第5話
左大臣家に着くと、左大臣との謁見の場に陽葵と秋貞は通された。
「大姫様のご様子はいかがですか?」
秋貞が左大臣に尋ねる。
「・・・妖怪の気にやられたのか、臥せっている。誰とも話したがらないのだ。」
秋貞は深刻そうな顔をする。
突然、左大臣が頭を下げた。そして、
「娘に憑いている妖怪をすべて払ってくれ!!でないと嫁にもやることができん!」
と、必死に頼む。陽葵は、
「もちろんそのつもりです!」
と、胸をどんと張った。
秋貞がこそっと、「どうやってはらうんだ?」みたいな顔を向けてきたので、私は笑ってごまかした。
* * * * *
月のきれいに見える夜。左大臣家の前に佇む影が一つある。
その影は、左大臣家へゆっくりと足を踏み入れた。
* * * * *
「秋貞様!今日は、大姫様のお部屋に傀儡か何かないか、探しに行きましょう!!」
今日も元気に星の塔を訪れた陽葵。呆れた顔をした秋貞が星の塔から出てくる。
「馬鹿か。何日も連続して行くと、逆に怪しまれるだろう‼」と一喝。
「まず、占を立てて、左大臣家に何か潜んでいないか、確かめるのが先だ。あれば、回収しに行く。
その後、結界を張って、様子を見る。もちろん、その日に大姫様の物の怪も払う」
「はい、わかりました。・・・あっ!そうだ!!」
思いついたように陽葵は頭を下げる。
「妖怪の払い方を教えて下さい!!私、結界は張れるんですが、お祓いはしたことがなくって・・・。」
秋貞が最高に不機嫌な顔で陽葵をにらむ。しかし、すぐに口元を緩める。
「はあ。しょうがないな。じゃあこの符をやる。その符に向かって『発』と言えば発動す・・・あ。」
符は、秋貞の『発』という言葉にこたえ、星の塔の壁を少し削った。
それを見た陽葵は驚いた表情をする。
「しまった。つい、発動させてしまった。ごほん、いや。ま、これだけ声に反応する攻撃符だ。現実のものにはあの程度。異界のものには100倍の力を発揮する。」
「はいっ!ありがとうございます。これでお祓いが私にもできるようになるんですね!!」
にっこりと笑む。秋貞は、
「そうとは言えないけどな。」
と、軽く流した。
陽葵は秋貞のいろんな顔をみることができてうれしく思った。