れて……」
「はあ、それじゃあお言葉に甘えまして……」
ミアハは空いたスペースに、一同の真似をして入り込んでみる。
するとその瞬間に謎が解けた。テーブルの中はほんのりと暖かくなっていたのだ。
「なるほど~、暖房器具なんですにゃ。この毛布は暖気を逃さないためと……これもニホンとやらの?」
「そうそう、私が作ったの。ミカンもあるわよ、食べて食べて」
「ありがとうございますにゃあ」
勧められるままにミカンを食べる。
季節は秋にさしかかり、今日は少しばかり肌寒い。おかげでコタツのぬくもりが身にしみた。
ミカンの甘味と瑞々しさを堪能していると、そこで熱い視線を感じて顔を上げる。
「はにゃ……なんですかにゃ、グローさん」
「っ……!」
グローがやけに真剣な目でじーっとミアハのことを見つめていた。指摘すると彼は気まずそうに視線を逸らし、ぼそぼそと――。
「いや、前世で飼ってた猫を思い出しちまって……くっ……ミケのやつも、コタツが大好きだったんだよなあ……ううう」
「グローくん、昔から動物好きだったのねえ」
フローラは微笑ましそうに頬に手を当てる。
他の面々も和んだようにほうっと吐息をこぼしてみせた。
「猫とこたつ……いいなあ」
「これぞ日本の心よねえ……ねえねえ、ミアハちゃん。こっちのお菓子も食べる?」
「ありがとう、ミアハさん。いいもの見せてもらった。これ、少ないけどおひねりだ」
「もし気に入ってくれたなら、試作品がたくさん余ってるし、ひとつ持って行ってくれてもいいわよ!」
「はいですにゃ! ありがたくいただきますにゃ!」
みんながお菓子やお小遣いを勧めてくれるので、ミアハはほくほくと歓待を受けた。
全員人生二周目ということもあってか、ミアハのことを孫か何かのように可愛がってくれる。
おかげでミアハは転生者でも何でもないのにここの常連だった。
彼らの話すほとんどは理解できない内容だったが、みながニコニコと語り合う空気がミアハはとても好きだった。今日はどんな話が聞けるのか、と少しワクワクしたそのときだ。
「みんな! 大変だ!」
店の扉がバーンと開かれ、転がり込むようにしてひとりの青年が入ってくる。
ミアハもよく知る、ここの転生者集会の一員だ。
肩で息をする彼に、フローラは小首をかしげてみせる。
「あらあら、どうかしたの?」
「た、大変なんだよ、フローラさん!」
青年は青い顔で叫ぶ。よほど慌てて来たのか声はかすれていたが、それでも彼は懸命に言葉を紡いだ。
「この三つ隣の町に、あんたのラーメン屋があるだろ!? そこに来た女の子が……一口食べるなり叫んだらしいんだ!」
「ま、まさか……!」
一同はごくりと喉を鳴らす。店内に厳粛な静寂が満ちた。やがて青年は――たっぷり溜めてから言い放つ。
「『天○一品の味だこれ!?』って!」
「「「日本人だ!!」」」
「その判定基準は、ほんとにどうかと思うんだよなあ……!?」
腰を浮かして叫ぶ一同に、グローは渾身のツッコミを叫んだ。
ミアハはよく分からないので、ミカンの筋を黙々と取り除くだけである。
「フローラおまえ魔女だろ!? ラーメンで転生者をあぶり出す以外に、もっとこう……あるだろ! 剣と魔法のファンタジー世界を舐めてんのか!? なんかそういう特別な魔法でも使って探せよ!?」
「だってこっちのがお金儲けにもなるしコスパいいんだもーん。グローくんを見つけられたのだって、うちのラーメンのおかげじゃない。店の前でわーわー騒いじゃってさあ」
「そりゃあ叫ぶんだよなあ……! なんだよあの完コピの味は!? ここが異世界じゃなかったら、おまえ絶対訴えられてたからな!?」
全力でツッコミ続けるグローと、軽くあしらうフローラ。
ある意味お似合いのおふたりですにゃー、と見守りながらミアハはミカンをもぐもぐする。
他の面々は新たな転生者仲間の出現にわいわいと湧き立った。
「せっかくだし、今からみんなで会いに行ってみないか? 流れの冒険者らしいんだけど、まだあの街にいるんだって!」
「いいじゃん、行こ行こ! 今度はいつの時代の人かなあ」
「○ンター×○ンターが終わったかどうか聞けるかな?」
「俺はポ○モンが今何匹いるか聞きたい。俺のガ◯リアスはまだレート使用率上位にいるのかどうかも……」
そのまま一同は青年の後に続いて店の外へと向かう。
「グローくんも行きましょ、あなたの探してるミケちゃんの生まれ変わりかもしれないわよ!」
「ミケが天◯の味を知ってるわけねーだろ……」
グローはしかめっ面をしながらも、フローラに引っ張られていく。
ミアハに目を留めて、軽く会釈してみせた。
「すまねえな、郵便屋のお嬢ちゃん……ちょっと店番頼まれてやっちゃくれねえか」
「バイト代は弾むわ! もうすぐジルくんが出勤してくると思うから、それまでの間! お願い!」
「もちろん大丈夫ですにゃ。どうぞ行ってらっしゃいませ~」
ミアハは手を振って、みなを見送った。
ぱたん、と静かに扉が閉ざされて店内にはミアハただひとりが残される。
「いやー、いいですにゃあ。同郷の仲間というのは」
ミアハはしみじみとため息をこぼす。
ずずっと、冷めたお茶をすすって……こたつの天板にあごを乗せて、また重いため息をこぼしてみせた。
「ほんとに……羨ましいものですにゃあ」
続きはまた来週木曜日に更新予定です。
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