第9話
少し陰陽らしくなったかな。と思います。
つまらないなーなんて思ってる人も、もう少しお付き合いのほどを・・・(笑)
「天地海星雷鳴急々如律令!!」
陽葵は並の氾濫を抑えるための呪を発動した。
しっかりと印を組み、陰陽の力を言霊に乗せる。
波は陽葵の力に応えてくれたのだろうか。穏やかな波に戻りつつある。
「陽葵ッ!」
術をかけ終わったところに秋貞がやっとやって来た。秋貞は陽葵に駆け寄る。
すると、秋貞が陽葵のそばに近づいた瞬間、陽葵の首にかけていた翠玉がぱあん、と音を立てて割れ、波が再び竜巻のように宙へ渦を巻いた。
「きゃっ!!」
翠玉が顔の近くで割れた陽葵は、翠玉のかけらが頬にあたり、血がつう、と流れている。
「・・・?!何が、あったの・・・」
秋貞と陽葵は急なこと過ぎて状況がうまく呑み込めない。陽葵は痛む頬を抑え、周りを見渡す。
気が付くと、目の前に1人の男が立っていた。・・・人間なのかわからない不思議な光を放っている。
男はそっと口を開いた。
『名は何ともうす、男の陰陽師。』
男の声は低く、心地のいい声だった。
秋貞は男の質問に答える。
「賀茂秋貞・・・だ。お前は誰だ?」
『我は式神だ。ある人物の…な。我を玉から解放したのは其方であろう。』
(玉?ではこの式神は翠玉の中に入っていたモノだということ?)
『秋貞よ、お前からは強い力を感じる。』
そういい、秋貞の隣にいた陽葵に目を移した。
『・・・!!我を閉じ込めていたのは其方だな!気色の悪いにおいがする!!先ほどまでたまに閉じ込められていた時と同じ匂いが!!!』
陽葵を睨み、大声で叫ぶ。
「わた・・・し?違う。私はそんなこと、してない。これは正次からもらった・・・」
陽葵がすべてを言い切る前に式神が口を挟む。
『言い訳はいらぬ!!!嘘を申すでない!!我を閉じ込めたのは其方なのだなっ!!!!』
そう怒鳴ると、波もそれに過敏に反応し、ざわざわと揺れ始める。
『死ねええええええッッっ!!!!!』
式神は陽葵をめがけ、光の矢のようなものを投げつける。
陽葵はわけもわからず、そのまま立ち尽くし、硬く目を閉じることしかできなかった。
「陽葵―――――!!!!」
秋貞はその瞬間、とっさに動き出していた。




