第5話 三途の川に面した河原
章洋は、周りに広がる菜の花畑を見ながら歩き続けている。そして、青空からは太陽の光が降り注いでいる。
「今まで見たような薄暗い雲とは違う……。どうしてなのだろうか」
これまでは、列車から降りては不気味さが漂う中で受けた恐怖に章洋はおびえ続けていた。そんな中で、章洋はやけに明るい青空の下を自分の足で進んでいる。
章洋は、どこまでも続く菜の花畑に見とれずにはいられない。そこには、子供のときの童心に返った章洋の姿があった。
しかし、そんな花のやさしさに囲まれているのもつかの間の出来事である。章洋がさらに足を進めると、今までの青空から薄暗い不気味な空へと一変するようになった。
菜の花端を抜けると、そこには大きな川に面した河原が広がっている。そこでは、小さな子供たちが河原に座って石を積み上げる姿がちらほらと見える。
章洋が近寄ってみると、青白く見える子供たちの外見に思わず足が震え始めた。
「青白いっていうことは、あの先の川が三途の川?」
三途の川は、この世とあの世の境目にある川である。その川を渡った場合、その人は死の宣告を受けることになってしまう。
「自分の命が危険にさらされるのでは……」
今すぐにでもこの河原から駅舎へ戻りたいと考えていたら、かわいい坊主頭の男の子2人がそばに寄ってきた。2人の男の子は、青白い肌色で金太郎のような腹掛け1枚だけつけている。
「ど、どうしたの……」
「ねえねえ、こっちへおいでよ」
章洋は、男の子たちの言われるままについて行くことにした。男の子たちは、つぶらな瞳を持ったかわいい顔つきである。
男の子たちが立ち止まったのは、三途の川に近くて石ころが多いところである。そこで、男の子たちは章洋の前で口を開いた。
「ここで石が落ちないように、できるだけ高く積み上げるの」
「それでいいのか?」
章洋は、言われた通りに石を高く積み上げることにした。平らな石を見つけては次々と積み上げる様子に、章洋は頭の中で安易な考え方を思い浮かべている。
「なんだ、これくらいならたやすくできそうだ」
周りが子供ばかりの中で、いい大人がこんなことに夢中になるのは奇異に映るかもしれない。その間にも、章洋は積み上げた石が落ちないように少しずつ石を乗せている。
こうして何重にも積み上げた塔を完成しようとしたとき、突然現れた赤い鬼によっていきなり破壊された。積み石がバラバラになったので、最初からやり直さなければならない。
「どんなことをしてもムダだぜ。なぜなら、おれたちが積み石を蹴り上げるからさ」
不気味に響き渡る鬼の声に、章洋は両手で頭を押さえながら身震いするようになった。




