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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

短編集 冬花火

血に溺れる

作者: 春風 月葉

 溺愛。

 あゝ、なんて素晴らしい言葉だろう。

 愛に溺れる。

 まるで今の自分のためにあるような、そんな言葉だ。

 私は昔からそうだったが、彼には特に良く依存していたと思う。

 彼に優しい言葉を求め、彼という居場所を独占し、彼に私の持つ全てを注ぐ。

 彼が望むことは私の望みだった。

 私達の関係は水を注いだグラスに似ている。

 私は彼に愛を注ぎ、彼もまた私に愛を注ぐ。

 それなのに、私はいつから間違えてしまったのだろう。

 彼の愛をいくら受けても、私の器は満たされず。

 いつしか愛を求めて愛を押し付けてしまっていた。

 彼の器は私の愛を受け入れきれず、愛は溢れ出てしまった。

 彼は愛の中に溶けてなくなり、私は溢れ出た愛に溺れて呼吸もできない。

 あゝ、きっと私が欲しかったのはこれだ。

 溺れてしまうほどの無限の愛。

 彼はいなくなってしまったけれど、最後にこれだけの愛を注いでくれた。

 ありがとう。

 たとえあなたがいなくなっても、愛し続けているわ。

 私は深い愛情の中に沈んで消えた。


 都内のマンションの一室で男女の遺体が見つかった。

 男は全身を刺されて出血死、女は男の血を全身に浴びた状態で男に首を絞められて冷たくなっていた。

 二人の遺体、男の顔は怒りに満ちており、女はそれに反して幸せそうな笑顔を浮かべている状態だった。

 警察は男の暴行に対して女が防衛を働いたとしたが、誰一人としてその顔の語る真実には気づけなかった。

 赤黒く広がった血の惨状はまるで海のようだった。

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