1 white angel ~変化~
第一章 white angel
ヴァルネア王国。一人の女王が国を治めている。政治はこの女王とその側近で定めているが、一番に考えるのは、国の民のため、ということでその国の人々はとても活気にあふれていた。人々の身なりは職業的にも身柄的にも様々だったが、その市街中で一人、ボロボロの茶色のマントを羽織り一目見ればこの国の者ではないことが、すぐにでもわかるような青年がいた。
「お、にいちゃん旅のもんかい?リンゴいらねえか?」
通りすがった青年に声をかけたのは店を開いていた陽気な男性だった。
「ん?…そうだな、二つ、もらえるか?」
「へい、まいど!」
青年は一つかじり、歩き出した。
「……スイに、アップルパイでも、作ってやるか。」
青年がそんなことを考えていると、
「まてや!グォラア゛ア゛ーー!!」
と、怒声が聞こえたのでそちらを見ると、帽子を深くかぶった少女といかにもなスキンヘッドの男。怒声の主はスキンヘッドの男らしく、帽子の少女を追いかけている。
青年は、
「仕方ない、か。」
そして、少女をスルーし、スキンヘッドを……。
スルーした。
そして、何事かと集まってきた人ごみにそれとなく入り、人のあまりいない路地から……。
走り出す。怒声のする方向へ。
そして少女とスキンヘッドが路地に入ったところで、
待っていた青年が、
「追いかけっこ、終了、な。」
とスキンヘッドの頭を一殴り。
スキンヘッドはあっけなく倒れ、沈黙する。
青年は手をはたき、
大丈夫かと尋ねようとしたところ、
少女の変化に気づく。
「………なんで、助けてくれなかったの?」
「………え?」
「さっき!す、すれ違ったときに…、なんで助けてくれなかったの!?」
「え?あ、いや……。あ、でもちゃんと助けたから、いいどぅえ゛?!」
少女の腹パンをもろにくらい、青年はうずくまる。
「知らない!フンだ!」
「え゛、あちょ、ごほっ、ちょま……、え?」
視界の端にとらえたのは、帽子の隙間から見えた、白い、髪だった。