第6話 鬼たちの本性と賽の河原からの脱出
河原の周りを見回している鬼の目には、唯一の大人で服装も全く違う章洋の存在に気づかないはずはない。
「それはそうと、賽の河原には子供しかいないはずなんだが……」
「あの……。その……。菜の花畑を通ったら、たまたまここへ……」
章洋は、赤い鬼の前でしどろもどろな答えに終始している。そこへ現れたのは、仲間である青い鬼である。
「おい! さっさとこっちへこい!」
「うわっ! 無理やり引っ張って何をするんだ!」
「おめえみたいなやつは、三途の川の急流に放り込んで地獄を味わいやがれ!」
章洋の大きな叫び声にも、鬼たちは全く耳を貸すつもりはない。鬼たちは、章洋を引きずりながら三途の川へ向かおうとしている。
「こ、こんなところで死ぬなんて……。絶対に嫌だ……」
三途の川より先はあの世の領域であり、この世の領域ではない。すなわち、あの世に一歩でも入るとその時点で死を宣告されることになる。
どうにかしてこの状況から脱したいと章洋が考えていると、川のほとりに大きな樹木があることに気づきました。その樹木には、老夫婦の鬼がいます。
「あそこに渡し船があるということは……。もしかしたら、ここから抜け出す唯一のチャンスかも」
章洋は少ないチャンスと位置づけると、自分を無理やり引きずる鬼たちにある言葉を掛けた。
「あの大きな木の下にいる鬼たちに六文銭を払いに行ってもいい?」
「ちっ! しょうがないなあ」
鬼たちの元を離れた章洋は、樹木の下にいる老夫婦の鬼のほうへ向かうように歩いている。しかし、それはここから逃げだすための章洋の方便である。
そして、鬼たち2人が三途の川のほうへ向いているすきに、章洋は駆け足で河原から逃げ出した。
その足音に気づいた鬼たちは、怒りをあらわにしながら章洋の後を追いかけている。章洋に近づくたびに、金棒を振り下ろして叩き殺そうと必死である。
「どんなに逃げようとも、おめえは死ぬ身であることに変わりはないさ」
「そのままおとなしく三途の川を渡っていればいいものを……」
あんな金棒に頭を叩かれば、章洋はその場で命を落としかねない。章洋は最悪の状況を考えつつも、歯を食いしばりながら足を駆け続けている。
そして、章洋が菜の花畑の通り道に足を踏み入れると、なぜか鬼たちは後を追う気配を見せない。それどころか、鬼たちは自分たちの持ち場である賽の河原へ後戻りしている。
「あれ? 何で鬼たちは追いかけていないんだろう?」
章洋は後ろを振り向いて鬼がいないことを確認すると、駅舎へ向かって無我夢中で走り続けた。その顔つきは、恐ろしいものから早く逃れたいという章洋の気持ちがそのまま表れている。




